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2回目の遠征 親睦大会 3

 さて、親睦会もお開きの時間になり、企業の担当者が「間もなく親睦会お開きの時間となります。明日は会場の体育館にバスで向かいますが、朝食の時間は6:30から。バイキング形式となります。このホテルの朝食バイキングは特産の海の幸がたくさん用意されことで有名です。是非召し上がって下さい。そしてホテルの玄関に7:45に集合をお願い致します。時間厳守でお願い致します。それではゆっくりお休みになって、明日の試合に備えて下さい。」とアナウンスをした。


 そして親睦会がお開きになると、各テーブルで対戦チームと握手をしたり、ハグをしたり、中には連絡先を取り交わしたりしながら、会場を後にした。


 猛獣コンビは挨拶もほどほどに、二次会を予定している自分達の部屋に日頃は絶対に見せない機敏な動きで戻った。


 陽介は、「彩姉さんは引退しているからどうでもいいけど、和気ちゃんはこんなに機敏に動けるんだ?」と感心してしまった。


 そして陽介と数人の永竹クラブのメンバーが、二次会の部屋に向かっていると彩姉さんが廊下を早足で戻って来た。


 彩姉さんは、お酒が足らなくといけないから、これからタクシーでコンビニに行くという。大したものだ。


 陽介と、永竹クラブの二次会参加メンバーが部屋に着くと、和気ちゃんがホテルの人がせっかく敷いてくれた布団をあらためて押し入れにしまい、部屋の真ん中に他の部屋から調達したテーブルと合わせて2つのテーブルを置き、缶ビール・焼酎・日本酒の他、甘いお酒(缶チューハイ等)などをセッティングしていた。


 氷はさすがにホテルに申し訳ないと思ったのか、取り敢えず3人前をフロントに頼んだとのことだった。


 季節は初冬。しかしこの開催県の夜間は、すでに真冬の寒さだ。


 和気ちゃんは、一度は綺麗にテーブルに並べた缶ビールを、ベランダに出し自然の冷蔵庫で冷やすことにした。


 ほどなくして『八葉クラブ』・『蕨』・『国吉クラブ』の面々と、その他のチームが数人が二次会の部屋に集まった来た。


 総勢25人である。(その後、入れ替わり立ち返りであったが、常に20人は居たと記憶している。)


 部屋はイッパイになった。


 大御所の三輪さんは、「この状況じゃ、考えて来た作戦の実行は不可能だわ。せっかくA区の歴史について語ろうと勉強したけど、仕方ない。陽ちゃん、プランBで行きましょう!」と言った。


 陽介は、「プランB?」、「他の作戦も考えてたのか?」と思い、三輪さんに「プランBを用意しているとは、恐れ入りました。で、どんな作戦ですか?」と聞いた。


 三輪さんは、「行き当たりばったり!」と言い捨て、多くは語らなかった。


 陽介は、「要するにプランBというのは、考えていたことではなく、予想に反して大人数になってしまったので、ただ楽しく飲もう!、明日の試合を有利に進めようとする努力は度返しして、楽しく飲もう!」ということだと理解した。


 彩姉さんはまだ買い出しから戻ってはいなかったが、三輪さんが乾杯の音頭をとり二次会が始まった。


 昨年も一緒に二次会を楽しんだ『八葉クラブ』と『国吉クラブ』の面々は再開を喜び、また今回の対戦相手『蕨』とその他のチームの面々は、永竹クラブの二次会の噂を楽しみに、グラスを重ねた。


 八葉クラブと国吉クラブの監督が、「彩ちゃんは、何処に行ったの?」と和気ちゃんに聞いた。


 和気ちゃんは、「何か、二次会参加者が多くなりそうなんで、タクシーを飛ばしてお酒を買いに行ったよ!」と答えた。


 すると、八葉クラブの監督が、「何だぁ~!?、そんな心配しなくても、ここに地酒を持って来てるからお酒が足りなくなることはないのに!」と言いながら、大きな袋から一升瓶にラベルの付ていない造り酒屋蔵出しの地酒を2瓶取り出した。


 それを見ていた国吉クラブの監督も、「そうよ、もっと早く言ってくれればよかったのにぃ~!」と言いながら、これまたラベルの付いていない一升瓶を2瓶取り出した。


 陽介は、「ここに既に一升瓶が4本。猛獣コンビがA区から持って来た一升瓶が2瓶。そして彩姉さんが買い出しに行って買ってくるであろう一升瓶が2本。合計8升。そしてビールやその他の酒がある。いくら呑兵衛が揃ったとはいえ、この量をどうやってのむのだろう?」と思った。


 彩姉さんが戻って来た。


 それを見た八葉クラブの監督がすくっと立ち上がり、「皆さ~ん、永竹クラブの彩ちゃんが戻って来ました!、あらためて乾杯しましょう!」と言って、やっと両手の荷物を降ろしたばかりの彩姉さんに、地酒がナミナミと注がれたグラスを手渡し、「それでは、この大会の親睦を深め、明日の試合を頑張りましょう!、カンパ~イ!」と、音頭をとった。


 彩姉さんは、日本酒を3升買って来たが、目の前に一升瓶がすでに6本並んでいるのを見て、さすがに「これ、全部のむのぉ~!?、朝までじゃ時間が足りないよ~!」と言って、皆なを笑わせた。


 二次会は楽しく時間が過ぎて行ったが、永竹クラブの面々はそもそも全体の親睦会以前から飲んでいるため、そろそろ限界が来た者も出始めた。


 彩姉さんは、そうした者に「明日試合があるから、部屋に帰って寝ていいよ。後は私達が付き合うから…。」と優しい声をかけたが、同時に「部屋に戻る前に、企業の担当者に声をかけて、この部屋に来るように言ってきて!、彩子が呼んでるって言ってネ!」と指示を出していた。


 陽介は、「企業の担当者は、A区から一筋縄ではいかない家庭婦人チームを引率して来たのだから疲れているだろうに!、そっとしておいてあげればいいのに。」と思ったが、猛獣コンビにそのような慈悲は全く無い。


 永竹クラブの飲みつかれた者が部屋を退出すると、間もなく企業担当者がやってきた。


 開口一番、「うゎ~、酒クサっ!」と言い。続けて社交辞令として「本日はありがとうございます。明日の試合、頑張って下さい!」と言った。


 彩姉さんは、「これ八葉クラブさんの地酒。」と言って、担当者にグラスを渡した。そして「国吉クラブさんの地酒もあるから、飲み比べてみてネ!」と、明らかに「直ぐには帰さないゾ!」という態度を見せた。


 担当者は、対戦相手を決めるにあたって、猛獣コンビの意向をくみ取れなかった後ろめたさから覚悟を決めたようで、「はい。一緒飲ませていただきます!」と頭を下げた。


 陽介は、「明日は誰よりも早く起きて、段取りをしなければならないだろうに、可哀そうに…」と同情したが、この雰囲気の中それを口にする勇気はなかった。


 「あ~ぁ、明日どうなっちゃうんだろう!?、A区の役員に叱られるだろうなぁ?」と思いながら、美味しい地酒を飲んでいた。

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