12月 遠征 親睦大会 30
2セット目が始まった。
国吉クラブがジャンプサーブを打ちきって1セット目をとったので、2セット目のサーブ権は永竹クラブ。
永竹クラブのサーバーは、メンバーチェンジした2セット目のスターター#2ヤマちゃん。
レフトアタッカーの#2ヤマちゃんがサーブに下がるので、バックセンターの#3キーちゃんが中衛レフトに入り、中衛レフトの#8ハリちゃんがレフトアタッカーのポジションにつく。
#2ヤマちゃんのサーブ。
いつものように身長170cmから繰り出される、力強いフローターサーブを打った。
国吉クラブはバックセンターがレシーブ。セッターはレフトアタッカーにオープントス(高さのあるトス)を上げた。
レフトアタッカーは、永竹クラブの中衛ライト#19イケさんとライト#1ヨシちゃんの高い2枚ブロックめがけ思いっきりアタックを打ち込み、ブロックアウトをとった。
永竹クラブ0-1国吉クラブ
この時点で、陽介と永竹クラブのメンバーは、国吉クラブのセッターをはじめ数人の選手がポジションを変えていることに気が付いた。
メンバーチェンジをしている訳ではなく、コートの中でポジションを変えていた。
まず、国吉クラブの中では身長が高いセッターが、レフトアタッカーに。レフトアタッカーだった選手が中衛ライトに。小柄なハーフセンターがバックセンターに。バックセンターがハーフセンターに。さらには、左利きの中衛ライトの選手がセッターに代わっていた。
まるで永竹クラブがブロックの高さを出そうと、中衛ライトの#11和気ちゃんと#19イケさんをメンバーチェンジするのを、予想していたかのようなポジションチェンジだった。
陽介は、永竹クラブのメンバーにやる気を出させるのに気を遣いすぎて、国吉クラブがポジションチェンジをしているのに、この時点まで気付いていなかったのだ。
当然陽介は、相手のレフトアタッカーの身長があまり高くないので、#19イケさんと#1ヨシちゃんの高さに期待してのメンバーチェンジをしたつもりだったが、大柄とは言えないまでもそれなりに身長がある選手がレフトアタッカーにポジションを変えてくるとは想像もしていなかった。
しかし、全国大会3位の八葉クラブと良い試合をしたことを知った永竹クラブのメンバーは、そんなことはお構いなし。
あっさりとブロックアウトをとられ、1点を先取されたのに、「大丈夫!、大丈夫!、切り替えて行こう!」と前向きな姿勢だ。
陽介は、ある意味前向きな姿勢は評価出来ると思ったが、一方でセッターが左利きだとすると、1セット目に見なかった新たな攻撃があるかも知れないと思った。
そしておそらくは、永竹クラブの実力では対処出来ないと…。
ハーフセンターが代わったのも、身長が高い選手をレフトアタッカーにして、レシーブが乱れたり、ここぞという場面で高いトスを上げて勝負させたい、あるいは小柄なハーフセンターのポジションをバックセンターにすることにより、永竹クラブの強いサーブをハーフセンターが高い位置でオーバーで触わり、そのボールを二段トスで切り抜けようとする、チームの戦略だと推測した。
そうなると、かなり厄介だと陽介は思った。
ただでさえ永竹クラブは弱小チーム。1セット目のような攻撃に加え、高いトスを上げて勝負をかけてくるという、腰を据えた攻撃をされると、全く試合にならなくなってしまうように思えたからだ。
しかしながら、陽介の心配をよそに永竹クラブのメンバーは、点をとられても、かなり前向きの姿勢だ。
全国大会3位の八葉クラブと良い試合をしたことを良いことに、点の取られ方の質が変わっているのことにも気付かず、栄竹クラブの面々は、未だに気分良く物凄く高い木の上に登ったままだ。
中にはその木の上で、あぐらをかいて一服している様子が目に浮かぶような者もいた。
弱小ママさんバレーチームの多くは、おだてたり誉めたりすると、すぐに木に登る。
そして必ずしばらく降りて来ない。
逆に怒ったり、不甲斐ないプレーを指摘すれば、寡黙になり言うことを聞かなくなったり、その場から逃避したりする。
実に難しい。
しかし今は試合中。陽介は、0-21のスコアーで負ける可能性もあるかも知れないと覚悟したが、取り敢えずは劣勢でタイムアウトをとることになるであろうその時まで、静観することにした。