12月 遠征 親睦大会 22
さて、栄竹クラブの二試合目は、開催某県の代表『国吉クラブ』。
試合前の練習を見る限りでは、目立って大きい選手がいるわけでもなく、また際立ったレシーブ技術を持っている選手がいるわけではないように、陽介には見えた。
ただ、国吉クラブも監督が選手を兼ねている。
それと特記すべきは、開催某県の代表とあって、応援団の数が凄かった。
観客席には、横断幕が張られ、そこには「勇往邁進 国吉クラブ」・「獅子奮迅 国吉クラブ」等と書かれていた。
陽介は、嫌な予感がしていた。さっきの八葉クラブは家庭婦人の全国大会3位とA区の連盟役員が言っていたが、地元ではないものの横断幕は少なくとも無かった。
しかし今回は、地元とは言え横断幕がいくつかあり、しかもそこに書かれている四文字熟語はかなり勇ましい。それに応援団もかなりの人数だ。
陽介は、地元国吉クラブの応援団の片隅で小さくなっている、A区の連盟役員に携帯でメールを打った。「国吉クラブって、ヒョットしたら全国大会で優勝したチームですか?、栄竹クラブの選手に分からないように、僕にメールで情報を下さい!」と。
するとA区の連盟役員は早速「国吉クラブ」の応援団の所に行って、情報を聞き出してくれた。
しかし、陽介に伝える手段を誤った。
A区の連盟役員は、陽介を観客席から大きな声で呼びつけ、「陽ちゃん、大丈夫!、国吉クラブさんは全国大会でベスト8だって!、良かったね!」と、これまた大きな声で陽介に伝えた。
当然ながら栄竹クラブのメンバーにも鮮明に聞こえた。
陽介は、「何が良かったね!だ、そもそも八葉クラブが全国大会3位ってことだって栄竹クラブは知らないのに、国吉クラブが全国大会ベスト8だって分かっちゃったじゃないか!?」、「何が大丈夫!だ。だからメールで伝えるようにお願いしたのにぃ~!」
陽介は、国吉クラブ戦が始まる前に、この試合のスターターを指示していた。
そのスターターは、親睦大会であること。また、ユニフォームを着た者は全員1回はコートに出すという、陽介のかねてからの方針から、#2ヤマちゃんと#19イケさんをベンチに下げ、代わりにレフトに#17よっちゃん、中衛ライトに#11和気ちゃんの起用だった。
もちろん#11和気ちゃんは、「私は今日は出場しないって言ったでしょ!」と陽介にくってかかったが、陽介が「#15彩姉さんは引退をしているから、今日は仕方がなく僕もコートに入れるのはやまました。でも#11和気ちゃんは現役の選手だし、ひと試合終わって酒も抜けただろうから、せめて栄竹クラブのバレーボール選手として一度はコートに入って活躍してもらわないと、本当に飲みに来ただけになっちゃいますよ!」と言って、嫌がる#11和気ちゃんを無理矢理スターターとして起用していた。
さらにはバックレフトに#4川さんを起用し、皆に親睦大会を楽しんでもらおうと陽介は考えていた。
そこに、「全国大会ベスト8だって!」という情報がながれたので、栄竹クラブメンバーは陽介の所に駆け寄り、「陽ちゃん、国吉クラブは全国大会ベスト8だってよ!、どうするの?」と言い出すし、#11和気ちゃんに至っては、「私はベンチでいいよ!、応援に徹するから!」と言い出す始末となった。
陽介は、「どうするって、自分たちのバレーボールをする以外に方法はないでしょ?、第一それ以上のことを貴女達は出来ないでしょうに!、したがって、スターターは指示した通りで行きます!」と、言い切り選手の動揺を落ち着けた。