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夢破れた11月の一般大会 『これからの時間』 6

 ヨシちゃんが陽介に向かって話し始めた。「私達は、陽ちゃんが監督になってから確かに強くなったと思います。弱小地区ではあるけど、陽ちゃんがいつも言っているように『勝つことのみによって味わえる喜び』を感じることが出来るようになったのは事実です。そしてそれを楽しんでいると思っているのは、私だけじゃないと思っています。ただ、練習中や試合中に私達にかける言葉が、キツイんです。もっと優しい言葉をかけるようにして欲しいです!」とのたまった。


 それに同調するように、マメちゃんに「余計なことを言うな!」と頭を叩かれたよっちゃんが、「そうだ!、そうだ!、もっと優しく言え!」と後を追った。


 周りにいた面々も、「そうだよねぇ。私達は女の子だし、もっと優しく扱って欲しいよね!、何かいつも怒られているような気がするよねぇ~!」と言い始め、大御所の三輪さんや川さんまでもが、「そうよねぇ。陽ちゃんの物言いは、チョッと厳しい所があるわよね。それにブラックジョークも時々本気で傷つく時があるしネ!」と言い出す始末となってしまった。


 陽介は、ヨシちゃんの話しに直接反応する前に、「三輪さん、川さん、僕のブラックジョークで傷つくことってどんなことですか?」と聞いてみた。


 川さん曰く、「私達が良いプレーをした時にほめてくれるのは、本当に嬉しいし励みになるんだけど、その後にプレーをミスすると、『いつまでも木に登ったままでいないで、とっとと降りて͡来い!、うかつにほめなきゃよかった!』とか、『思い込みと勘違い。これはオバサンの2大要素だ!、自分のプレーが上手いなんて思うんじゃない!』とか、『自分を全日本の選手と重ねているのは個人の勝ってだけど、そもそも年齢と体型が違う』とか、『試合に来るのに、そんな化粧をしても意味がない。念入りに化粧をするより念入りにウォーミングアップをしろ!』とか、『酒のツマミを落とすと勿体ないとか、おしいとか言って残念な顔をするのに、コートにボールが落ちるのは何とも思わないのか?』とか、『飲んでる時はまわりに迷惑なくらい大声を出すのに、何でコートでは声が出せないんだ!』とか、今のはほんの少しの例だけど、数えればきりがないわよ!」と言った。


 陽介は、「確かに、そのようなことを言った記憶はあります。でも事実でしょ?」と正当性を主張したが、ここで話のきっかけを作ったヨシちゃんが、突っ込みをいれてきた。


 「まぁ、陽ちゃんは私達を鼓舞するために言ってるんだととは思うけど、私達結構傷ついてるんだよね。練習の体育館でならまだしも(それでも傷ついてるけど…)、試合会場や練習試合で相手の体育館に行った時に言われると、まるで私達が本当に気が利かない、ただのドンクサイ飲ん兵衛みたいに思われてしまうじゃない!、もっと私達に気を遣って優しい物言いをしてもらいたいものだわ!」と口にした。


 陽介はヨシちゃんにあらためて、「でも事実でしょ?、違うならそう言ってよ!、確かに周りにチョッとだけウケを狙っている感はあるけど、事実以上のことは言ってないと思うけど…」と返答した。


 すると今度は和気ちゃんが、「それが問題なんだよ!、事実だとしてももっと周りに気を遣って言って欲しいんだよ!、私達女の子だよ!」と言い出した。


 陽介は、「女の子だか、女性だか知りませんけどね、ボールーが自分のコートに落ちたらバレーボールでは、相手の得点になるんですよ!、だからそうならないために貴女達を鼓舞してるんです!、言われたくなければ、もっと試合に集中してボールをコートに落とさない。声を出す。丁寧なパスをする。速くて低くてエンドラインまで届くサーブを打つ。そういうプレーを出来るように心がけて下さいよぉ~!」と返した。


 しかし、「もっと優しい物言いを!、私達に気遣いを!、私達は女の子だ!」という意見が、多数を占めた。


 まるでシュプレヒコールのごとくで、陽介に訴えた。


 陽介は心の中で、「何が女の子だ!?、何が気を遣えだ!?、このクソババアぁ!!!、このウルトラデブ!!!」と思ったが、そんな事を言ったら「パワハラだ。セクハラだ。」と言われかねないと思い、「そうですか、では僕は何と言えば皆なは納得するのですか?」と聞いてみた。


 するとヨシちゃんが、「例えばサーブでエースをとったとしましょう。そういう時は「ヨシちゃん、ナイスサーブ。この調子で次も頼むよ!」と言い、もしその次にサーブをミスしてしまったら「仕方ない。次はレシーブで頑張って!」とか言って欲しいで~す!」と言った。


 陽介は、「いつも、そう言ってるじゃない!?」と言ったが、ヨシちゃんは、「いつもはそうじゃない。陽ちゃんが言うのは「あぁ~ぁ、ほめなきゃよかった。全くほめた直後にあんなヘナチョコなサーブを打つかね?、ほめられて木に登るのは良いけど、木の上でゆっくりタバコ吸ってないで、とっとと降りて来い!」とか言ってま~す!」と言って、生ビールを飲み干し「ママぁ~、おかわり頂戴ぃ~!」と高々とたくましい左腕を上げた。


 そしてさらに、「ねっ、私達に気を遣ってないでしょ?」と勝ち誇ったように言った。


 すると、「そうだ!、そうだ!、私達に気遣いを!」と、再びシュプレヒコールが始まった。


 さすがに三輪さんが笑いながら、「そんなに陽ちゃんを責めないで!」と言ったが、陽介はこのおぞましい事態に、酔っているとはいえ腹が立って、「わかりました。これからは言い方を変えましょう!」とニタッと笑い、話し始めた。

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