貴重な経験 9
ベンチに戻って来たメンバーは、息も絶え絶えだった。
A区の家庭婦人大会でも、長時間の試合は経験したが、弱小チームの集まる試合と訳が違う。
同じ1点を取るにしても取られるにしても、その内容が明らかに違う。
A区では、お互いのチームが打つ攻撃をレシーブでつなぐかどうかが、時間がかかる・かからないの分かれ目になるが、この試合は明らかに某体育大は自分達が有利になる状況を作り出すことに時間をかけている。
その意味では、相手が弱小であろうとなかろうと、自分達のバレーを貫くことを心がけてプレーをしている。
永竹クラブは、自分達のバレーはおろか相手チームに付き合うことさえ出来ない状況で、しっかりと時間をかけられて失点を重ねている。
しかもラリーが長いので、弱小チームの体力は全くもたない状況でもある。
陽介は、「僕は、例え練習試合でも負けるのは嫌いです。でも今日に限っては結果はどうでもいいことにしましょう!、それよりも自分達のプレーが1つでも2つでも出せるように頑張りましょう!」
「ヨシちゃん・イケさん、さっきのブロックを考えて飛んだのはとても良かったと思います。最高の判断だったと思いますよ!、この試合の残りのブロックは、貴女達の判断に任せますので頑張って下さい!」
「よっちゃんは、両手を上げて膝を曲げて飛ぶフリだけですよ!、僕の指示を守って下さいね!」と言って、水分を補給してもしたらない様子のメンバーを無理矢理コートに送り出した。
タイム明け、某体育大のサーブ。
永竹クラブは、バックライト#9井口ちゃんがレシーブ。セッター#2ヤマちゃんが少しコート中程まで回り込んでライト#1ヨシちゃんにトス。
#1ヨシちゃんは、ノーブロックの某体育大コートにアタックを打ち込んだ。
某体育大は、バックライトがレシーブ。セッターはレフトアタッカーにトス。レフトアタッカーは永竹クラブの2枚ブロックが飛ぶフリを見極めてアタックを打ち込んだ。
永竹クラブは、バックレフト#13シズさんがレシーブ。乱れたボールをバックセンター#3キーちゃんが渾身の力でライト#1ヨシちゃんに二段トス。
しかし主審の吹笛。#3キーちゃんのドリブルの反則。
某体育大の攻撃は、永竹クラブのブロックがあるか無いかを見極めながら打ってくるので、永竹クラブでもレシーブ出来る可能性が高くなっている。
永竹クラブ7-12某体育大
某体育大のサーブ。同じサーバーだが、この選手も強烈なジャンプサーブを打って来た。
永竹クラブは、バックライト#9井口ちゃんがレシーブするもボールは乱れた。それをハーフセンター#6マメちゃんがホロー。3コンタクト目をバックセンター#3キーちゃんがホローしてチャンスボールを返した。
某体育大は、「チャンス!、チャンス!」と大声で言って攻撃の準備。
中衛レフトが、オーバーで高めにセッターにボールをパス。セッターは低身長ではあるが必死にジャンプしてレフトアタッカーにトス。かと思ったらトスフェイントだった。
永竹クラブは、一歩も動けなかった。
きっと、さっきのタイムアウトで、トスフェイントしてみるように監督から指示が出ていたのであろう。
あっさりと、やられてしまった。
永竹クラブ7-13某体育大
某体育大のサーブが続く。今度も強烈なジャンプサーブだ。
永竹クラブは、ハーフセンター#6マメちゃんがオーバーでレシーブを試みるも、目測を誤りその上げた手を下げた。
バックセンター#3キーちゃんは、#6マメちゃんがレシーブするものだと思っていたのに急に来たボールに対応できず、ボールはコートに落ちた。
自分の前方にいるレシーバーが、レシーブのモーションをおこした後で急にやめられると、基本的にレシーブするのは難しい。
#6マメちゃんは、「ゴメンなさい。モーションおこしたら必ず触るからね!」と言って、#3キーちゃんに歩み寄り声をかけた。
永竹クラブ7-14某体育大
某体育大のジャンプサーブが続く。
永竹クラブは、バックレフト#13シズさんがレシーブするもはじかれた。
しかし、誰もそのボールを追おうとしない。いや追う体力が残っていないように見えた。
永竹クラブ7-15某体育大
陽介は、バックレフト#13シズさんに、#10芦さんとの交代を指示した。
#13シズさんがメンバーチェンジエリアに走って来たが、交代する#10芦さんがいない。
陽介がウォーミングアップゾーンの方を見ると、#10芦さんはまだそこにいた。
陽介は、「早くこっちに来てメンバーチェンジして下さい!」と言ったので、#10芦さんは渋々交代したが、「陽ちゃん、この試合私じゃ全く役にたたないよ!」言い捨ててコートに入った。
某体育大のジャンプサーブが続く。
永竹クラブは、バックライト#9井口ちゃんがレシーブしたが、サーブの勢いに押され後ろにはじいた。
サービスエース。
この後も、同じように某体育大のジャンプサーブに対応することが出来ず、永竹クラブはサービスエース献上し続け18点目をとられた。
陽介は、またしても某体育大に許可をもらって、4回目のタイムアウトをとった。
永竹クラブ7-18某体育大
陽介は、肩で息しているメンバーに、「疲れているのはよく分かります。だからこのセット結果は別として、普段練習をしているようにしつこくレシーブ出来るように頑張りましょう!、皆さんは決してプレーをサボっているわけではありません。本当に一生懸命頑張っていると思います。だから、何とかもう一息頑張りましょう!」と言ってねぎらったが、#10芦さんには「自分では役に立たないと言ってコートに入るのはやめましょう!、皆な必死にやっているのにチームメイトにそのような考えでコートに入られたら、どう思いますか?、よく考えて下さい。精一杯プレーして下さいネ!」と、他のメンバーには聞こえないように言って、コートに送り出した。
しかし、某体育大の強烈なジャンプサーブに全く対応出来ず、このまま負けてしまった。
永竹クラブ7-21某体育大




