都大会出場をかけた大一番。 秋の一般大会 4
永竹クラブの第二試合は、プーアル。
以前も戦った相手だ。
この試合に勝てば決勝戦に進むことが出来る。
そして、決勝戦で勝てば、念願の都大会出場が決まる。
しかし陽介は、「目の前の試合に集中しないと、次の試合は無い!」と永竹クラブのメンバーに強い口調で話し、チームを引き締めた。
プロトコールが終わり、キャプテン#1ヨシちゃんが走って陽介の所に戻って来た。
サーブ権は永竹クラブだ!
願っても無いサーブ権。やはりジャンケンの神様も永竹クラブを応援してくれていると、陽介は勝手に思っていた。
(当時の9人制バレーボールは、サーブ権をキャプテンがジャンケンで決めていた。永竹クラブのキャプテン#1ヨシちゃんは、永竹クラブ全メンバーでジャンケンを繰り返し繰り返し行った結果、ジャンケンに一番強いという理由でキャプテンになった。もちろん『これからの時間』でたっぷりとお酒が入った状況で行われたキャプテン選考で、その決め方に陽介は不満だらけだったが、今となれば楽しい思い出である。)
永竹クラブの布陣は、第一試合の蕨クラブ戦と同様。
第一サーバーは、強烈なサーブを打つバックライト#9井口ちゃんだ。
双方のチームがエンドラインに並び、主審の吹笛で全員が中央のネットまで駆け寄り握手を交わした。
続いてスターターがサーブ順に並び、ベンチの控えメンバー共々副審と記録員の確認を受け、あらためて主審の吹笛でコートに入った。
双方のチームがコート内で円陣を組み、気合を入れて大きな声を出し、それぞれのポジションに散った。
主審は双方のチームの円陣がとけるかとけないかのタイミングで、大きな音でプレーボールの吹笛をした。
(当時の9人制バレーボールは、試合開始の合図としてプレーボールの吹笛が行われていた。)
永竹クラブは第一サーバーの#9井口ちゃんが、副審からボールを受け取り、#3キーちゃんと言葉を交わしてサーブを打つ準備をしている。
副審の両手が高々と上がった。
主審に対して、準備OKのサインである。
この試合もA区の連盟役員の中で、審判の資格を有する者が主審と副審を務めていた。
主審が小さくうなずき、サーブ許可の吹笛を行った。
体育館に一瞬静けさが走った中、#9井口ちゃんは、鋭いサーブを打った。
そのサーブはプーアルのバックセンターのレシーブをはじき、サービスエース。
ギャラリーで応援していた川さんの「井口ちゃ~ん!、ナイスサーブ!」と言う大きな声と拍手で、静けさが歓声に変わった。
永竹クラブ1-0プーアル
皆な#9井口ちゃんのところに駆け寄りハイタッチ。
ベンチも「このまま!、このまま!」と大きな声を出している。
#9井口ちゃんのサーブが続く。
主審のサーブ許可の吹笛。
今度も#3キーちゃんと一言交わし、サーブを打った。
プーアルはバックライトがレシーブ。乱れたボールをハーフセンターがレフトエースに二段トス。
レフトエースは、そのボールを永竹クラブの高い2枚ブロック(前衛ライト#1ヨシちゃんと中衛ライト#19イケさん)を避けてアタックを打ち込んできた。
永竹クラブは、ブロックのコースに入っていたバックレフト#4丘ちゃんがレシーブ。ハーフセンター#16イソちゃんがレフト#2ヤマちゃんに二段トス。
#2ヤマちゃんは、プーアルの2枚ブロックめがけ思いっきりアタックを打ち、プーアルの2枚ブロックからブロックアウトをとった。
#2ヤマちゃんは大きな声を出して、ガッツポーズ。
気合が入っている。
皆が駆け寄りハイタッチ。
永竹クラブ2-0プーアル
日頃の練習で繰り返しやっている、二段トスからの攻撃だった。
陽介は、「ナイスプレー!、これに満足しないで次のプレーに集中するよ!」と大きな声をベンチから出した。
ビックリすることに、コートにいるメンバーが全員陽介の方を向いて、軽くうなずいた。
全員が陽介の指示に反応するという、初めての出来事に陽介は驚いたが、それだけ皆な勝ちたいのだととも思った。
#9井口ちゃんのサーブが続く。
今度も速くて低くて鋭いサーブ。
プーアルはハーフセンターがオーバーでレシーブ。乱れたボールを中衛ライトがレフトエースに二段トス。
レフトエースは、永竹クラブの高い2枚ブロックめがけアタックを打った。
永竹クラブは、中衛ライト#19イケさんが「ワンチぃ~!」と大きな声。
そのボールは、プーアルコートに返った。
プーアルは、中衛レフトがブロックホロー、そのボールをハーフセンターが再びレフトエースに二段トスを上げた。
レフトエースは、こちらも再び永竹クラブの高い2枚ブロックめがけアタックを打ち、ブロックアウトをとった。
永竹クラブ2-1プーアル
プーアルのサーブ。
永竹クラブは、ハーフセンター#16イソちゃんがオーバーでレシーブ。セッター#6マメちゃんはライト#1ヨシちゃんにトスを上げた。
しかしそのトスは、普通に打てばネットタッチになってしまうほど、ネットに近かった。
#1ヨシちゃんは、窮屈な体勢からネット近くに上がったボールを左手で押し込んだ。(#1ヨシちゃんは左利き)
しかしそのボールはプーアルのブロックに押し込まれ、永竹クラブコートに落ちた。
セッター#6マメちゃんが、#1ヨシちゃんの所に駆け寄り「ゴメ~ン!」と手を合わせた。
#1ヨシちゃんは、「大丈夫!、次、次。トスが上がれば私が何とかするから!」と言って、#6マメちゃんに声をかけた。
陽介は、#1ヨシちゃんの言動に感心していた。
#1ヨシちゃんも、勝ちたい一心なのだと。
そしてチームプレーに徹しようとしているのだと。
中衛ライトの#19イケさんが、自陣のコートに落ちたボールをプーアルコートに返そうとネットの下から転がした時、主審が「ピッ、ピッ、ピッ」と小刻みに吹笛した。
何事だろうと、主審の方を見上げる永竹クラブの面々。
しかしその心配と裏腹に、主審は永竹クラブコート側に腕を上げていた。
ジャッジのシグナルは、プーアルのオーバーネット。
永竹クラブ3-1プーアル
#1ヨシちゃんが、苦し紛れにボールを押し込んだ時、プーアルのブロッカーがオーバーネットをしてしまったらしい。
ネットに近いトスを上げてしまったセッター#6マメちゃんは、急に笑顔になり「ラッキー!!!」と言って頭をかいた。
どうやら、今の所バレーボールの神様は、永竹クラブに微笑んでくれているようだ。
ジャンケンの神様とバレーボールの神様に微笑まれた永竹クラブは、試合の序盤を順調に戦っている。




