都大会を目指す永竹クラブ。11月の一般大会 11
#9井口ちゃんは、#3キーちゃんと一言交わしてからサーブを打った。
比較的緩いサーブが相手コート前衛選手に向かう。
スリーメディスンは中衛ライトがオーバーでレシーブ。セッターはライトアタッカーに高いトスを上げた。
予想通りだ。
ライトアタッカーは、永竹クラブのレフト#17よっちゃんと中衛レフト#8ハリちゃんの2枚ブロックめがけアタックを打つ。
永竹クラブは中衛レフト#8ハリちゃんがワンタッチ。
高くやや後方・上方にボールが上がる、9人制のブロックとしては最高のブロックだ。
(6人制と違い、ブロックのワンタッチを1回のコンタクトとして数えるため、2コンタクト目でアタッカーに二段トス等の攻撃種類を選択できるトスを上げやすくするために、ブロックヒットしたボールがやや後方そして上方に上がることが、良いとされていた。某体育大や都大会などに出場するレベルが高いチームでは、2コンタクト目のボールをその選手がわざとネットに当て1回分多くボールコンタクトをし、相手のマークを外してトスを上げたりする。)
そのボールをハーフセンター#16イソちゃんが、ライト#1ヨシちゃんに二段トス。
#1ヨシちゃんは、相手の高いブロックめがけ思いっきりアタックを打った。
かと思ったら、2枚ブロックの真後ろにフェイント。
スリーメディスンのセッターがフェイントカバーに入っていなかったため、ボールはあっさりコートに落ちた。
スリーメディスンのメンバーも、疲れているに違いない。決勝戦に来るまでにに2試合。さらにはこの試合のために選手を揃えたため、普段から練習を重ねている訳ではないと想像できる。当然決勝を含めた3試合を、チームとして戦える体力は厳しいに違いない。
#1ヨシちゃんはガッツポーズ。皆な駆け寄りハイタッチ。
永竹クラブ10-15スリーメディスン
#9井口ちゃんのサーブが続く。
相変わらず、#3キーちゃんと一言交わしてからのサーブだ。
だが、#9井口ちゃんは1本目のサーブをネットにかけ、ミスった。
続く第二サーブ。
得点差がまだ5点あり、しかもこのセットも終盤であることから、通常であればつなぐために『入れるだけ』に近いサーブを打つことが多い2本目のサーブも、陽介は勝負するように指示した。
勿論#9井口ちゃんは、「そんなことは、わかってる!」と言わんばかりに、2本目のサーブを打った。
スリーメディスンは、ハーフセンターがオーバーでレシーブを試みるも、コートライト側にはじいた。
そのボールをバックライトが、レフトアタッカーに二段トス。
レフトアタッカーは、少しネットから離れた二段トスを、永竹クラブの2枚ブロックめがけ思いっきり打った。
二段トスをレフトアタッカーが打つ時は、高身長とジャンプ力を生かしてナイストスを打つそれと違い、相変わらず打点が下がる。チーム練習の量が少なく、二段トスの高さが一定しないのでその都度タイミングを合わせてジャンプしているせいであろう。
永竹クラブは、中衛ライトの#19イケさんが「ワンチィー!!!」と大声を上げた。
この#19イケさんのブロックも、やや後方・上方に上がるナイスブロック。
そのボールをハーフセンター#16イソちゃんが、再びライト#1ヨシちゃんに二段トス。
#1ヨシちゃんは、相手のブロックの位置をチラッと見て、アタックを打つための助走に入った。
と思ったら、最初の1歩を踏み出したところで助走を止め、#16イソちゃんが上げたナイス二段トスは、そのままコートに落ちた。
主審が、ボールデットの吹笛をし、続けてスリーメディスンの得点であるシグナルをした。
それと同時に、副審が永竹くクラブコート・ライト側で倒れている#19イケさんの所に駆け寄った。
永竹クラブのコートメンバーも駆け寄る。陽介も、ベンチにいるメンバーも駆け寄った。
#19イケさんは、コートでうずくまり、「イタタタタッ!、痛~いぃ!」と苦しみながら悶絶を打っている。
陽介は、「遂にケガ人が出てしまったか!」と、#19イケさんを覗き込み、「大丈夫?、何処が痛いの?」と聞いたところ、#19イケさんは「左足のふくらはぎが、つった!」と言ってふくらはぎをかかえながら苦悶の表情で答えた。
よく見ると、ハイソックッスをくるぶしまでさげ、露になった左足のふくらはぎの筋肉が、膝の裏側に届こうかいう位に持ち上がっていた。
いわゆる「こむら返り」の症状だと、陽介は思った。
痛がる#19イケさんを、メンバー数人でコートからベンチの方へ引きづりながら移動させ、心配そうに様子を見ていたが、観客席から「どうしたの?、状況は?」と声がした。
どうやらその声の主は、永竹クラブを応援してくれている関係者で、以前の試合で#9井口ちゃんが顔面を痛打した時に診てくれた、整骨院に従事している看護師さんだった。
永竹クラブを応援してくれる関係者に、医療に従事している方もいるとは…。ありがたいことだ。
後で聞いたのだが、その方は#9井口ちゃんの友人で、以前の試合で#9井口ちゃんが顔面にケガをしたので、心配で試合を見に来ていたとのことだった。
やはり、持つべきものは「現金!」。いやいや、持つべきものは「友」であると、あらためて感じた。
しかし、#9井口ちゃんが状況を説明しようとした時、主審から「ピッピッ。」とこまかい吹笛があった。
慌てて主審を見ると、両腕をお腹の前でクルクルと回し、メンバーチェンジを伺うシグナルをしていた。
そう、#19イケさんの事態は深刻だが、一方では試合中であることも事実である。
主審は、試合をルールの通り進行させなければならない義務がある。
副審が陽介のところに来て、「メンバーチェンジする?」と聞いて来た。
副審の「する?」という発言は、メンバーチェンジか棄権かを選択するように。という意味だ。
2セット目の永竹クラブは、既に#4川さんと#13シズさんのメンバーチェンジを行っており、#4川さんは#13シズさんとの「行って来い」の交代しか出来ない上に、ベンチには#11和気ちゃん(ジャイアントパンダ)しか残っていない。#6マメちゃんは帰宅した。
(ケガ人が出た場合、ルール上では、交代回数(当時3回)が既に終了している状況でも、選手がベンチにいる場合はそのセット特例として交代が認められる。ベンチに交代できる選手がいない場合(9人ギリギリで構成されている場合など)は、インジュワリー(発音は確かではない)タイムを取ることが出来、この間(確か5分)に回復しなければ自動的に棄権となる。)
陽介は、#11和気ちゃんの方を見た。
それに気づいた#11和気ちゃんは、目をそらした。
陽介はマネージャーの三輪さんに、「棄権しましょう!」と言ったが、それを漏れ聞いたメンバーが、「#11和気ちゃんがいるじゃない!、試合を続けようよ!」と言い出した。
しかし陽介は、「いや、ヤッパリ棄権しよう!、皆な疲労が溜まっている上に、これ以上ケガ人を出すことは出来ないから…」とメンバーに言った。
副審が、「どうする?」と催促に来た。
時間がない。
陽介は、「スミマセン!、棄権します」と副審に伝えようと、声を発しようとしたその時、「私が交代するよ!」と、物凄い力で#11和気ちゃん(ジャイアントパンダ)が陽介の左腕を引っ張り、副審に伝えることをさせないようにした。
陽介はベンチ前で体育館の床に転がり、「痛いなぁ~、まったく!、少しは自分の力を加減することを勉強してよ!」と顔をこわばらせて言い、それでも「棄権します!」と告げるべく起き上がり、副審のもとへ歩み出したが、今度はマネージャーの三輪さんが「陽ちゃん、試合を続けさせてあげて欲しい!」と腕を優しく掴んだ。
陽介は、「三輪さんまでも…」と思い、#11和気ちゃんの方を見た。
それでも三輪さんの腕を丁寧に振りほどき、副審向かって行ったが、陽介が副審に告げたのはメンバーチェンジだった。
三輪さんは、「陽ちゃん、ありがとう。」と言っていたが、試合後陽介は、この状況での自分の判断が間違っていたのではないかと、自責の念にかられた。
観客席から、#9井口ちゃんの友人看護師が下りて来て#19イケさんの容体を診ながら、治療のためのマッサージを始めた。
コートでは、#19イケさんに代わった#11和気ちゃん(ジャイアントパンダ)が「皆な~、ケガしないようにぃ~、頑張って行こう!!!」とその太い両腕を高々と上げて、大声で吠えた。
試合が再開される。
永竹クラブ10-16スリーメディスン




