練習試合 2
試合が始まると、相手チームのミスや、永竹クラブの実力を確認しようとの様子見もあり、同等の試合運びを見せた。陽介は、およそ普段の練習の成果は見ることの出来ない試合だと思ったが、何はともあれ『勝つ』ことに意味があると思い、静観していた。しかし10点を過ぎたあたりから(21点先取デュースあり)様子が変わり、あれよあれよという間に21点を取られ永竹クラブはそのセットを落とした。次のセットが始まる前の数分で、陽介はこのセットの敗因は、10点過ぎから相手チームがサーブを強く打ってくるようになったこと。その強いサーブを永竹クラブはレシーブ出来なかったことなどだと説明し、このことを次につなげるよう頑張ろうと言った。
ちなみにこの相手チーム、レベルが高いママさんバレーチームが所属する地域で活動をしている中堅どころのチームで、当時の永竹クラブのレベルでは、本来練習試合などしてくれるような相手ではなかった。しかし、皆なある程度は出来ると思ってうたようで、あっさり敗けたことや陽介に指摘された敗因が的確であったため、意外にも神妙な面持ちで次のセットのため待機していた。その中でただ一人、興奮気味に「私にトスを全部持ってきて!」と言った者がいた。
発したのはヤマちゃんだった。ヤマちゃんは前衛レフト。いわゆるエースポジションだ。前半同等に試合が運んだのに、サーブレシーブが出来ずにあっさり敗けたのが悔しかったのか、「どんなトスでも打つから、全部私に持ってきて!」と言い放ったのだ。しかし、相手チームの強いサーブになすすべもなく、トスを上げらる状況ですらなかった。ただただ乱れたレシーブを一応つなぎ、チャンスボールを相手コートに返すだけだった。ヤマちゃんは空しかったであろうと、陽介は推察していた。陽介が高校でバレーボールをやっていたころ、陽介のチームのエースは、「困ったときはいつでも俺の所にトスを持ってこい!、絶対に打ってやる!」と言って実際に決めてくれる、頼もしいエースであった。およそバレーボールをプレーする上において、6人制でも9人制でも、エースがそれを言うだけでチームは活気づくし頼もしく感じる。しかしこの時の永竹クラブは、実力的に相手チームに歯が立たなかった。何とかヤマちゃんに上げるトスも、打てるようなトスではなかった。ヤマちゃんのせいではない。
ちなみに2年後の同チームとの練習試合、永竹クラブは、相手の長所を出させながら、横綱相撲であっさり勝つことになるのだが、それはまたの話しで…。




