不思議な娘 ヤマちゃん 1
ヤマちゃんはバレーボール経験者。身長も170cmと高く、205cmの家庭婦人ネットの高さでは特に有利な体格である。前衛ライトのポジションには、やはりバレーボール経験者のヨシちゃん(中華料理屋で大活躍の像アザラシ)もいる。こちらも身長が170cmあり、永竹クラブの両エースといったところだ。しかしヨシちゃんは以前話したように、何かにつけ口を出し練習や試合をかき回す。自分がこのチームでは中心選手の一人だと認識しているのにもかかわらず、責任感がない。でもヨシちゃんだってバレーボール経験者。心の何処かでは試合に勝ちたいと絶対に思っていると陽介は感じていた。ただ、ヨシちゃんはヤマちゃんと違って、絶対に「私の所にトスを持ってきて!」とは言わない。したがって、ヤマちゃんもヨシちゃんも、気持ちの上では何処かでつながっていた思うのだが、当時の永竹クラブでは、自他共に認める犬猿の仲だった。ヤマちゃんが吠えればヨシちゃんは寡黙になり、ヨシちゃんが吠えればヤマちゃんが寡黙になるという具合だ。
ヨシちゃんのことは後でふれるが、このヤマちゃんチョッと不思議な娘であった。陽介も付き合いが長くなるにつれ、意外にも良い奴だと分かったが、陽介が監督を引き受けた時は全くヤマちゃんに受け入れられていなかった。後にそのころの話しをした時、ヤマちゃん曰く、陽介の前々任監督が女性で、ヤマちゃんとは素晴らしく良い関係を持っていたとのこと。結局その女性監督は家庭の事情で永竹クラブを辞めることになったのだが、ヤマちゃんにとってはその監督のイメージが強く、陽介の前任監督も中々受け入れられず、結構な期間、選手と監督という立場でありながら、練習中も飲み会も素っ気ない状態が続いたらしい。陽介もご多分に漏れずヤマちゃんの洗礼を受け、素っ気ない態度で接せられた。練習中に陽介がヤマちゃんに「今のアタック良かったよ~」と言えば、ヤマちゃんは「あっそ」、陽介が「今のレシーブ最高!」と言えばヤマちゃんは無言、陽介が「息が荒いけど大丈夫?」と心配すれば、ヤマちゃんは「別に…」、飲み会でヤマちゃんが会話している時に陽介が間に入って話し始めると、ヤマちゃんは無言になり、その会話の内容から「そうだよね、ヤマちゃん?」と陽介が同意を求めると、ヤマちゃんは物凄く嫌な顔をして、「そう!?」という具合に全く会話は成立しなかった。陽介が永竹クラブに顔を出し始めた頃からそうだった。陽介が監督になってからは、監督と選手という立場から、多少は会話が成り立つようになったが、いずれにせよ、いわゆる普通の関係になるには時間がかかった。




