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12月 遠征 親睦大会 34

 A区・B区・C区の代表が1チームも決勝リーグに進めなかったのは、明らかに実力の差があってのことだと、決勝リーグを観戦していたそれぞれの区のチームは思ったに違いない。


 試合中の選手達が出す声は決して空元気のような声ではなく、チームを鼓舞する声だったり、プレーに関連する一連の声だったり…。


 しかもそれが、試合中途切れることなく適宜出てくる。


 誰かに教わった訳でもなく、今までの経験から身についているのであろう、自然と出ている感じにさえ思えた。


 サーブレシーブをする時も、弱小チームでは応々にして自分の所にサーブが来ない事を祈っているオーラが出まくっていることが多いが、強豪チームは自分の所にサーブが来るように期待をしているように見える。


 当然そのような気合いだから、サーブレシーブも積極的でノータッチのサービスエースなどは出にくいし、また相手の攻撃に対するレシーブも、チームメイト同士が集中していて次のプレーを予想したりしながら自分の所にきたアタックをレシーブし、乱れてもそれを皆でホローするので、中々コートにボールが落ちない。


 したがって、実力が拮抗しているチーム同士が試合をすると、必然的に試合は長くなる。


 まさに開催某県2チームの第一試合は、そういう展開であった。


 両チーム共、力の限り精一杯プレーをし、第一セットを21-19で『MARTH』がとり、第二セットはデュースの末25-23で『黄田クラブ』が取り返し、むかえた第三セットもデュースとなり激闘の結果、黄田クラブが24-22で勝った。


 試合時間は、1時間15分。決勝リーグが始まったのが13時30分だったので、この試合が終わった段階で14時45分を過ぎていた。


 この親睦大会のローカルルールは、帰りのバスの都合上、17時までに試合が終わらない場合は、17時の時点で勝敗を決めるというものだったので、あと2時間15分で2試合を消化しなければならないことが、不安になる状況だった。


 大会本部は、「時間の制約もあるので、次の試合は10分後にプロトコールを行い、公式練習はしないことにします。そのつもりで選手は体を作って下さい!」とアナウンスした。


 決勝リーグ2試合目。


 八葉クラブと、激闘を制した黄田クラブの対戦だ。


 この決勝リーグは、大会開催某県の家庭婦人連盟が主審をはじめ各審判、記録などを担当していた。


 当然、この試合を観戦するチームは、白熱した試合を期待して観客席から身を乗り出して待っていた。


 永竹クラブが良い試合をした八葉クラブの決勝リーグ戦。当然永竹クラブも思うところがあったに違いない。彩姉さんと和気ちゃんの猛獣コンビも、一緒に酒を交わしたチームの戦いとあって八葉クラブに対する思いは格別だったと思う。


 しかしこの試合、皆の期待に反して、21-8、21-6で、これまた八葉クラブがあっさり勝ってしまった。


 八葉クラブは、公式練習が無くなったことで、最初の内は体が動かなかったのか3点を連取されたが、以降のプレーは、ほぼ相手を寄せ付けないほどの強さを見せた。


 やはり八葉クラブは、ただ者ではない。


 全国大会3位は伊達ではないと、陽介は思った。


 してみると、全国大会で優勝するチームって、いったいどんなチームなのだろうか?


 一度、全国家庭婦人大会を見てみたいとも思った。


 さて、八葉クラブは黄田クラブの試合に要した時間は、45分。この時点で時刻は15時45分となっていた。


 大会本部は、最終試合を5分後に行う旨のアナウンスをしたが、八葉クラブは連続の試合なので体も温まったままであろうが、心配なのはMARTHである。5分で体をどう作るのかと陽介は興味津々だったが、結果から言えばそこはさすがに強豪チーム。八葉クラブと黄田クラブの試合の状況と時間を睨み、チャンと準備をしていた。


 大会本部から5分で体を作るようにアナウンスがあった直後、直ぐにコートに入り1分程度でパスの練習を終え、直ちに9人がコートに入り1分30秒程度シート練習。それが終わると連続の試合で休憩中の八葉クラブがコートを使わない事を確認して、1分程度アタック練習。そして最後の1分程度をサーブ練習に当て、準備を終えた。


 さすが試合慣れをしているチームの一つだと、陽介は感心した。


 15時50分過ぎ、プロトコールがあり、主審が最後の試合のサーブ許可の吹笛をしたのは、15時55分頃であった。


 大会本部は、各チームのキャプテンを集め、試合中でも構わないのでシャワーを使用して帰りの準備をするように言い、また、開催某県のチームは、他のチームがバスに乗った後にシャワーを使用するように。とのことだった。ただし試合をしている八葉クラブは最優先で試合後シャワーを使用させる。ともした。


 そして、バスの出発は17時30分を予定しているので、その旨チームに伝えるようにしてほしいと指示をした。


 永竹クラブは、昼食の休憩時間を利用してシャワーを使用していたので問題はなかったが、B区・C区のチームは大慌てでシャワー室に走って行った。


 その意味では永竹クラブの面々の気の利かせ方は、良く出来ていたと陽介は思った。


 最終試合が始まった。


 永竹クラブは、シャワーを済ませているので、観客席からやはり八葉クラブの応援をしていた。


 八葉クラブが得点をすれば拍手をし、彩姉さんと和気ちゃんの猛獣コンビは大きな声で「ナイスファイト!、ナイスプレー!」と声援をおくっていた。


 この試合、黄田クラブとの激闘の末敗れたMARTHは必死に戦っているのが良く分かる試合となった。


 もしMARTHが勝てば、1勝1敗で3チームが並び、取得セット率や得失点差での勝負となるからだ。


 出だしの5点目までは一進一退の攻防。


 しかし地力に勝る八葉クラブが21-7で第一セットをとった。


 続く第二セット。八葉クラブにも少し疲れが見えたが、セット終盤に監督兼選手がピンチサーバーとしてコートに入り、素晴らしい活躍を見せ、結局このセットも八葉クラブの強さだけが目立ち、八葉クラブが21-9でセットを連取し、優勝に輝いた。


 試合所要時間は、50分位だった。


 八葉クラブの試合結果が、2試合共点数の割には時間がかかって心配はしたものの(両チーム共、しつこいレシーブで中々コートにボールが落ちなかったのが、原因と思われる)、無事17時までに全試合を終えた大会本部は、優勝して大喜びしている八葉クラブに、直ぐにシャワーを使用するように指示をし、他のチームがネットやポール、ベンチのイスなどの撤収をすることをアナウンスをし、更には優勝した八葉クラブがシャワーから戻り次第、表彰式を行うとした。


 17時15分頃、シャワーを終えた八葉クラブを含め全チームが整列をして、表彰式が行われた。


 大会を主催した企業の役員が今日の親睦大会の総括を行い、今回のように素晴らしいプレーで、次回また元気よく戦ってほしいと結んだ。


 表彰式が終わり、解散となった後、各々のチームが自分達が乗るバスに向かう中、永竹クラブの彩姉さんと和気ちゃんの猛獣コンビは、八葉クラブの監督兼選手と握手を交わし熱い抱擁を繰り返し、再開を約束していた。


 いや、絶対に再飲み会を約束していたに違いない。


 陽介は、微笑ましい選手同士のやり取りを心地良く感じながら、バスに乗り込み、今日の試合を振り返ってみると、優勝した八葉クラブに17点を2セット連続でとったのは、イヤイヤ2桁得点をしたのは、永竹クラブだけだった事実を、どう解釈すればいいのか考える事にした。

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