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秋の一般大会に向けて…。土日の練習試合 2

 青ちゃんと丘ちゃんが、学校や幼稚園の夏休み中の練習に参加が難しいことが分かった陽介は、レギュラーが揃っての練習をあきらめた。


 もちろん、青ちゃんや丘ちゃんが練習に来れる時は、優先して土曜日・日曜日の練習をスケージュールに入れるように努力したが、しかし前述のように、今日の明日で練習試合をお願いしたり、体育館を借りられる訳ではなく、練習試合をお願いする場合は最低2週間前に、体育館を借りる場合は最低1ケ月前に抽選に参加しなければならず、実質夏休み期間の土曜日・日曜日に練習試合や練習をすることが不可能だったからだ。


 陽介は、この期間の全員揃っての練習が出来ない事を前提に、週2回の平日練習を積み重ねるしかないと思った。


 しかしながら、永竹クラブは11月の一般大会で新加入の青ちゃん・丘ちゃんを共に、都大会を目指そうとしている。


 こうした状況の中、陽介は(連盟顧問が監督をしている)某体育大に、連盟顧問を訪ねに行った。


 相談を受けた連盟顧問は、「陽ちゃん、そりゃぁ大変だネ!、学生は夏休み期間中、強化を目的として普段より長時間練習をしたり、普段しないような体力強化練習をすることが出来るから、むしろありがたい期間だけど、家庭婦人は特に小さい子がいるメンバーは、練習に参加出来ないもんネ!、で、どうゆう相談だい?」と陽介に聞いた。


 陽介は、「はい。家庭婦人のチームはただでさえ色々な事情で全員が練習に参加出来る回数が少ないです。しかしながら永竹クラブは、皆な都合をつけて練習に参加し都大会を目指しています。ただメンバーの1人が家庭の都合で休部し、新しく加入したメンバー2人も未就学児がいる都合上、中々練習に参加出来ずチームとしての練習が滞っています。このままだと休部したメンバーの穴を埋められず、さらには新加入したメンバーとのチーム練習も出来ずに試合に臨まなければならなくなってしまいます。つきましては、新加入2名が参加出来ない週2回の通常練習で、どのようにチームを作って行けばいいのかご助言を頂きたいのです。」と言った。


 すると連盟顧問は、「で、陽ちゃんはそうゆう状況でどういう練習をするつもりだい?」と逆に質問して来た。


 陽介は、ハッと思った。そして言葉をつまらせた。


 練習の内容まで考えていなかったからだ。


 もちろん、基礎的な練習(パス・サーブカット・サーブなど)は常にするつもりでいたし、実際にやっているが、それ以上のアイデアを持っていなかったし、考えてもいなかった。


 「練習に参加出来ないメンバーがいる。どうしよう。」


 ただただ、それだけの心配でしかなかった。


 陽介は、「スミマセン。具体的な練習は全く考えていませんでした。」と答えた。


 連盟顧問は、「陽ちゃん、その日いないメンバーは、いくら願ってもその日に一緒に練習出来ないんだよ。だからその日にいるメンバーでどういう練習をこなして、試合に備えるか?が重要なんだよ。そしていつも練習に参加しているメンバーにも、中々参加出来ないメンバーにも、どれだけモチベーションを持続出来るようにするかが重要なんだと思うよ。練習をしたいのに家庭の事情で練習に行けないメンバーが、チームがどれだけ必要としているか?また待ってくれているか?と、思わせることも重要だね。特に家庭婦人チームは…。」と話してくれた。


 さらに、「陽ちゃん、これから体育館に行って、学生の練習を見に行かないかい?」と誘い、陽介を体育館に連れて行った。


 体育館に入ると、学生さん達が連盟顧問(監督)と陽介に、「こんにちわぁ~!」と大きな声で挨拶をし、続けて「集合ぉ!」っとこれまた大きな声でキャプテンであろう学生が号令をかけた。


 連盟顧問と陽介の前に集合した学生に、「今日は皆も知っている永竹クラブの陽ちゃんが見学に来たから、宜しく頼むね。」と連盟顧問が言うと、大きな声で「ハイ!」と返事をしてくれた。


 陽介は、学生さん達に「本日はお邪魔します。練習の邪魔をしないようにしますので、宜しくお願い致します。」と挨拶をした。


 一通りの挨拶が終わると、再び練習を再開した学生さん達であったが、3人程であったであろうかコートの外で見学をしている様子だった。


 陽介は、「あの3人は、体調が悪いんですか?」と連盟顧問に聞いた。


 連盟顧問は、「実は、あの一番背の高い子がエースなんだけど、この前練習中に捻挫しちゃって練習に参加出来ないないんだよ、あとの2人はマネージャー。練習中にケガをしているエースがどのように練習を見ているか?また、指摘しているか?をメモしているんだよ。でも実際は近々試合だから、戦力的には落ちちゃうよネ!。僕も困ってるけど、練習に参加出来ない者はいくら願っても練習出来ないから、皆な自分達で誰にケガしたエースの穴を埋めさせて練習をするか、考えてやってるんだよ。ちなみに今エースアタッカーのポジションで練習している子は、レシーバーの子。試合では絶対に前衛で出場はしないけど、部員が自分達で考えて決めたことだから、僕は尊重したよ。」と話してくれた。


 しかし陽介は、「他にアタッカーの子はいるのに、なんで普段アタックを打たないポジションの子を、エースの代わりにして練習してるんですかね?」と不思議に思って訊ねた。


 すると連盟顧問は、「実は、僕も最初そう思って部員に聞いたんだよ。そうしたら普段レシーブのポジションしかしない子をエースのポジションに置いて練習をすることによって、アタックを打つ人の気持ちも分かるし、二段トスを上げる時どのようなトスなら打ちやすいのか等を身をもって感じたいと言って来た。もちろん、うちにはアタッカーもいるからその子達に穴を埋める練習もさせてるよ。だけど部員が自分達で考えてやっている練習ほど尊いものはないと思って、その考えを尊重したんだよ。」と言った。


 そして、「だからね陽ちゃん、全員が揃わなくてもやれる練習はいっぱいあるということだよ。特に家庭婦人はメンバーが揃わないのが常なんだから…。それにあのケガしているエースも、いつ自分がコートに戻ってもいいように、気持ちだけは準備している。それが証拠に、練習終了時にメモした練習時の指摘を部員にフィードバックして、それを部員も受け入れているんだよ。要するに自分は必要とされているというふうに思うだろうし、コートに早く戻って練習に参加して試合に出たいというモチベーションも持続出来る。チームとして重要なことだと思うよ。」と言った。


 続けて、「学生は、4年しかないからケガをすれば、そりゃぁ焦るよね。でもね、部員はケガし者がコートに戻って来ることを待っている。ケガした者も早く治してコートに戻ろうとしている。またケガした者のポジションを虎視眈々と狙っている者もいる。そうしたことを全部含めてチームなんだよ。当たり前と言えば当たり前のことだけど、各々が受け入れていることが素晴らしいんだよ。中々そういうチームは無いんだけどね。だから僕はこのチームを誇りに思ってる。ただ家庭婦人は学生と違って練習時間にも練習に参加する者にも制約がある。その中でどうチームを作るのか?陽ちゃんだけではなく、皆なで考えるんだよ!。いくらA区が弱小地区とは言っても、家庭婦人構成員だけで都大会に出場するのは極めて難しいし、もし出場出来ればA区の連盟としては超誇りだからネ!、いいかい陽ちゃん、何回も言うけど、その日に練習に参加出来ない者は、いくら願ってもその日に一緒に練習は出来ない。しかしその者もチームもお互いに必要としているという思いと、お互いのモチベーションを切らさないために、どうしたらいいか考えるんだよ!。永竹クラブは練習の後いつも飲み会をやってるよね?、コミュニケーションをはかることとしてはそれも一つの方法だけど、全員が同じチームに所属していると思える何かを、もう一つ考えるんだ!。それがバレーボールの練習じゃなくてもいいと思うよ!」と言ってくれた。


 某体育大の練習が終わり、陽介は連盟顧問と学生さんにお礼を言って体育館を後にした。


 そして次の練習日、練習終了後の『これからの時間』でその話をした。

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