私は宴会部長!、私は宴会部長補佐。懲りない猛獣コンビの姑息な作戦 2
小学生以下の姑息な作戦を聞いて、「相変わらずバカバカしい事を本気で考えるピュアな猛獣コンビだ!」と、苦笑いをしながら帰宅した陽介だったが、その2日後の朝あらためて中華料理屋に召集がかかった。
今度は、大御所の三輪さん・川さんも一緒だという。
陽介は、大御所が同席なら、さすがの猛獣コンビも姑息なことを考えることをやめて、穏便に親睦会を済ませ、翌日の試合には一生懸命応援をするという話をするんだろうと、半ばホットした気持ちになった。
「きっと、大御所に怒られたんだろうな!?、昨年の醜態のことがあるから、結構厳しく怒られたんだろうな!?、ざまぁ見ろ!」と、笑いながら心の中で思った。
今日の中華料理屋への招集時刻は20:00。大御所に気遣った時間にしたのだろう。
陽介が定刻に店に到着すると、既に大御所2人と猛獣コンビは席に着いて、何やらメモをめくりながら話をしていた。
後で聞いたのだが、陽介に召集をかけた時刻より30分前に集合して、陽介に話すことを打合せしていたとのことだった。
さて陽介が席に着くと、早速ママさんが「はい。お店から!」と言って、相変わらず陽介の大好物ネギチャーシューを出してくれた。
陽介は、「ありがとうございます。」と言って、生ビールを頼んだ。
すると、すぐに生ビールが2つ出て来た。
陽介は、「あれっ?、誰か生ビール頼みましたか?」と周りを見渡しながら言ったが、ママさんが「どうせ陽ちゃんはカンパイ直後に一気飲みしちゃっうんだから、最初から2つ持って来たのよ!」と、笑顔で言った。
「そうでしたか。ありがとうございます。」と言いながら、陽介は皆なとジョッキを合わせた。
「何食べる?」と彩姉さんが陽介にたずねたが、三輪さんが「飲み会になる前に、陽ちゃんにちゃんと話をしをしたいから、簡単な物がいいわ。そうそう揚げピーナッツはどう?」と彩姉さんに言った。
「そうですね!」と言って、彩姉さんは揚げピーナッツを注文したが、その直後に出て来たのは餃子。どうやら陽介が来たら餃子を出すように和気ちゃんがすでに注文していたようだ。
ちなみにこの揚げピーナッツ。どこにでもある物だが、どうゆう訳かこの店のは美味しい。ネギチャーシューに負けずとも劣らずだ。(読者の皆さんにお店を紹介したいが、ママさんがナイショにしてほしいとのことなので、悪しからず)
餃子と揚げピーナッツを食しながら、三輪さんが「あのね陽ちゃん。この前は和気ちゃんたちが懲りずに姑息な作戦を言い出してゴメンネ。陽ちゃん怒ってない?」と切り出した。
陽介は、「そうだろう!、そうだろう!、良識のある大御所は当然そうなるよな!」と、心の中で思いながら、「大丈夫ですよ!、むしろ微笑ましかったですよ!」と笑って対応した。
すると三輪さんが、「良かった!、彩ちゃんが陽ちゃんは弟分だから大丈夫って言ってたけど、私、陽ちゃんが本当は怒ってるんじゃないかと思って、心配してたのよ。これで話しやすくなったわ!」と言った。
続いて川さんが、「本当に彩ちゃんと和気ちゃんは子供で懲りないないんだから。もう少しまともなことを考えてくれればいいのに…、ゴメンね陽ちゃん。」と言ってくれた。
陽介は、「いいんですよ、彩姉さん達はピュアで子供の心を持った人だということです。」と気を遣った。
彩姉さんは、「陽ちゃんありがとう!、さすがに私の弟分だわ。心が広い。」と言い、「あのね、この前話した作戦を三輪さんと川さんに話したの。そうしたら、それじゃぁ陽ちゃんが怒るのも無理はないって言われちゃって…。結論から言うと今回の遠征では、三輪さんと川さんが作戦に参加してくれることになったのよ!」と言った。
陽介は、口にしていた生ビールを吐き出し、「はぁ~!?、姑息な作戦はやめて、応援に徹するって話じゃないんですか?、なんで大御所まで参加して作戦を考えてるんですか?」と、驚愕しながら、いや呆れながら言った。
三輪さんが、「今回の遠征は、楽しむことを第一に臨む。もちろん試合は相手に失礼のないように頑張る。ってことを陽ちゃんが了解してくれたんで、私達も楽しみたいと思って…(^^;)」と説明した。
彩姉さんは、「まっ、そうゆうことだから、陽ちゃん宜しくネ!」と言い、「それでね…」と続けた。
彩姉さんが言うには、前回陽介に作戦を話して却下された後、
①企業の担当者をあらためて飲み会に誘い、今年も担当するか確認した。そして可能な限り昨年と同
じ組み合わせにならないように、頼んだ。それに前回仲良くなった対戦相手に、生産県の代表チーム
と戦力(酒の)を聞いた。(メモをめくっていたのは、このリストのようだ。その中には赤いマーカーが
引かれ、『酒、強し!』と書かれていた)
②大御所に相談したら、作戦内容が懲りていない。私達も参加させてほしいとのこと。
③新しい作戦として、二次会で対戦相手にA区の歴史と永竹クラブの歴史を長々と話し、疲れたところ
で宴会を始める。そうすればつまらない話しの後だからお酒がすすむ。
④彩姉さんと和気ちゃんだけでは、昨年同様返り討ちになりかねないから、大御所2人もそれに参加し
て朝まで付き合う。
⑤したがって、大御所2人も、翌日の試合に出場しなくてもいい。
⑥これは昨年と違うところなんだけど、A区に帰って来たら、当日中に今年の遠征についての検証を行
い、その問題点を話し合い来年の遠征に備える。
という話しだったと思うが、4人で話し合ったとのことだった。
陽介は、大御所の良識を期待していただけに、前回は小学生以下の姑息な作戦と思っていたことが、グレードをアップしたバカバカしい作戦となっていることに、頭をかかえた。
そして、永竹クラブの面々は、年齢は重ねているものの未だに心は子供なんだと、あらためて感じた。
ただし対戦相手は、企業の生産県のチーム。以前も話したが一般的に男女共お酒に強い県と称されている。せめて大御所だけは大人であってほしかった。と陽介は思ったが、この幼稚な作戦に大御所も参加するということなので、陽介は「ご自由にして下さい!」と言って、早く酔ってこの話をおをらせようと料理をしこたま注文し、必死に飲み続けた。
その様子を見て彩姉さんが、「大丈夫!、私が宴会部長。和気ちゃんが宴会部長補佐。責任を持ってつとめますから!」と言った。
陽介は早く遠征が終り、この悪夢の作戦が他チームの批判をあびないように祈った。
余談だが、企業の担当者が、彩姉さん達の飲み会の誘いに付き合うのは何故だろう?と思っている読者もいるかと思う。断ればいいのに…。と。
これも以前話したが、この企業の冠が付いた親睦大会は、その企業の商品を生産している県と、それを消費している都県との間で行われる。したがって永竹クラブが拠点としているA区は消費地区。何を生産していて何を消費しているのかは、ここでは話せないが、少なくとも永竹クラブはほぼ全員がA区を地元としている消費者で、企業にとってはお客様である。
当然お客様の誘いを断るのは気まずい。ましてや彩姉さんと和気ちゃんは企業が生産している物のМEGA消費者だ。嫌でも付き合うことになる。
仕事ではなく、バレーの話しで付き合わされるのだから、企業の担当者には極めて迷惑な話しである。
しかし猛獣コンビに悪気はない。容赦もない。したがってたちが悪い。陽介は企業担当者に同情していたようだ。