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永竹クラブの『公式な飲み会』 2

 彩姉さんが中華料理屋に到着すると、早速ヨシちゃんが「『新年会』のお店が決まらなくて…。今日中に決定しておきたいんですけど、何処か良いお店知ってますぅ?」と、頼み込むように彩姉さんに聞いた。


 彩姉さんは、「予算はどのくらいなの?」とヨシちゃんに尋ねると、「3000円、税込・飲み物込でやりたいんです…」と答えた。


 陽介は、さっきまで予算のことは全く聞いていなかったのでビックリしたが、「そもそも居酒屋のお得な宴会コースでもない限り3000円税込・飲み物込で出来るお店が今どきあるのか?」と思った。


 3000円税込と言う事は、2858円税別(消費税5%)でしかも飲み物まで含まれるとなると「安い・うまい・駅近」の内、「うまい」は諦めないと難しい。


 陽介は、「さすがの彩姉さんも、この要望に応えることは出来ないだろう。安いチェーン店の居酒屋で決まりだな!」と思った。


 しかし彩姉さんは、「分かった、チョッと待っててネ!」と言って、携帯電話を片手に中華料理屋の外に出た。


 数分後、彩姉さんが話し中の携帯電話を手にしたまま戻って来て、「場所は銀座。天ぷらでもいい?」とヨシちゃんに聞いた。


 ヨシちゃんは、和気ちゃんと陽介の顔を確認して、「いいです!」と返答した。


 彩姉さんは、ヨシちゃんの返答を聞くと、すぐにまた中華料理屋の外に出て話し中の携帯電話で話しを続けたようだが、今度は10分位経っても戻って来ない。


 ヨシちゃんも、和気ちゃんも、陽介も、さすがに銀座で天ぷら、しかも3000円税込・飲み物込じゃ、お店と折り合いがつかないんで、長電話になっているんだろうと思っているところに、彩姉さんが12月の寒風で体がすっかり冷えて、ブルブル震えながら戻って来た。


 そして、「ママぁ、紹興酒熱燗で頂戴!」と言い、続けて「さすがに3000円税込・飲み物込だと厳しいって言うから、2500円税込・瓶ビール大瓶10本付、その他の飲み物は持ち込み可、グラスと氷と水はサービスする。っていうことで話をつけたからね。予約日時は昨年と同じ日の18:30分からにしておいたけど、変更するなら今の内だよ!」と言い、それなりに熱かろうグラスに入った紹興酒を一気に飲み干した。


 陽介は、「嘘だぁ~!?、銀座で2500円税込の天ぷら屋さんなんて、あるわけないじゃない!、ましてや瓶ビール大瓶10本付でお酒の持ち込みもありなんて、絶対あり得ない!、彩姉さん無理しなくていいですよ!、きっと彩姉さんが日頃は永竹クラブにお世話になっているからと言って、足らない分は身銭を切ってお店に払うんでしょ?」と、心配になって聞いてみた。


 すると彩姉さんは、「そうなのよ!、足りない分は私が…。そんな訳ないじゃない!、ちゃんとその条件でやってくれるって!」と笑顔で答えた。


 陽介は、「本当に?、ヒョットすると出てくる天ぷらは、エビ抜き・イカ抜きの野菜だけだったりして…。場合によると、揚げ玉だけとかじゃない?」と彩姉さんをおちょくったが、彩姉さんは笑いながら「お店に行けば分かる!」と言って、「ママぁ~、生ビール頂戴!」と吠えた。


 ヨシちゃんは、大喜び。「天ぷらは、今までに無かった企画ですネ!、良かった彩ちゃんに相談して。」と、こちらも「ママぁ~、生ビール頂戴!」と吠えた。


 生ビールを飲み干した彩姉さんが、「実は高校の同級生がやってるお店で、私の会社でも時々利用してるのよ。だから多少のわがまま大丈夫。天ぷらの他にお刺身とかも出してくれるって言うから満足出来ると思うよ。私に恥をかかせるようなことはしないと思うから。」と、ヨシちゃんが大喜びなのを見て、満足そうに行った。


 陽介も、「さすがに彩姉さんだ!、伊達に歳を重ねてない!」と思ったが、「それにしても銀座の天ぷら屋さんも、いい迷惑だろう!、同級生とはいえ熟女の遠慮ない申し出は恐ろしい!」と、背筋が寒くなった。


 ちなみにこの天ぷら屋さん、店の名前は言えないが通常であれば飲み食いして、お一人様15000円位は必要な、超の付く老舗だっただけに、彩姉さんの人間関係には頭が下がる。


 ヨシちゃんは、早速予算の振り分けを始めた。


 永竹クラブの『新年会』は、『新年会』の会費として一人3000円(今回は)を徴収し、『新年会』に参加出来ない場合でも返金はしないルールとなっている。当然ご主人や子供の同伴も許されているが、大人は同額、子供は半額の会費を支払うことになる。


 したがって、余程急な用事でも出来ない限り、全員参加(含む前任監督)となる。(欠席の場合は、会費の半額程度のお土産を渡していたようである)


 『新年会』の会費は、陽介と前任監督を入れた永竹クラブメンバー18人分で、54000円となる計算だ。その他に参加者がいればその分が追加される。


 お店に2500×18人=45000円、持ち込み飲み物代に500円×18=9000円が前提だ。


 欠席者がいれば、お店に払う金額が減り、持ち込み飲み物代にまわす予算が多くなる。


 ヨシちゃんは、銀座近くのお酒のディスカウントストアーをスマホで探し、9000円あればそこそこのの量が飲めることを確認し、予算内で出来ることにホットした様子だった。


 お酒の種類は、安い焼酎2本・安い日本酒1本・カシス1本をボトルで。割物として炭酸とウーロン茶を数本。お酒を飲めない人用に、オレンジジュースを用意するようだ。


 2時間で、お酒だけを飲む人が18人中10人(後はお酒を嗜む程度か、全く飲めないかである)。絶対に量が多いと陽介は感じたが、毎年余れば二次会の中華料理屋にお土産(猛獣コンビの私費で買った物)と一緒に持ち込みむので、問題はないとのことだった。


 中華料理屋のママさんも、実に心の広い御人だ。


 しかし二次会も含めて、わがままな『新年会』であることには間違えない。


 この集団は、本当に恐ろしい。


 翌練習日の帰りに、ヨシちゃんが『新年会』の段取りを皆なに伝えると、お店の名前を聞いて一同ビックリ。永竹クラブの多くのメンバーが在住しているこの地域では、知らない人はいない超老舗だったからだ。


 しかも会費が安い。驚くのも当然である。皆な拍手喝采だった。


 『新年会』の件を伝えて、練習を終わる挨拶をする時、何人かから「今年の12月は地方遠征もあったので、今年の最終練習日の週は休みたい。」と申し出があった。


 その場でキャプテンのヨシちゃんと大御所が相談をして、その申し出を受けると同時に今年の練習を今日で終了とすることにした。


 陽介も快く了解をして今年最後の練習を終えたが、『これからの時間』は当然ながら行われた。


 「ママぁ~、また来たよぉ~!」と言って、いつものようにゾウアザラシが店の奥へ進む。


 続いて猛獣御一行様の御入場と、いつもと変わらずに『これからの時間』が始まり、途中からこれまたいつものように彩姉さんが参加した。


 散々飲み食いして電車組みは23時頃、徒歩組は24時頃、各々「お疲れ様ぁ~」と言って店を出ようとしたが、たった一ついつもと違うことがあった。


 「お疲れ様ぁ~、良いお年を!」と口々に言って帰って行ったのだった。


 陽介は、「そうか、今年の『これからの時間』も今日が最後か。何か毎日この中華料理屋にいるような気がするけど、彩姉さん達に会うのも今年はこれが最後なんですネ!」と、思っていることを口に出してしまった。


 彩姉さんは、「そう、練習の後で飲むのは、今年は今日で最後ネ!、寂しいワ。でも大晦日までまだ2週間近くあるからあた会えるわよ!」と陽介に言った。


 「いやいや、皆さんと飲むのは今日が最後だし!」と慌てて陽介は言って、「では僕もそろそろ帰ります。どうぞ良いお年をお迎え下さい。」と店を出て、陽介は今年の永竹クラブの活動を終えた。


 しかし案の定お誘いの電話が頻繁にあり、結局練習日と同じ日に中華料理屋で飲むことを余儀なくされた陽介だった。


 (陽介も、飲むのは嫌いではなかったので付き合ったが、家では陽介の奥さんがブチ切れていた。したがって陽介も家に居づらく、まんまと猛獣コンビの術中にはまってしまったのである) 

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