貴重な経験 2
さて、誘われた練習試合に向け練習を重ねる永竹クラブだが、結局3月家庭婦人大会優勝後の『これからの時間』で、大御所の上手い言い回しで当日全員参加することで決定し、A区の連盟に連絡した。
それはそうであろう。「欠席の人は手を上げて!」と言われれば絶対に上げにくいし、「都合の悪い人は翌日の昼までに連絡するように!」と言われても、手を上げなかっただけに断りずらい。
年の功と言うのは凄いことだと、陽介は感じた。
そして迎えた練習試合当日、永竹クラブはその練習拠点の最寄りの駅から約1時間かけ、会場であるA区の連盟顧問が監督をしている某体育大体育館に到着した。
しかし到着してみると、すでに某体育大とY区のチームはすでに練習試合を始めようとしている場面であった。
永竹クラブが遅刻をした訳ではない。むしろ定刻より早めに到着したのだ。
連盟顧問が笑顔で「陽ちゃん、いらっしい。今日は一日よろしくね!」と声をかけてくれた。
慌てて陽介は、「こちらこそお世話になります。ご迷惑をかけると思いますが、どうぞご指導下さい。宜しくお願い致します。」と挨拶させてもらい、「先生(連盟顧問)、ヒョットすると私達は時間を聞き間違えておりましたか?、遅くなって申し訳ありません。」と頭を下げた。
連盟顧問は、「そんなことはないよ。10:00で間違えないよ。ただ、うち(某体育大)とY区のチームは最初から8:30に集合だったから…。永竹クラブは家庭婦人のチームだから朝早いと家事とかが大変だと思って、少し遅めの集合にしたんだよ。」と笑顔で言ってくれたが、陽介はその気遣いに感謝するばかりだった。
陽介はその連盟顧問の気遣いをすぐに大御所に伝え、メンバーに早く準備をするように指示してほしいとお願いした。
さらに連盟顧問のところに走って戻り、「お手伝いさせて頂くことはございませんか?」と申し出た。
連盟顧問は、「今日はうち(某体育大学)の学生が、全部やってくれるから心配しなくて大丈夫だよ。それよりも陽ちゃんをはじめ今日の試合で得る物がると良いんだけど…。」と言ってくれた。
某体育大とY区の練習試合が始まる中、永竹クラブはユニフォームに着替えウォーミングアップに入った。
永竹クラブがウォーミングアップをしている間、陽介はあらためて練習試合中の両チームを見た。
そしてあらためて連盟顧問のところに行き、「先生(連盟顧問)、よくこんなに身長の高い選手を集めましたね。6人制でプレーしても全く引けを取らないくらい大きさじゃないですか?」と驚きながら話をし、さらにY区の前衛も全く見劣りしない高身長の選手が5人揃ってていたことに気づき、「先生(連盟顧問)、これだけ大きい選手だと一般的には動きが鈍いと思うのですが、2チーム共素早いですね。皆なバレーボール経験者で強豪校で良い所まで行ったことのある人ばかりなんですよね?きっと…」と、まだ始まったばかりの両チームの試合を見て感想を言った。
しばらく両チームの試合を見ていた陽介だが、両チームとも自チームがサーブを打つ時は前衛に高身長の選手(180cmは遥かに超えていそうな女子)が5人ネットに張り付き並び、セッターがハーフセンターに位置し、後衛は3人で守っている。
そして素晴らしくサーブが良く。相手のレシーブが乱れ2段トスが上がると間違えなく高い3枚ブロックが付いていた。
レシーブが乱れ、2段トスを打つことになったアタッカーは、ただ打つだけではなく、その高いブロックにわざと当てリバウンドをとり、今度はそのリバウンドをレシーブをしたボールをセッターがネットに当てて速攻を使ったり、両サイドのアタッカーに低くて速いトスを上げたりして攻撃をしていた。
ネットプレーを使い、4回のコンタクトを有効に機能させ、時折時間差攻撃も取り混ぜて相手の高いブロックをかわして決めたり、まさに9人制バレーボールの神髄を極めたプレーの連続だった。
そして、プレーのスピードが著しく速い。おそらく家庭婦人レベルでは全く目が追いつかないであろう。
いずれにせよ、ブロックが高いので簡単にはアタックは決まらず、レシーブ合戦となり中々決まることがない。1点を取るのに最低でも30秒はかかるように陽介は感じていた。(大げさではない。場合によると1点を取るのに1分以上かかるように感じた時もあった)
陽介は、三輪さんが言ったように、今日この練習試合に参加したことにより、相手チームに迷惑をかけることになると、「調子に乗って、是非参加しましょう!、となど言わなければ良かった。」と後悔の念にかられていた。
某体育大とY区のチームの第一練習試合が終わった。練習試合は一般的に3チーム参加していれば1セットずつ交代で行われる。
したがって永竹クラブの順番が回って来た。
対戦相手は、某体育大だ。
永竹クラブがコートに入ると「5分後に試合を開始しますので、その間にアタックやサーブの練習をお願いします。」と、某体育大の学生が丁寧な言葉遣いでキャプテンマークを付けている#1ヨシちゃんに伝えに来た。
#1ヨシちゃんは、「えぇ~、5分しかないのぉ~!?」と言って、その他にも何か言い出しそうだったので、#14三輪さんと#4川さんが慌てて「ご丁寧にありがとうございます。弱すぎて迷惑をかけると思いますが宜しくお願い致します。」と学生さんにお礼を言った。
そしてすかさず#1ヨシちゃんに、「ヨシちゃん、私達は練習試合をさせてもらいに来たの。あななたのペースでことは運ばないのよ!、きっと学生さんだから冗談のつもりで言ったのでしょうけれど、口を慎みなさい!」と叱った。
ヨシちゃんは、「ハイ。」とは言ったものの、お得意の平家蟹が潰れたような顔をして寡黙になった。
5分が過ぎ、永竹クラブと某体育大がコートのエンドラインに並んだ。
陽介は、先程Y区と対戦した時と某体育大の先発メンバーが全く違うことに、すぐに気が付いた。
某体育大の先発メンバーは、高身長の選手を揃えたY区との試合と打って変わって、全員低身長の選手を先発させてきた。
笛がなり、ネットを挟み握手を交わしそれぞれのポジションについたが、場合によると家庭婦人資格の構成員(当然身長の低い者もいる)でチームを作っている永竹クラブの平均身長より低いかも知れない上に、某体育大のセッターは永竹クラブのセッター#6マメちゃんと大して変わらない身長だった。
レフトエースの#2ヤマちゃんや、ライトエースの#1ヨシちゃんの前には、どう考えてもブロックを飛んだ時にネットから手が出るような身長の選手ですらなかった。
陽介は、某体育大の監督をしているA区の連盟顧問が、永竹クラブのレベルを考え、数十人いる部員の中から控え選手を先発に使ってくれたのだろうと思ったが、「助走してアタックを打っても、やっとネットから手が出るくらいの身長の選手を使ってどういうバレーボールをするつもりなのだろう?」と困惑したが、いずれにせよ鍛えらている選手であるに違いないと思った。
サーブ権は、ネットを挟みキャプテン同士がジャンケンで決めた。
サーブ権は、某体育大。
それにしてもネットを挟んでジャンケンをした相手のゲームキャプテンは、永竹クラブのキャプテン#1ヨシちゃん(170cm)の肩の高さしかない身長だった。




