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夢破れた11月の一般大会 お酒抜きでの話し合い 1

 次の練習日、陽介はいつもと変わらない基礎練習と、少しずつではあるが力を付けて来たチームに、それに見合ったひと通りの練習を終えた後、練習時間を30分程残しメンバーに話し合いの時間を与えた。


 その時点で、永竹クラブのメンバーが全員揃っていることを確認しての事だった。


 「それでは、先日の飲み会でお約束した通り、これから皆さんで話し合う時間を設けさせて頂きます。僕はこれで失礼しますので、僕に引き続き監督を依頼するかどうかも含め、よく話し合って下さい。また、いかなる結果になろうとも、三輪さんからその報告を必ず僕に下さい。重ねて言いますが、僕に対しての遠慮は要りませんので、しっかりと話し合って下さい。」と陽介は皆なに言った。


 するとキャプテンのヨシちゃんが、「30分しかないのに、よく話し合えって言われても時間が足りません!」と、もっともらしく陽介に言い放ったが、陽介に「でも、皆が揃ったのは今から5分位前ですよ!、それが証拠に最後に来た人は、まだ私服のままです。自分の事だけ考えるのではなく、チーム全体の事も考えて下さいネ!」と言われた。


 しかしヨシちゃんは、自分が否定されると必ず言い訳をする癖があり、いい歳をして自分の常識が世間の非常識だと未だに気付かないまま、屁理屈にもならない事を言い出す。


 今回の言い分は、「全員揃わなきゃ話し合いを始めないないなんて、初めて聞きました。そういうのは事前に言ってもらわないと、こちらにも準備がありますので。30分じゃ大した話は出来ません!」だった。


 これには大御所の三輪さんが、「ヨシちゃん、陽ちゃんは皆なで話し合う時間を作ります!と言ってくれていたのよ。だから全員が揃うまで待ってくれていたんじゃない。全員がこの時間まで揃わなかったのはチームの事情で、陽ちゃんのせいではないのよ。それにもし全員揃わなくても話し合いに時間が欲しかったのならば、それこそ陽ちゃんに事前にお願いすべきじゃなかったの?、ヨシちゃんが陽ちゃんに対して反感を持っているのは、あなたの言動でよくわかるわ。でも今のあなたの言い分はあまりにも陽ちゃんに失礼よ!、謝るべきだわ!」と、さすがに物申した。


 それを聞いていた陽介は、「三輪さん、ありがとうございます。でも詫びは結構です。ヨシちゃんの事で皆さんの話し合いの時間が短くなってしまうのは、僕の本意ではありませんから…」と言い、体育館に一礼して帰途についた。


 今日の練習場所は、A区内にある公立中学校の体育館。A区は都心にあるため多くの公立小学校・中学校・高等学校の体育館は、校舎の最上階に設置されている。学校の敷地面積が狭いためだ。


 したがって、今日の練習場所の体育館も、校舎の4階にあった。


 陽介は階段を降り、玄関で靴を履き替え、中学校の主事さんに挨拶をして外へ出た。


 (余談だが、陽介もA区で生れA区で育った地元民である。陽介が中学生の頃までは、学校内の雑務や管理を行っていた方々を主事さんと呼ばず、用務員さんと呼んでいた。そして当時は宿直などの仕事もあり、夜遅くまで用務員室には明かりがついていて教員の会議や体育館を使用している団体が、多少使用時間を超過してもさしあたって問題は起こらなかったが、現在はそうした業務に従事されている方々の多くは区が委託した業者から派遣されている。したがって決められた時間に学校から外に出ないと、そうした方々の労働時間に問題が起こり、時間を守らない者は学校施設の使用禁止などの処分を受けることになっていた。(もちろん、突然使用禁止になるのではなく、警告を受けてもなお違反を繰り返した場合に使用禁止になる。))


 外へ出た陽介は、自宅に帰ろうと歩き始めた。すると前方から「陽ちゃ~ん、お疲れ様ぁ~!」と言いながら手を振る肉の塊が向かって来た。


 A区は都会。ましてや陽介が今歩いている場所は公立中学校の前である。当然街灯や反射板などの防犯設備は整っている。


 声の様子から明らかに彩姉さんだと陽介には理解出来たが、設備が整っているにもかかわらず、夜分の都会の街灯がその姿を猛獣から肉の塊に変化させてしまうのは、実に恐ろしいことだと実感した。


 陽介も「自分も気を付けないと、遠くから見られるとデブを通り越して、何か得体のしれない不審者として通報されかねない」と、あらためて思った。


 手を振りながら陽介の所にやって来た彩姉さんが、「話し合いは終わったの?」と聞いて来た。


 陽介は、「今やってますよ!、僕は話し合いに参加しないことになっているので、お先に失礼して来ました。」と言った。


 彩姉さんは、「それじゃ、終わるまでいつもの所で飲もうよ!」と誘って来たので、「いやいや、三輪さんに話し合いの結果は、結論がどうであれ僕に連絡を下さい!と言った手前、今日は皆なと会わないようにしたいです。結論の中に僕に引き続き監督を依頼するかについても含まれているので…。」と陽介は返答した。


 彩姉さんは意外にも、「分かった。それじゃ結論の内容ががどうであれ、また今度一緒に飲もうね!」と陽介が飲むことを断ったことに、あっさりと理解を示した。


 陽介は、彩姉さんの素直さに若干の気持ち悪さを覚えながら、「彩姉さんは、何しに来たんですか?まさかこれから話し合いに参加するんですか?」と聞いた。


 彩姉さんは、「私は選手を引退してるから話し合いには参加しないし、飲み会要員ではあるけどチームの一員だから、皆が決めたことには従うつもりよ。いずれにしてももうすぐ練習終了時間だから、飲みに行こうとと思って来たのよ。」と笑顔で応えた。


 「そうでしたか。飲み過ぎないように、ほどほどにして下さいネ!」と陽介は笑いながら言い、その場を去った。


 その後、三輪さんから連絡があるまで、どのような話し合いが行われたのか、陽介には全く分からないので、帰宅しシャワーを浴びて夕食を食べた。


 夕食を食べている時、陽介の奥さんが、「今日は異様に早く帰って来たじゃない。いつもは私達が寝ている時に帰って来るのに。早く帰って来て夕飯を食べる時は事前に連絡をくれないと、夕飯用意出来ないよ!、今日はカレーがあったからいいけど…」とムッとした表情で、言った。


 陽介は奥さんに、平に詫びを入れ夕食を済ませ横になったが、疲れているせいか寝落ちした。

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