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都大会出場をかけた大一番。 秋の一般大会 2

 #9井口ちゃんは、またも鋭いサーブを打った。


 サービスエース。


 蕨クラブは、一歩も動けなかった。


永竹クラブ2-0蕨クラブ


 実力の差は歴然である。


 この後も#9井口ちゃんのサーブが冴えた。


 #9井口ちゃんがサーブを2本ミスして、相手に点を与えるまで連続で8点を取った。


永竹クラブ8ー1蕨クラブ


 蕨クラブのサーブ。


 今や、普通のサーブで永竹クラブのレシーブを崩すことは出来ない。


 ハーフセンター#16イソちゃんが、オーバーでレシーブ。セッター#6マメちゃんはレフト#2ヤマちゃんにトス。


 レフト#2ヤマちゃんは、蕨クラブの2枚ブロックを利用して、6分程度の力でいとも簡単にブロックアウトをとった。


 決して気を抜いたプレーではない。体力を使わないように良く考えたプレーだった。


 永竹クラブは、コート中程に集まりハイタッチ。


 ギャラリーからは、「上手い!、ヤマちゃんナイス!」と、三輪さんと川さんの声が飛ぶ。


 子供達も、拍手で応援した。


 #2ヤマちゃんも、ギャラリーに向かって笑顔で手を振った。


永竹クラブ9-1蕨クラブ


 永竹クラブのサーバーは#3キーちゃん。


 #3キーちゃんは、バックレフト#4丘ちゃんとバックライト#9井口ちゃんと言葉を交わした。


 主審のサーブ許可の吹笛。


 #3キーちゃんは、「前衛!、ダイレクトで返って来たら、思いっきり打ってぇ~!」と大きな声を出して、鋭いサーブを打った。


 蕨クラブは、バックライトがレシーブを試みるもコート外にはじいた。


 サービスエース。


 皆な#3キーちゃんに駆け寄りハイタッチ。


 「このまま!、このまま!」とベンチの和気ちゃんから声が飛ぶ。


永竹クラブ10ー1蕨クラブ


 #3キーちゃんのサーブが続く。


 あらためて、#4丘ちゃんと#9井口ちゃんと言葉を交わし、鋭いサーブを打った。


 蕨クラブは、バックセンターがレシーブ。


 しかしそのボールは、大きくダイレクトで永竹クラブコートに戻って来た。


 バックレフト#4丘ちゃんが、「チャンス!、チャンス!」と大きな声を出しながらオーバーでセッター#6マメちゃんにパス。セッター#6マメちゃんは、「レフト!、レフト!」とこれまた大きな声で#2ヤマちゃんにトスを上げた。


 かと思ったら、バックトスでライト#1ヨシちゃんにトス。


 #1ヨシちゃんは、相手ブロックがフラレルことが分かっていたように、「あいよ!」と言って、ノーブロックの蕨クラブコートに思いっきりアタックを打ち込み、決めた。


 全員ガッツポーズ。


 良く考えながらプレーをしていると、陽介は感心していた。


 蕨クラブは、あっという間の11失点に、思い出したようにタイムアウトをとった。


永竹クラブ11-1蕨クラブ


 陽介は、相手のタイムアウトでベンチに戻って来たメンバーに、「ナイスプレー!、このまま!このまま!、集中して!」とだけ言って、後はメンバー同士の会話にまかせた。


 副審のタイムアウト終了の吹笛。


 円陣を組んだ永竹クラブのメンバーに、「皆が同じ方向を向いて、集中してプレーしよう!」と陽介は言い、キャプテン#1ヨシちゃんに声がけをさせてコートに送り出した。


 タイム明け、#3キーちゃんのサーブが続く。


 #3キーちゃんは、この後も鋭いサーブを続け、蕨クラブにまともな攻撃をさせずに連続7点をとった。


永竹クラブ18-2蕨クラブ


 蕨クラブのサーブ。


 相手のサーバーは、一か八か思いっきりサーブを打って来た。


 そのサーブは、勢いよく永竹クラブコートエンドラインに向かって来た。


 バックレフト#4丘ちゃんと、バックライト#9井口ちゃんが、「アウト!、アウト!」と大きな声でジャッジ。


 バックセンター#3キーちゃんは、そのサーブを見送った。


 微妙のように見えたが、陽介もベンチもギャラリーの三輪さん川さんも、アウトだと思った。


 しかし、線審の旗は床を指した。インのジャッジだ。


 永竹クラブ関係者は、ベンチやギャラリーを含め「アウト!、アウト!だよ!」と不満の声。


 線審は、第三試合のチームがやっていた。


 ジャッジをした線審は、下を向いたまま黙っている。


 キャプテン#1ヨシちゃんが、主審に今のジャッジについて質問をしに行った。


 ちなみに、主審に質問を出来るのは、コートキャプテンのみ。さらに、質問は許されるが講義は絶対に許されない。


 例えば、「今のは、何でインなのアウトじゃない!」は講義なので許されない。


 しかし、「今のは、アウトにに見えましたが、なぜ線審はインのジャッジをしたのですか?」あるいは、「今のジャッジは、線審が明らかにボールを見ていなくて、思い出したようにジャッジしたように見えましたが、実際はアウトではなかったでしょうか?」は許される。


 要するに、最後の言葉に『?』が付く疑問形の質問であれば許されるという、実に玉虫色の定義である。


 陽介は、キャプテンであるヨシちゃんに、「いつか一つのジャッジがゲームを変えてしまうようなことがあるかもしれない。だからその時は主審に質問に行くように!」と指示していた。しかしその当時のヨシちゃんは「えぇ~、ヤダぁ~!、全部疑問形で話をするなんて無理ぃ~!、それに主審から悪く見られたくないしぃ~!」と言っていたが、今回は無意識に行動をおこしたのであろう。


 #1ヨシちゃんが主審に質問に行き、「あのぉ~、…」と言いかけた時、主審は右手の手の平を#1ヨシちゃんに向け、話しを止めた。


 そして、副審と担当線審を呼び、#1ヨシちゃんを主審の側から遠のけた。


 主審・副審・担当線審の話し合いは、僅か10秒位だった。


 主審は、副審・担当線審が定位置に戻ったのを確認して、あらためてインのジャッジをして蕨クラブに点を与えた。


 #1ヨシちゃんは、ムッとして一瞬得意の平家蟹が潰れたような形相になりかけたが、自ら「しょうがない!、しょうがない!、次・次」と言って、チームを鼓舞した。


 今までにはない、#1ヨシちゃんがとったキャプテンとしての言動に、陽介は感心した。少なくともこの試合におけるヨシちゃんは、立派なキャプテンだと…。


永竹クラブ18ー3蕨クラブ


 蕨クラブのサーブ。今度も一か八か思いっきり打って来た。


 しかし第一サーブは、大きく永竹クラブコートのエンドラインを割り、これまた一か八かで思いっきり打った第二サーブは、あえなくネットにかかり永竹クラブコートには届かなかった。


 永竹クラブは、「ラッキー!!!」と大声を出し、続くサーバー、バックレフト#4丘ちゃんにボールを渡した。


永竹クラブ19ー3蕨クラブ


 主審のサーブ許可の吹笛。


 #4丘ちゃんが、バックセンター#3キーちゃんとバックライト#9井口ちゃんに声をかけ、サーブを打った。


 どうやら、サーブを狙う選手の番号を話しているらしい。


 蕨クラブはバックセンターがレシーブ。乱れたレシーブをバックレフトがフォロー。3コンタクト目のボールをハーフセンターがチャンスボールで返した。


 永竹クラブは、「チャンス!、チャンス!」と大声を出し合い、ハーフセンター#16イソちゃんがセッター#6マメちゃんにパスをした。かと思ったら、直接ライト#1ヨシちゃんに二段トス。


 #1ヨシちゃんは、ブロックが1枚いるのを確認したか、空中でアタックを打つのを自重し、中衛レフト#8青ちゃんに「青ちゃん~、お願いぃ~!!!」と言ってトスを上げた。


 #8青ちゃんも、まるで自分のところにトスが上がることを最初から分かっていたように、素晴らしいアタックを打ち込み決めた。


 皆な綺麗なコンビバレーに、笑顔でガッツポーズ。


 陽介も、「えっえっ~!、皆なバレーボールの選手みたいじゃん!、ナイスプレー!、でも次のプレーもしっかり集中して!、出来ることを一生懸命やるんだよ!」と、コートに向かって叫んだ。


 ベンチの和気ちゃんが、「陽ちゃん、毎度言うけど、一言多いんだよ!」と、そのたくましい腕で陽男助の背中を叩いた。


 陽介は、「相変わらず力の加減を知らない猛獣だ!」と思ったが、なぜか心地よかった。


永竹クラブ20ー3蕨クラブ


 #4丘ちゃんのサーブが続く。


 #4丘ちゃんが、#キーちゃんと#9井口ちゃんと言葉を交わし、サーブを打った。


 しかし、#4丘ちゃんのサーブは当たり所が悪く、山なりで蕨コートに向かった。


 #4丘ちゃんは、「ゴメ~ン!!!」と言いながら、急いで自分のポジションに戻った。


 蕨クラブはハーフセンターがレシーブ。セッターがレフトエースにトスを上げた。


 しかしここで主審の吹笛。ドリブルの反則だ。


永竹クラブ21-3蕨クラブ


 永竹クラブは、僅か3人のサーバーで第一セットをとった。


 ギャラリーの子供達は大喜び。青ちゃん・丘ちゃんに手を振っていた。少し年上のマメちゃんの息子は照れながら笑顔をマメちゃんに贈っていた。


 陽介は、サーブをはじめチームとして行って来た練習や練習試合、そして都大会に行きたいと思う皆なの気持ちの成果だと、嬉しく思った。


 確かに、相手が格下だったことで、凄い攻防があって勝ったセットではない。しかしそうしたことを感じさせない、いわば完勝だった。


 続く第二セットも、永竹クラブ21ー5蕨クラブで奪取し、この試合をセットカウント2-0で永竹クラブが勝った。


 試合後、連盟役員が「陽ちゃん、今日は優勝だネ!、頑張って!」と言ってくれたが、チームの目標を達成するために、あらためて身が引き締まる思いだった。

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