都大会を目指す永竹クラブ。11月の一般大会 1
5月の一般大会を、家庭婦人資格の構成員で制した永竹クラブは、A区史上初の快挙でその日の『これからの時間』に、大声援を贈ってくれた某体育大学生さんをゲストに迎え、一悶着あったものの都大会を目指すことを深夜の夜空に向かって吠えて誓った和気ちゃんをはじめ、メンバーが同じ方向を向くことになった。
しかし陽介がその後の練習で指示したのは、サーブ・パスなどの基礎練習と二段トス。来る日も来る日も練習試合をする日以外は、この基礎練習がメインであった。
そして、7月の企業の冠のついた家庭婦人大会、9月の家庭婦人大会を危なげなく、いやむしろ強さを見せつけ優勝した。
7月の企業の冠がついた家庭婦人大会を優勝したことで、再び永竹クラブはA区の連盟から推薦を受け12月に遠征に出ることが決まった。
彩姉さんは、前回と違う場所に遠征に行くことが楽しみで仕方ない上に、本人はとっくに現役を引退している気楽さから、猛獣コンビを組んでいる和気ちゃんと、早速遠征先での宴会でどのように相手チームを酒で潰そうかという姑息な作戦を、練習後の『これからの時間』で打ち合わせをするのに余念がなかった。
陽介は2人のその作戦を聞くたびに、「どうでもいいんですけど、彩姉さんは選手として出場しなににしても、和気ちゃんは現役だから出場するために前日は早く寝ないとネ!、第一前回の遠征ではそれで失敗してるでしょ!」と笑いながら言い続けた。
彩姉さんと和気ちゃんの猛獣コンビは、毎回言われる陽介の苦言に「そうなんだよね。本当は和気ちゃんを早く寝かさないといけないんだけど、前回の対戦相手だった八葉クラブさんと国吉クラブさんと、あの試合以降ず~っと連絡をとっていて、今度の遠征も出場が決まったらしいのよ。ほらっ、そうするとヤッパリ義理とか人情とかがあるから、その人達とも飲まなきゃならないし、新しい対戦相手とも飲まなきゃならないじゃない!、だから私だけだと朝までもたないんだよね~!」と北極グマがのたまうと、ジャイアントパンダが「そうだよね!、ヤッパリ義理人情はプレーを越えたところにあるから大事なことだよ!」と、屁理屈で言い訳をして、暗に陽介に試合には出さなくていいことを訴えるありさまだ。
陽介は、「まぁ、和気ちゃんは準大御所の域だから、試合に出場しなくてもいいか!」と、思ってはいるものの、他のメンバーは試合に勝つために練習をしているので、簡単に「ハイ!試合に出なくていいですよ!」とは言えなかった。
ただ、それが猛獣コンビのモチベーションとなっているなら、それはそれで良しとした。
そして、いよいよ都大会を目指す11月の一般大会をむかえることになった。
1回戦の家庭婦人チームを、21-10・21-9であっさり勝ち、続く2回戦を21-15・21-17でプーアルに勝ち、決して余裕の試合展開ではなかったものの、何とか決勝に駒を進めた。
決勝の相手は、2回戦で強豪ドリーム化繊を破った「スリーメディスン」。やはり企業チームだが、いままでは何とか1部残留、或いは2部降格といったように、いわゆるエレベーターチーム(A区の一般大会は、実力により1部と2部に分かれていて、その成績により下位チームは入れ替え戦を行わずして入れ替わる)だ。
しかし今回のチームは、前衛に身長の高い選手を3人、セッターもバレーボール経験者、レシバーもそれなりに上手い選手を揃え試合に臨み、強豪ドリーム化繊を破っての決勝進出だ。
ここまで都大会出場を目標に、普段の練習を重ねて来た永竹クラブだが、どう見ても相手チームの平均身長が高い上に、強そうに見えた。
#2ヤマちゃんと#6マメちゃんが陽介の所に近寄り、「何か強そうだね!」と言ったが、陽介は、「大丈夫。貴女達は都大会を目指して練習を重ねて来たチーム。相手はこの大会の決勝を目指して練習をして来ただろうチーム。絶対に勝てるよ!」と、笑顔で伝えた。
しかし陽介の本心は、「さっきの試合で、ポロポロとミスが多かったから、大丈夫かなぁ?」であった。
間もなくプロトコールの時間になる。
陽介は、2回戦と同じメンバーをスターターにした。
#1 ライト ヨシちゃん(主将)
#2 レフト ヤマちゃん
#3 キーちゃん バックセンター
#6 セッター マメちゃん
#8 中衛レフト ハリちゃん
#9 バックライト 井口ちゃん
#13 バックレフト シズさん
#16 ハーフセンター イソちゃん
#19 中衛ライト イケさん
そしてベンチには、#4川さん・#11和気ちゃん・#17よっちゃんである。
プロトコールにキャプテン#1ヨシちゃんが、むかった。
そして#1ヨシちゃんが、走って陽介の所に戻って来た。
永竹クラブのサーブからだ。
双方のメンバーがエンドラインに並び、主審の吹笛でネットを挟み握手を交わした。
スターターの9人が、あたらめてエンドラインに並び、合わせてベンチメンバーの確認を副審が行い、副審が両手を主審に向かって上げた。
主審は軽くうなずき、「ピーッッー!」と、吹笛した。
いよいよ都大会出場にむけ、永竹クラブの挑戦が始まった。




