12月 遠征 親睦大会 35 帰りの車中2
休憩場所のサービスエリアから再び帰路に出発したが、反省会を試みて失敗に終わったB区のチームも睡魔には勝てず静かな状況になったせいもあり、、程なく陽介をはじめ栄竹クラブのメンバーも眠りについた。
小一時間バスは走ったのであろうか、主催企業の係りの人が「これが最後の休憩場所となりますので、皆さん用を足すなど宜しくお願いします。ここを出発したら次は解散場所まで基本的に休憩はありません。解散場所に到着する時刻は、道中順調だったおかげで20時45分前後だと思われます。」とアナウンスしてくれた。
栄竹クラブとB区のメンバー、それに同乗している役員をはじめ、全員が最後の休憩で用を足すためバスから降りた。
ここが最後の休憩場所だということで、中にはお土産をしこたま買う者もいた。
その一人ヤマちゃんは、そのサービスエリアの所在県の名産菓子を、20個も買い込みバスに戻って来た。
陽介が、「何でそんなにお土産買ったの?、近所にでも配るの?」と不思議そうに聞くと、ヤマちゃんは「これはご近所用、これは会社用、これは何々区の連盟の人用…etc、更にはこれは自分用」だと教えてくれた。
陽介が、「旦那さんの分は無いの?」と聞くと、あっさり「無い!」と言い放った。
自分と他人様のお土産は買うが、旦那の分までは買わない。
恐ろしや家庭婦人。
旦那が知ったら、何と思うのだろう?
陽介も、「よく考えてみると家のカミさんも、何処か旅行に行ってもお土産は無かったな。」と思い返した。
全員がバスに戻ると、点呼が行わられバスが解散場所に向かい出発した。
1時間程度寝たこともあり、同乗していた者は各々スマホを見たり、音楽を聴いたり、本を読んだりして、再び寝る者はほとんどいなかった。
出発して20~30分経った頃であろうか、栄竹クラブの携帯メールが一斉に鳴った。
緊急エリアメールのようなけたたましい音ではなかったが、マナーモードにしていて「ブ―ブーブー」と振動している音や、マナーモードにし忘れ各々の着信音を鳴らす者や、タイミングは少しズレていたものの、ほぼ同時に音が鳴った。
B区のメンバーと役員は、何事かとビックリしていたが、当然ながら陽介の携帯にもメールが届いていた。
そのメールは、彩姉さんから栄竹クラブ全員への一斉メールだった。
A区の連盟役員には配信されていないメール。
内容は、「皆さん本日はお疲れさまでした。皆な全国大会3位のチームと良い試合が出来たなんて、本当に凄い!、と言うことでバスが到着したら、いつもの中華料理屋でお疲れ様会を行います!、どうしても参加したくない人は、ご連絡下さい!」という内容だった。
絶対に誰も断れないメールだった。
どうやら、最初の休憩場所で、企業の係りの人とバスの運転手さんに、彩姉さんが真顔で話してしたのは、解散場所への到着予想時間だったようだ。
その予想時刻を聞いて、いつもの中華料理屋のママさんに連絡をとっていたのだった。
更に驚くことは、その中華料理屋を予約した時刻から店を貸し切りにしていることだった。
きっと、和気ちゃんとも相談した故のことであろうが、どんな時でも必ず執り行われる「これからの時間」。
栄竹クラブの主戦場は、やはり中華料理屋なのだ。
恐ろしや猛獣コンビ!。
恐ろしや栄竹クラブ!。
陽介は、「彩姉さんと和気ちゃんは、二日酔いで大したプレーもしていないし、彩姉さんに至ってはプレーすらせず、ただただ酒が抜けるのを待っていたかも知れないが、こっちは明日の月曜日から仕事だっちゅの!」と言いたかったが、彩姉さんのメールの内容に、誰も欠席の連絡を届ける者はいなかった。
いや、出来なかった。
そして、バスは解散場所に到着し、栄竹クラブは各々の重い一泊二日の荷物と、ボールやボールケースを引きずりながら、中華料理屋に重い足取りで歩いて行った。