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都大会を目指す永竹クラブ。11月の一般大会 15

 #17よっちゃんのサーブが続く。


 #17よっちゃんは持ち前の腕力で、力強いサーブを打った。


 スリーメディスンは、バックライトがこの強烈なサーブをナイスカット。セッターは高身長のレフトアタッカーに高いトスを上げた。


 高身長レフトアタッカーは、永竹クラブの実質1枚ブロックを全く相手にせず、凄まじいアタックを打ち込み決めた。


永竹クラブ3-6スリーメディスン


 スリーメディスンのサーブ。


 永竹クラブは、主審のサーブ許可の吹笛があると、バックレフト#13シズさんとバックライト#9井口ちゃんがポジションを変える。#13シズさんが狙われないための苦肉の策である。


 スリーメディスンのサーブは、それを知ってか知らずか相変わらずバックレフトに飛んでくる。


 永竹クラブは、ポジションチェンジしてバックレフトに入っている#9井口ちゃんがナイスレシーブ。セッター#2ヤマちゃんはレフト#17よっちゃんにトス。


 #17よっちゃんは、スリーメディスンの高い2枚ブロックめがけアタックを打った。


 スリーメディスンは、中衛ライトがワンタッチ。コースが変わっってバックライトがアンダーで中衛レフトに二段トス。


 中衛レフトはネットから離れた二段トスを打ち切れず、軽くはたいてチャンスボールを返した。


 永竹クラブは、バックセンター#3キーちゃんがオーバーでセッター#2ヤマちゃんにパス。


 しかしそのパスが大きく、相手コートに返りそうになった。


 #3キーちゃんの「ゴメ~ン!」という大きな声が飛んだ。


 セッター#2ヤマちゃんは、そのボールを170cmの身長を生かしジャンプ一番右手で押し込んだ。


 スリーメディスンは、そのプレーを予測していたかハーフセンターが前に詰めてアンダーでセッターにパス。セッターはライトアタッカーにバックトス。


 ライトアタッカーは、永竹クラブのレフト#17よっちゃんと中衛レフト#8ハリちゃんの2枚ブロックめがけアタックを打ち込んだ。


 永竹クラブは#17よっちゃんが、「ワンチィー!」と大きな声を出した。


 ボールはナイスブロック。鋭角に相手コートに落ちた。かと思ったら、その鋭角に落ちたはずのボールが、偶然にもブロックカバーに入っていたスリーメディスンの中衛ライトの足に当たりコート中程に上がった。


 そのボールをハーフセンターが、高身長レフトアタッカーに二段トス。


 高身長レフトアタッカーは、そもそも二段トスになると打点が下がるが、ネットからトスが離れていたため、これもチャンスボールで永竹クラブコートに返した。


 そのチャンスボールを、ハーフセンター#16イソちゃんがオーバーで丁寧にセッター#2ヤマちゃんにパス。#2ヤマちゃんは、ライト#1ヨシちゃんにトス。


 #1ヨシちゃんは、スリーメディスンの高い2枚ブロックを避けアタックを打ったが、ネットに当たり辛うじて相手コートにボールが返った。


 スリーメディスンは、中衛レフトがアンダーでセッターにパス。セッターはライトアタッカーにトスを上げた。


 ライトアタッカーは、ラリーで疲労しているのか助走無しでアタックを打った。


 永竹クラブは、その威力の無いアタックをバックレフトに入っている#13シズさんがアンダーでセッター#2ヤマちゃんにパス。#2ヤマちゃんはライト#1ヨシちゃんにトスを上げた。


 #1ヨシちゃんは、肩で息をしているが、力を振り絞りスリーメディスンの高い2枚ブロックめがけアタックを打った。


 スリーメディスンは、中衛レフトがワンタッチ。


 中衛レフトの真上に上がったボールを続けて中衛レフトが触り(ブロック直後のボールは同一プレーヤーが連続してコンタクトしてもドリブルの反則にはならない。ただしコンタクト回数は2回として扱われる)、永竹クラブの中衛ライト#11和気ちゃんの前に返って来た。


 難しいボールではなかったが、#11和気ちゃんは動かない。


 #1ヨシちゃんが、「和気ちゃ~ん!!!」と悲鳴ともとれる声で絶叫したが、動かない。


 ボールは#11和気ちゃんの目の前に落ちた。


 #11和気ちゃんは、このラリーを見ってしまっていたようで、まさか自分のところにボールが来るとは、全く予期していなかったようだ。


 ラリーを制したスリーメディスンは、全員が両手を上げて大喜び。


 一方、永竹クラブは我慢していた疲労が一気に表に出た様子で、肩で息をしながら下を向いていた。


永竹クラブ3-7スリーメディスン


 永竹クラブは、このプレーで何とか保ってきた集中力を失ってしまい、この後連続失点をしコートチェンジ(フルセットなので11点でコートチェンジとなる)をむかえた。


永竹クラブ3-11スリーメディスン


 陽介は「皆な、頑張って!、出来ることを一生懸命やろう!、何とか相手のサーブを切って自分達のリズムを取り戻そう!」と、コートチェンジのため移動しているメンバーに声をかけた。


 しかし、皆な無言だった。


 頑張ろう!というよりも、早く終わらないかなぁ!?、という雰囲気にさえ見えた。


 仕方無いことだと陽介は思ったが、対戦している相手にこの雰囲気は絶対に良くない。失礼だとさえ思った。


 陽介は、コートチェンジが終了したと同時に、タイムアウトを要求した。


 ベンチに戻ってきたメンバーに、「現状は僕も良く理解出来ます。ただ今は公式戦の決勝の最中です。今の雰囲気とモチベーションでこのまま続けるのは、相手に失礼です。どうしてもこの状態のまま続けるのであれば、棄権をしましょう!」と言い、続けて「出来る範囲で良いのです。今の状態を劇的に改善すのは無理だということは、誰もがわかっています。出来る範囲で一生懸命プレーすれば良いのです!、誤解のないように言っておきますが、僕はケガをするまで、あるいは倒れるまでやれ!と言っている訳ではありません。出来る範囲で一生懸命やれば良いのです。出来ますか?」と尋ねた。


 #9井口ちゃんが、「最後まで頑張ろう!」と言うと、#1ヨシちゃんをはじめ皆が、「よし、頑張ろう!」と言った。


 タイム明け、スリーメディスンのサーブが続いたが、コートチェンジした後、永竹クラブは必死の健闘もむなしく、一度サーブ権が廻って来たものの、その後1点も取ることが出来ず、今大会で優勝して家庭婦人の構成員のまま都大会に出場するという夢は、果たすこと出来なかった。


永竹クラブ4-21スリーメディスン


 閉会式に参列したのは4チーム(優勝チーム・準優勝チーム・3位2チーム)だったが、各チームが1列に並んで式次第をこなしている中、永竹クラブはほぼ全員が座り込み、表彰状と記念品を授与されたキャプテン#1ヨシちゃんと#3キーちゃんですら、自チームの列に戻ると座り込んでしまう始末だった。


 閉会式が終わり、普段であれば試合の総括を陽介がするが、この日の総括は後日にすることとし、シャワーを浴びるように伝えた。


 皆な、疲労困憊だった。


 色々なハプニングがあったが、本当によく頑張ったと、陽介は思った。


 そんな気持ちで皆の帰り支度を待っていた陽介に、「陽ちゃ~ん!、残念だったネぇ~!、皆な本当に頑張ったよネ!、18時に予約しておいたからネ!、私、更衣室に行って皆に伝えて来るネぇ~!」と、彩姉さん(北極グマ)の声。


 どうやら、試合終盤から応援に来ていたようだ。


 ケガ人が出たり、諸事情で途中退場を余儀なくされた者がいたり、さらには皆な疲労困憊の状況なのにもかかわらず、『これからの時間』に棄権はないのであろうか?


 全く容赦がない。


 しかしそんなことは関係ない!、という様子で彩姉さん(北極グマ)は更衣室に走って行った。

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