経験を積んだ永竹クラブ 5月一般大会 23
#2ヤマちゃんのサーブが続く。
ドリーム化繊はバックセンターがレシーブ。乱れてコート中程に上がったボールをハーフセンターが若いレフトアタッカーに二段トス。
若いレフトアタッカーは、ネットから離れた二段トスを軽くはたいて永竹クラブの高い2枚ブロックからリバウンドをとった。
そのボールを中衛レフトがホロー。あらためてハーフセンターが若いレフトアタッカーに二段トス。
しかしその二段トスもネットに近く、再び若いレフトアタッカーはリバウンドをとった。
今度もそのボールを中衛レフトがホロー。セッターはここでライトアタッカーにトスを上げた。
永竹クラブの2枚ブロックは、レフトに入っている#17よっちゃんと中衛レフトの#8ハリちゃん。
ドリーム化繊のライトアタッカーは、ストレートコースにアタックを打ってブロックアウトを狙った。
しかしそのアタックはアウト。ワンタッチは全く無かった。永竹クラブの得点。
想像の通り、レフトに入っている#17よっちゃんがブロックに飛ぶのを忘れていたのだ!
ケガの功名ではあったが、何度も繰り返される#17よっちゃんの『おとぼけプレー』に、コートの中にいるメンバーもベンチも、いささかお冠だ。
永竹クラブ20-15ドリーム化繊
陽介は、#17よっちゃんをバックレフトに下げ、バックセンター#3キーちゃんに前衛に上がるように指示をした。
そして前衛レフトに#8ハリちゃんが入り、#3キーちゃんが中衛レフトに入った。
#2ヤマちゃんのサーブが続く。
このサーブが、A区史上初の家庭婦人構成メンバーによるチームが、一般大会で優勝するという快挙になるかも知れないと思った#2ヤマちゃんは、サーブを打つ前にコートのメンバーに「思いっきり打つよ!」と言ってサーブを打った。
「ソーレ!」ひときわ大きいい観客席からのかけ声。
ドリーム化繊のコート奥深くに向かった#2ヤマちゃんの力強いサーブに、バックセンターが「アウト!」とジャッジ。
だが線審は旗を下に指した。
サービスエース。
コートの中も、ベンチも、観客席も、全員が飛び上がってガッツポーズ。
ここに、その快挙は成し遂げられた。
永竹クラブ21-15ドリーム化繊
永竹クラブの練習は、相変わらず低くて速くてコート奥までとどくサーブと、正確なパスなどの基礎練習の繰り返し。
毎回毎回つまらない練習をやり続けて来たことに加え、強豪チームと練習試合を重ねるなどして経験を積んできた成果を、A区史上の快挙というオマケ付きで、今結果として出した。
良い試合だったと、陽介はメンバーを誇りに思った。
ネットを挟み、お互いの健闘を称え合い挨拶を交わした永竹クラブは、すぐさま監督の陽介の所に集まり全員で握手をし、喜びを分かち合った。
そして某体育大の学生さん達が陣取っている観客席の前に走って行き、深々と頭を下げて「応援ありがとうございました!、皆さんのおかげで優勝出来ました!」とお礼を言った。
観客席の某体育大の学生さんの一人が、「優勝おめでとうございます!一般大会で優勝したんだから、また練習試合をやりましょう!」と言ってくれたが、さすがに前回の某体育大との練習試合でボッコボッコにされたことを思い出し、顔を引きつらせながら「よっ、よっ、よろしくお願いします」とキャプテン#1ヨシちゃんが小さい声で返答したのが精一杯だった。
続いて、大会本部にいた連盟顧問の所に走って行き、「色々とご指導いただきましてありがとうございました。おかげさまで優勝することが出来ました。」と陽介がお礼を言うのと同時に、永竹クラブのメンバー全員が頭をさげて「ありがとうございました」と言った。
連盟顧問は、「優勝おめでとう。でもA区では、春の一般大会は都大会にはつながっていないので、秋の一般大会で優勝して都大会に出場してね。まだまだ練習が必要だよ。目標を持って頑張ってね。」と話してくれた。
しばらくして表彰式が始まった。
優勝は、『永竹クラブ』と名前を呼ばれ、賞状と優勝トロフィーと優勝盾を、キャプテンをはじめとして3人が受け取ったが、その直後、連盟役員から「永竹クラブは、家庭婦人の資格でチームを構成していますが、A区では一般大会を家庭婦人チームが制したのは歴史上初めての快挙です。どうぞ大きな拍手をお贈り下さい」とアナウンスしてくれた。
割れんばかりの拍手を貰った永竹クラブは、四方に頭を下げお礼を言った。
表彰式が終わると、#2ヤマちゃんが連盟顧問の所に、#11和気ちゃんが某体育大の学生さんの所に向かい、応援のお礼に『これからの時間』で学生さん達にご飯をご馳走したいと申し出た。
連盟顧問も、学生さん達も喜んで承諾してくれて、#11和気ちゃんが試合中に貸し切りの連絡を取っていたいつもの中華料理屋に向かうことになった。
しかし、優勝の美酒に酔いしれるはずの『これからの時間』ではあったが、若い学生さん達に『ダメ出し』をされようとは、この時誰も知る由もなかった。