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経験を積んだ永竹クラブ 5月一般大会 9

 タイム明け、#9井口ちゃんのバックライトを狙った強烈なサーブが続く。


 プーアルは、バックライトがレシーブ。コート中程に上がったボールをハーフセンターがライトアタッカーに二段トス。ライトアタッカーは離れた二段トスを打ち切れずチャンスボールを返した。


 永竹クラブはバックセンター#3キーちゃんがオーバーでセッター#2ヤマちゃんにパス。#2ヤマちゃんはまたしてもレフト#17よっちゃんにトスを上げた。


 三度(みたび)上がってきたトスを、#17よっちゃんはこれまた三度(みたび)思いっきりアタックを打った。


 皆な#17よっちゃんに決めてほしいと思っていたに違いない。


 だがそのアタックは、惜しくもプーアルコートエンドラインを割ってしまった。


 #17よっちゃんは、下を向いたまま声も出ない。


 しかし主審のシグナルは永竹クラブ。


 またもやプーアルにネットタッチの反則があった。プーアルは#17よっちゃんのアタックの威力に思わずネットタッチを繰り返したようだ。


 永竹クラブは運も味方に付けているようだ。何よりも#17よっちゃんは運が良い。普通ならこの3回のプレーで交代させられても仕方ないからだ。


 セッター#2ヤマちゃんは#17よっちゃんに、「もう1本行くからネ!」と声をかけた。


永竹クラブ17-5プーアル


 #9井口ちゃんのバックライトを狙ったサーブが続く。


 プーアルは、「また私ぃ?」と言わんばかりの表情でバックライトがレシーブ。今度はナイスカットだった。セッターは高身長レフトアタッカーにバックトス。


 レフトアタッカーは、中衛ライト#11和気ちゃんとライト#1ヨシちゃんの2枚ブロックの内、低い方(#11和気ちゃんの方)をめがけアタック。


 永竹クラブは、#11和気ちゃんの上を越えて来た強烈なアタックをバックセンター#3キーちゃんがレシーブしきれず、失点した。


永竹クラブ17-6プーアル


 プーアルのサーブ。


 永竹クラブはバックライト#9井口ちゃんがレシーブ。セッター#2ヤマちゃんは中衛レフト#8ハリちゃんにセミのトスを上げた。しかしそのトスはネットに近く、何とかさばこうとして#8ハリちゃんも頑張ってアタックを打ったが、ネットタッチをしてしまった。


永竹クラブ17-7プーアル


 プーアルのサーブが続く。


 永竹クラブはバックセンター#3キーちゃんがレシーブ。セッター#2ヤマちゃんは久しぶりにライト#1ヨシちゃんにトス。


 #1ヨシちゃんは相手の2枚ブロックを避け、インコースにアタックを打ち込んだ。


 プーアルは、ライトがレシーブ。やや後方に上がったボールをバックライトが高身長レフトアタッカーに二段トス。


 高身長アタッカーは、またもや#11和気ちゃんのブロックの上を通過する強烈なアタックを打ち込んだ。


 これにはたまらない永竹クラブのレシーブ陣。バックセンター#3キーちゃんの前に強烈なアタックが突き刺さった。


 陽介は、2回目のタイムアウトを要求した。


永竹クラブ17-8プーアル


 ベンチに戻ったメンバーは、連続失点をしたわりには意外にも明るかった。


 そして#3キーちゃんが、「和気ちゃん、もっとジャンプしてよ!、ブロックの上から打たれるとレシーブがツライからさ!」と言い、#11和気ちゃんも「悪りぃ。悪りぃ。もっと一生懸命飛ぶよ!」と頭をかいていた。


 陽介は、「さぁ、自分達が取っているの得点をよく見て!、あと4点取るにはどうしたらいいか、もう一度考えながらプレーしよう!」と指示し、得点板を指さした。


 副審からタイムアウト終了の吹笛があり、円陣を組んでキャプテン#1ヨシちゃんが声がけしてコートに戻る時、#11和気ちゃんが陽介に寄って来て、「陽ちゃん、#19イケさんと交代させて!」と言い出したので、陽介が「何で?」と尋ねると、「私、あのジャンプが精一杯で、あれ以上は飛べないから…」と言うので陽介は笑いながら、「ジャイアントパンダも人の子だったたんだ!」と心で思い、「考えておきますネ!」と返事をして、取り敢えずコートに送り出した。


 タイム明け、プーアルのサーブが続く。


 永竹クラブは、バックレフトにポジションを変えた#6マメちゃんがレシーブ。セッター#2ヤマちゃんはレフト#17よっちゃんにトス。


 #17よっちゃんは、勢いよく助走して飛び上がり、強烈なアタックをプーアルの2枚ブロックめがけ打ち込み、ブロックアウトをとった。


 #17よっちゃんは大きな声を出してガッツポーズ。今日一番のアタックだった。


 皆な#17よっちゃんのところに駆け寄りハイタッチ。


 #17よっちゃんのアタックにブロックに飛んだプーアルの中衛ライトは、#17よっちゃんのアタックの威力に押され、ブロックの着地で尻もちをつきながら、「今、体が空中で後ろに動いたんだけど…。」と言って、体をおこしに手を差しのべに来たチームメイトに、こわばった面持ちで話していた。


 それほど凄い威力のアタックを#17よっちゃんは打った。


永竹クラブ18-9プーアル


 永竹クラブのサーバーは、#3キーちゃん。バックライト#9井口ちゃんと何やら打合せをして、ネットを越えるか越えないかの緩いサーブを打った。


 プーアルは今まで速くて、低くて、強いサーブがバックライトに向かっていたので、突然の緩くてネットギリギリに向かってきたサーブに戸惑った。


 プーアルは、ハーフセンターが慌ててそのサーブレシーブ。ほんの少し上がっただけのボールを中衛ライトが突っ込みホロー。3コンタクト目を高身長レフトアタッカーが何とか体勢を崩しながらチャンスボールで返した。


 永竹クラブは、バックライト#9井口ちゃんがオーバーでセッター#2ヤマちゃんにパス。#2ヤマちゃんはライト#1ヨシちゃんにトス。


 #1ヨシちゃんは、体勢を崩してチャンスボールを返した高身長レフトアタッカーが、ブロックに遅れているのを確認して、ストレートコースにアタックを打ち込んで決めた。


永竹クラブ19-8プーアル


 #3キーちゃんのサーブが続く。今度もバックライト#9井口ちゃんと何か話してからサーブを打った。


 プーアルは、バックライトがレシーブ。乱れたボールをバックセンターがアンダーで高身長レフトアタッカーに一か八かの二段トス。


 しかしその二段トスは大きくネットから離れ、打ち切れない高身長レフトアタッカーはやむを得ずオーバーでチャンスボールを返した。


 永竹クラブは、#1ヨシちゃんが「私が上げる!、私が上げる!」と大きな声でバックライト#9井口ちゃんを制し、「ヤマぁぁぁ~!」と言ってセッター#2ヤマちゃんに直接トスを上げた。


 #2ヤマちゃんは、その場でジャンプしてプーアルコートめがけ思いっきりアタックを打ち込んだ。


 と思ったら、#2ヤマちゃんはそのトスを打つと見せかけ、再びライト#1ヨシちゃんに切り返しのトスを上げ、#1ヨシちゃんはノーブロックのプーアルコートにシャープにアタックを決めて見せた。


 皆なコート中程に集まりハイタッチ。


永竹クラブ20-8プーアル


 さらには、全員が「あと1点!、あと1点」と大きな声で確認しあった。


 陽介は、この様子を「経験って、凄いことなんだなぁ~」とあらためて感心していた。


 さらにベンチにいる全員から、「#17よっちゃん、あと1点だからアタック思いっきり打ってぇ~!、レシーブとブロックを忘れちゃダメだよ!」と、確認の声も飛んだ。


 #3キーちゃんのサーブが続く。今度も#9井口ちゃんと何やら話して、いつもサーブを打っている位置から遥か後方に下がって、思いっきりサーブを打った。


 素晴らしく強いサーブがプーアルコートに向かった。


 プーアルは、バックセンターがそのサーブの勢いに押され、後方にボールをはじいた。


 最後の得点は、#3キーちゃんが勝負して打ったサーブのエース。


 永竹クラブは、大喜びでガッツポーズ。その中にはメンバーチェンジを申し出ていた#11和気ちゃんの笑顔もあった。


 この試合、陽介は何も言う事はなかった。短い期間で色々な経験をさせてもらったことを、しっかりと試合に出せたと、永竹クラブを誉めてあげたい気持ちだった。


 しかし陽介は我に返った。「いやいや、ここで誉めるとまた木に登って降りて来なくなる。あと1試合あるから、ここは誉めずに気を引き締めるように言おう!」と。


 しかし永竹クラブの面々は、試合が終わると必ず陽介監督の総括を聞く事になっていることをすっかり忘れ、ご機嫌で自分達が陣取っている観客席に向かい、ペットボトルの飲み物を股を広げてラッパ飲みしていた。まるで銭湯の湯上りのオヤジのように…。


 陽介は、「これで良かったのだろうか?」と不安になったが、何はともあれ、永竹クラブは非常に良い内容で決勝にコマを進めたのであった。

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