貴重な経験 7
ラリー中に某体育大監督(連盟顧問)が陽介の所に寄って来て、「陽ちゃん、ノーブロックじゃなくて飛ぶフリっていうのは、良く考えたねぇ~!、相手の真似だけするんじゃ能はないけど飛ぶフリっていうのは最高だね。」
「監督って仕事は、監督をしているチームのレベルは違えども、そのチームがどうしたいのか?例えば試合に勝ちたいのか?、参加することに意義があるとしたいのか?、という中で、ルールの範囲でチームに結果をもたらす仕事だよ。そのために選手達と信頼関係は必要となるし練習もしなくてはならない。そしてその選手達を良く知らないとならない。強豪ママさんチームならともかくだけど、弱小となるとそれが一番難しいんだよ。勿論学生は、学業が最優先だけど、その中で選手の目的や目標にどう取り組むかが監督の役目だし、プロは結果だけが監督の評価だから全てのことを背負うことになる。」
「ここで勘違いをしてはいけないことは、それぞれのチーム特に弱小チームでは、出来ることと出来ないことがあって、それを見極めないといけないこと。この練習試合で学生や強豪チームがやっているプレーをそのままやろうとしても、所詮はは出来ない。だからそれらのプレーをその場で真似しようとしても無駄なんだよ。出来ることをやって試合を作ることを考えなないといけない。試合には負けるかも知れないけどね…。」
「でも、陽ちゃんがA区に来て、永竹クラブの監督をするようになってから、永竹クラブの選手は自分達がやりたいことを、あるいは目的(勝つためにプレーをする)を陽ちゃんに委ねようとしていることが、良く分かるよ。」
「だから、レベルが全く違うチームと練習試合をさせて、自分達が今まで経験したことのない状況の中で、どう今出来ることをやろうとするか、またそれを監督が後押して試合を作って行くかを感じてもらいたっかたんだよ。結果なんてどうでも良い。0点でもいいじゃない!」
「その意味では、この試合は面白いね!」
「陽ちゃんを含め、全員必死で何とかしようとプレーしてるよ!」
「もし体力的に難しい状況になったら、タイムアウトは何回でもとっていいからね!」
と話してくれた。
そして、その話が終わるか終わらないかのところで、#17よっちゃんがフルスイングフェイントで得点したのを見て、「いやぁ~、実に面白い!、陽ちゃん、あれも計算してたんだろ!」と笑顔で言い、某体育大ベンチに戻って行った。
陽介はありがたかった。
A区のバレーボール連盟で監督としてチームを指導している人は多数いるが、このように暖かい言葉で具体的に指導をしてもらた経験を持つ監督は、おそらくいないだろう。ましてやA区の連盟顧問は実際に某体育大の監督を現役でしいるし、実はバレーボール界全体でもかなり上級の指導者の資格を有し、日本のバレーボール界のトッププレーヤーを含め、A区の連盟顧問は知名度の高い人でもある。
そのような人から直接指導を受けた陽介は、心の底から感謝していた。
さて、あらためてコートを見ると、永竹クラブはさっき#16イソちゃんとメンバーチェンジして、フルスイングフェイントを決めてご機嫌の#17よっちゃんがサーブを打つところだった。
陽介は#17よっちゃんに、持ってる力を全部出し切ってサーブを打つように、声をかけた。
#17よっちゃんは、小さくうなづき思いっきりサーブを打った。
凄まじいパワーのサーブが、某体育大コートに向かう。
しかしそのボールは、中衛レフトの#8ハリちゃんの頭に直撃した。
#8ハリちゃんの後頭部にボールが当たり、その反動で#8ハリちゃんの顔面がネットに当たってしまったくらいだ。
#8ハリちゃんは一瞬膝を落としたが、後頭部を手でさすりながら「よっちゃん、せめてネットを越すように打って!」と苦笑いをしながら、#17よっちゃんに切願した。
#17よっちゃんの第二サーブ。
レフト#17よっちゃんがサーブに下がっているので、代わりにそのポジションに入っている#2ヤマちゃんと後頭部を直撃された#8ハリちゃんは、サーブを打とうとしている#17よっちゃんの方を見ながら、何気に及び腰でポジショニングしている。
気付いてみれば、全員が#17よっちゃんの方を見ていた。
それもそうれあろう、あれだけ強烈なボールを、自分達だって当ててほしくはないに決まっているのだから…。
しかし、#17よっちゃんは容赦なく思いっきり打った。
物凄いパワーのサーブが某体育大コートに向かったが、今度は残念ながらネット上方白帯にカスリ、サーブミス。残念ながら得点を献上した。
だが陽介は、「ナイスサーブだったよ!、ミスになったけど、よっちゃんはあのパワーが魅力なんだから!」と言ってねぎらった。
永竹クラブ5-8某体育大




