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都大会出場をかけた大一番。 秋の一般大会 13

 相手のタイムアウトでベンチに戻って来た永竹クラブの面々。


 陽介は、#1ヨシちゃんに「ヨシちゃん、良く考えてサーブを打ってるよ、偉い!偉い!。ブロックの低い#3キーちゃんが前衛ライトにいるから相手のレフトエースにアタックを打たせないように、バックレフトを狙ってるんでしょ?、しかもサービスエリア右端からサーブを打てば、相手はコート真ん中からバックライトにサーブが来ると思って、レシーブの隊形がライト寄りになるもんね。それらを見込んでサーブを打つなんぞは、チームの事を考えながらプレーをする選手の鑑だネ!」と褒めちぎった。


 すると#1ヨシちゃんは、「えっ!?、私そんなこと1㎜も考えてなかった。だってこの試合が3試合目で、まだ最低1セットは戦わなくちゃならないでしょ?、だから出来るだけ体力を使わないようにサービスエリア右端から相手のバックレフトを狙ってるの。そうすれば最短距離でサーブが打てると思っただけだよ。そうか、そんな考え方もあったんだネ!、参考にするわ。」とのたまった。


 陽介は、#1ヨシちゃんのサーブが無策だったことに驚いた。


 そして#1ヨシちゃんを褒めちぎった自分に、「甘かった!、そんな輩じゃなっかた。」と、あらためて言い聞かせた。「特にこのゾウアザラシは…」と。


 タイムアウト終了の吹笛が、副審からあった。


 陽介は、#1ヨシちゃんの打っているサーブが無策だったことにショックを隠せないでいたが、円陣を組みコートに送り出す際、#1ヨシちゃんとは犬猿の仲の#2ヤマちゃんが陽介の側に来て、「陽ちゃん、あの娘はあんなもんよ。あまり期待しないでしっかり監督の仕事してネ!」と、肩を落としている陽介のお尻を叩いた。


 陽介は、「それにしても、#1ヨシちゃんのプレーが成長の証しだと思っていたのに、まさか無策でバックレフトにサーブを打っていたとは…」と、重ね重ね自分の指導してきたことが情けなく思えた。


 しかし、陽介のショックをよそに試合は続く。


 陽介には、永竹クラブの監督として、チームが全力を出し切り試合に勝てるように、後押しをする義務がある。


 陽介は、頭を切り替えるように努めた。


 主審のサーブ許可の吹笛。


 #1ヨシちゃんのサーブが続く。


 #1ヨシちゃんは、またしてもサービスエリア右端に立ち、バックレフトを狙ってサーブを打った。


 スリーメディスンはバックレフトがレシーブ。


 しかし、#1ヨシちゃんのサーブの勢いに押され、ほぼ真上にボールが上がった。そのボールをレフトエースがホローして前衛ライトに二段トス。


 苦し紛れに上げた二段トスは、大きくライトからずれてしまい、アンテナにあたってしまった。


 (バレーボールのルールでは、6人制であっても9人制であっても、アンテナの上方やアンテナの外をボールが通過した場合や、またアンテナに当たった場合はボールデッドになる。一部取り戻しのルールが6人制にあるが、当時9人制には取り戻しのルールはなかった)


永竹クラブ18-9スリーメディスン


 #1ヨシちゃんのサーブが続く。


 陽介は、願わくば#1ヨシちゃん、或いは次のサーバーであるバックライト#9井口ちゃんのサーブでこのセットを取って終わらせたかった。


 そうなれば、2セット目を後衛の選手からサーブを始めることが出来る上に、レフト#2ヤマちゃんをセットの初めに前衛に置いておくことが出来ると考えていたからだ。


 #1ヨシちゃんは、またしてもバックレフトを狙ってサーブを打った。


 陽介は、「無策だとは言え、結果的に効果がでているのだから良しとしよう!」と心の中で思うようにした。


 スリーメディスンは、バックレフトがレシーブ。少し乱れたボールをハーフセンターがレフトエースに二段トス。


 レフトエースは、#1ヨシちゃんの代わりに前衛に上がっているブロックの低い#3キーちゃんを狙ってアタックを打った。


 そしてそのアタックは、#3キーちゃんのブロックの上を抜き、ストレートに鋭く打ち込まれた。


 永竹クラブは、そのアタックをバックライト#9井口ちゃんがナイスレシーブ。


 しかし主審の吹笛。


 #3キーちゃんのネットタッチの反則だった。


 #3キーちゃんは、「悪い!、悪い!」と軽く右手を上げながら、バックセンターの位置に戻った。


永竹クラブ18-10スリーメディスン


 スリーメディスンのサーブ。


 永竹クラブは、バックレフト#4丘ちゃんがレシーブ。セッター#6マメちゃんはレフト#2トスを上げた。


 しかしそのトスはネットに近く、レフト#2ヤマちゃんは相手の2枚ブロックからワンタッチを取ってコートの外に出すよう、ブロックアウトを狙った。


 スリーメディスンは、そうはさせじと2枚ブロックが揃ってタイミングよく飛び#2ヤマちゃんに立ちはだかった。


 そしてそのボールは、ブロックホローに入っているメンバーの隙間を縫って永竹クラブコートに落ちた。


 #2ヤマちゃんは天を仰ぐ。


 だが、主審のジャッジは永竹クラブのコートを指した。


 スリーメディスンのブロックが、オーバーネットの反則だった。


 一転#2ヤマちゃんはガッツポーズ。


 ネットに近いトスを上げてしまった、セッター#6マメちゃんが頭をかきながら申し訳なさそうに#2ヤマちゃんの所に駆け寄る。


 #2ヤマちゃんは、「OK!、OK!」と言って、#6マメちゃんの頭を両手で手荒く撫でまわした。


 #6マメちゃんは、自分のミスを#2ヤマちゃんがホローしてくれたので、仕方なくなされるがままにされていたが、「だから、頭はやめててくれ~!!!」と言って、ポジションに走って戻った。


永竹クラブ19ー10スリーメディスン


 永竹クラブのサーバーは、#9井口ちゃん。


 陽介は、#9井口ちゃんのサーブでこのセットを取りたい。


 #9井口ちゃんは、#3キーちゃんと一言交わし、低くて速くて強いサーブを打った。


 スリーメディスンは、バックレフトに飛んできた強いサーブを何とかレシーブしたが、コート外に大きくはじいた。


 #9井口ちゃんのサービスエース。


 皆な#9井口ちゃんのところに駆け寄り、ハイタッチ。


永竹クラブ20ー10スリーメディスン


 陽介は、「あと1点、あと1点。」と祈りながら、#9井口ちゃんのサーブを見守った。

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