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5月一般大会 優勝後の『これからの時間』 3

 学生さん(おそらくは主将であろう)が言った内容は、


 1、A区史上、家庭婦人構成員で一般大会を制覇したのは、凄いことだ!。素晴らしい。


 2、私達と練習試合をした時よりも、声が出ていてプレーも良かった。


 3、こんな短期間に、このようにチームが成長して試合に臨めるのは、一人一人のバレーボールに対する意識が高いからだ。


 4、しかしながら、もう少し集中しなければならい方もいたので、今後は是非頑張ってほしい。


 5、つでに言うと、レシーブでは、もっと軽やかに次のプレーを予測して1歩目を早く出せるようになると、もっとボールを触れられるようになるので頑張ってほしい。ボールに触れれば次のプレーもあるけど、コートにボールが落ちてしまえば、相手の得点になってしまうので是非意識して1歩目を早く出してほしい。


 6、家庭においても、きっと素晴らしい奥様だったり、お母さんだったりするのだと思う。


 7、私も歳を重ねたら、皆さんのようにママさんバレーをやりたいと思う。でも私はもう少し高いレベルでの(笑)チームで頑張って、皆さんのように優勝したい。


 8、今日は応援出来て、本当に良かった。


 と、大まかに言うとこの辺の内容だった。


 最初は、誉め言葉にまんざらでなかった永竹クラブの面々だったが、学生さんが話し終わると拍手をおくったものの、お礼を言う間もなく弱小ママさんバレーチームの反撃が始まった。


 そもそも学生さんはシラフ。永竹クラブは酒を急ピッチで吸い上げ、良い感じで酔っぱらっている。


 #11ジャイアントパンダ(和気ちゃん)が開口一番『物言い』を付けたのは、「5」の話し。


 「学生さんは若いから、次のプレーも予想出来るし動けると思うけど、私達みたいに歳をとると動けないし、次のプレーの予想なんて無理、無理。運よくボールに触れたとしてもそのボールがどのような方向に飛んで行くかなんて、ボールに聞いてもらわないとわからないしネ!。あんた達もこの歳になればわかるよ。良いね若者は…。まぁ、ここに座って飲みなよ!」


 すると#17よっちゃんが、「そうそう、予想なんて無理、無理!、予想出来たら私だってもっと良いプレーが出来るんだから!」とこれ見よがしに言った。


 さすがにこの#17よっちゃんの発言は、永竹クラブの面々にはカチンと来たらしく「よっちゃんは、言う権利無し!、だってよっちゃんのは、予想するしないじゃなくて、単なるオトボケ或いはボーっとしている、または何も考えてない。だからよっちゃんはこの件については言えないよ!」と、#3キーちゃんがウーロン杯を片手に、珍しく真顔で言った。


 皆も、「そうだ!、そうだ!」


 その話を聞いていた学生さん達も、「そうだ!、そうだ!」と笑いながら言ったので、#17よっちゃんは真っ赤な顔をして下を向いた。


 ジャイアントパンダが、「学生さん、ビールかい?、それとも紹興酒かい?」と言って飲まそうとしていたので、陽介が慌てて「ダメだよ!、今日は飲ませない約束なんだから!」と言って止めに入ったが、ジャイアントパンダは「いいじゃない、少しくらいなら!」と聞かない様子。


 陽介は、「絶対にダメ!、学生さんも約束だから絶対に飲んじゃダメだよ!」と念を押した。


 ジャイアン後パンダは、「仕方ないなぁ~、じゃぁとにかくここに座って、私達の話を聞きなよ!」と言って、学生さんの腕を鷲掴みにして強引に引っ張り込んだ。


 超法規的集団の前で、学生さんに拒否権はない。


 それからしばしの間、その学生さんは両手を膝の上に置いて永竹クラブの面々がコートで動けない言い訳を、聞かされた。


 学生さんが、その言い訳に対し何か言おうとすると、次から次えと人を変え言い訳を正当化しようとするので、可愛いそうに何もしゃべることが出来なかった。


 三輪さんと川さんがその様子を見て、「学生さんどうもありがとうございます。私達も頑張りますので皆さんも頑張って下さい。」とお礼を言って、続けて「遅くなってもいけませんので、そろそろ学生さんはお帰りになった方がいいですネ!」と連盟顧問に尋ねた。


 連盟顧問は猛獣御一行様に捕獲されている学生(おそらく主将)を除く中から一人を呼び寄せ(おそらく副主将)、何やら一言伝え、「そうですね。そろそろ引き上げましょう!」と言い、学生さん達に「目の前の料理を早く食べて、失礼しよう!、絶対に残さないように!」と言った。


 20分位経ったであろうか、学生さんの一人が「今日は、本当にご馳走様でした。私達も頑張りますので、永竹クラブの皆さんも都大会目指して頑張って下さい!」と言い、全員起立して「ご馳走様でした!」と挨拶をして帰りの支度に入った。


 永竹クラブの面々は、拍手でお礼の意を表し、学生さん達を送り出そうとしたが、当然ながら「それじゃぁ、本日はありがとうございました」と言ってジャイアントパンダに捕獲されている学生さんも席を立った。しかしジャイアントパンダが、「あんたは帰さないよ!、ここに座んな!」と学生さんの右腕を掴んだ。


 学生さんは、「遅くなってもいけませんし…」とは言ったものの、いつの間にか陽介の隣の席から移動した北極グマ(彩姉さん)が学生さんの左腕を掴んでいたので、この場で帰ることなど不可能であることを受け入れざるを得なかった。


 連盟顧問が、「4年生の4人は残るように!」と指示を出し、他の学生さんは帰途についた。


 どうやら、さっき呼びつけた学生さん(おそらく副主将)に、「4年生は残るように!」と指示をしていたようだ。


 他の学生さんが店を出るのを確認した連盟顧問は、「ここからは、お酒を飲んでもいいよ。家までは僕が責任を持って送り届けるから!」と、飲酒を許可した。


 勿論、4年生は成人しているとはいえまだ女学生。全員自宅に電話をさせて親の許可を得た上での話だ。ちなみにこの4年生は全員が同じ高校の出身で、自宅も近いらしい。


 猛獣御一行に捕獲されている学生さんの親には、他の4年生が代わりに電話をして許可をもらったとのことだ。


 こうなると、中華料理屋を主戦場としている永竹クラブの面々の独壇場、ましてや貸し切りだ。腕をまくり「さぁ、これから学生さんと飲みますか!?」と不気味な笑顔を浮かべながら、若干引いている学生さんに言い、捕獲されている学生さんを除く3人を猛獣の間に一人ずつ座らせた。


 最初に捕獲された学生さんが、レシーブで動けない言い訳を散々聞かされたのにもかかわらず、また同じ話を最初から話し始めた。勿論お酒を与えながら…。


 そして、何か話したくて話したくて仕方ないという様子のゾウアザラシ(ヨシちゃん)が、「6」と「7」について言いたい!と、吠え始めた。


 「え~っと、私も言いたいのよね!、あっ、その前に生ビールの人ぉ~?」と、いつものように元気よくオーダーをとったが、誰も反応しないので、やむを得ず「ママぁ~、生6つ頂戴ぃ~!」と頼んだ。


 生ビール6つとは、誰が飲むのかと思ったら、自動的に陽介の前に1つ、学生さんに4つ、ヨシちゃんに1つ置かれた。


 学生さんは、すでに全員ウーロン杯を飲んでいたが、陽介同様拒否権は存在しなかった。


 一体ヨシちゃんは何を話したいのだろう。


 学生さんは既に猛獣御一行の格好の餌食となって、自分から話すことも出来ず両手を膝の上に置いたままで座っている。


 さらにその様子を見ているジャイアントパンダが、ほぼ5分おきに「ほら、飲みなよ!、温くなっちゃうよ!」と無理矢理酒を勧めている。


 いずれ学生さんも歳を重ね、永竹クラブの面々のようになるのであろうが、今は「絶対にこんなふうに歳をとりたくない!」と、感じているに違いない。


 連盟顧問が学生さんに、「遠慮なく戴きなさい。」と言ったので、「それでは頂きます!」と酒を一口飲んだものの、陽介は気の毒で仕方なかった。


 そしてゾウアザラシが、生ビールを片手にたくましい左腕を上げて、「じゃぁ、私も話しますぅ~!」と大きな声で吠えた。


 学生さんが背筋を伸ばすほど、大きな声だった。

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