12月 遠征 親睦大会 16
#9井口ちゃんは、今まさに#17よっちゃんの顔面のあたりに手を上げ、顔を叩かんとするように見えた。
#17よっちゃんも、自分のミスに責任を感じてたか、頭を下げて#9井口ちゃんの鉄拳制裁を敢えて受けるポーズをとっていた。
#9井口ちゃんは、#17よっちゃんの頭を軽くはたき、「思いっきりプレーしよう!」と言って、#17よっちゃんの腰を叩いてダッシュで自分のポジションに戻った。
色々な事態を予想していた栄竹クラブの一同は、取り敢えず胸を撫で下ろした。
しかし、それは#9井口ちゃんの精一杯我慢した言動で、本人の怒りが収まった訳でないことは誰もが分かっていた。皆な#17よっちゃんに、「お願いだから、気の抜けたプレーでミスをしないで!」と切に願っていた。
栄竹クラブのサーブは、#16イソちゃん。
八葉クラブはバックセンターがレシーブ。乱れたボールをハーフセンターがレフトアタッカーに二段トス。ネットから離れた二段トスをレフトアタッカーは打ち切れず軽くはたいて返す。
栄竹クラブは、バックセンター#3キーちゃんがオーバーでセッター#6マメちゃんにパス。#6マメちゃんは周囲の心配をよそに、レフト#17よっちゃんにトスを上げた。
栄竹クラブの皆が、「お願い決めてぇ~!」と手を合わせて祈る。
#17よっちゃんは、#6マメちゃんのトスを思いっきり打った。
皆な目をつむった。
#17よっちゃんが思いっきり打ったアタックアは、八葉クラブのライトと中衛ライトの2枚ブロックに、シャットアウトされてしまった。
八葉クラブの2枚ブロックは、両手を上げてしかも手のひらを振っている。
シャットアウトではなく、#17よっちゃんの打ったアタックは、ネットを超えていなかった。
皆な、#9井口ちゃんの動向を冷や冷やしながら気にしている。
しかし、#9井口ちゃんは全く普段と変わらない様子を装っている。
#17よっちゃんは大きな声で、「ゴメ~ン!、本当に申し訳ない。」と言ってポジションに戻った。
栄竹クラブ9-9八葉クラブ
八葉クラブのサーブ。
栄竹クラブは、バックライト#9井口ちゃんがレシーブ。セッター#6マメちゃんはまたもや#17よっちゃんにトス。
皆が祈る。
陽介も祈る。
#17よっちゃんも、多分祈りながら、そのトスを思いっきり打った。
八葉クラブは、2枚ブロック。
#17よっちゃんが思いっきり打ったアタックは、アタックのミートポイントがずれて、チップして八葉クラブコートに落ちた。
フルスイングフェイントは、どんな強豪チームでも絶対に拾えない。
栄竹クラブは、全員崩れ落ちながら大笑い。
八葉クラブの面々も、大笑い。フルスイングフェイントを拾えないのは仕方ないと…。
栄竹クラブ10-9八葉クラブ
栄竹クラブのサーバーは、#17よっちゃん。
陽介は、#17よっちゃんに汚名返上のチャンスを与えていた。「よっちゃん~、思いっきり打ってぇ~!」と陽介は叫んだ。
#17よっちゃんは軽くうなづき、全ての力を注ぎサーブを打った。
#17よっちゃんの力強いサーブが、八葉クラブコートに向かう。
八葉クラブは、バックライトがあっさりレシーブ。セッターは中衛レフトにBクイックを上げて決めた。
永竹クラブ10-10八葉クラブ
#17よっちゃんのサーブは、A区の弱小チーム同士が戦っている場では功をそうすが、明らかにレベルの違う八葉クラブには通用しなかった。#17よっちゃんには良い経験になったことだろう。
陽介は、#17よっちゃんに代えてバックレフトに#13シズさんをコートに送り、一時的にバックレフトでレシーブをさせていた#2ヤマちゃんを、レフトアタッカーのポジションに戻した。
八葉クラブのサーブ。
永竹クラブは、代わったばかりのバックレフト#13シズさんがレシーブ。乱れたボールをハーフセンター#16イソちゃんが、レフト#2ヤマちゃんに二段トス。
#2ヤマちゃんは、八葉クラブの2枚ブロックからブロックアウトをとった。
永竹クラブ11-10八葉クラブ
永竹クラブのサーバーは#2ヤマちゃん。前衛レフトのポジションに#8ハリちゃんが入り、中衛レフトのポジションに#3キーちゃんが入る。
#2ヤマちゃんは、八葉クラブのバックレフトめがけサーブを打ち込んだ。
八葉クラブは、バックレフトに向かって来た#2ヤマちゃんのサーブを、レフトアタッカーがオーバーでカットした。ボールはレフトアタッカーの真上に上がり、それをバックレフトが中衛ライトに向かって二段トス。
しかし主審の吹笛。八葉クラブのバックレフトがドリブルの反則。
永竹クラブ12-10八葉クラブ
#2ヤマちゃんのサーブが続く。
しかし#2ヤマちゃんがサーブを打った瞬間に、主審の吹笛。
#2ヤマちゃんが、エンドラインを踏んでサーブを打ってしまったからだ。
#2ヤマちゃんの第二サーブ。
今度は、ネットにかけてしまい、2本のサーブをミスしてしまった。
永竹クラブ12-11八葉クラブ
八葉クラブのサーブ。何やら八葉クラブベンチが騒々しい。ベンチで監督が『監督マークのワッペン』を外して選手としてコートに入ろうとしているようだ。
(当時のルールでは、監督・コーチ・マネージャーは必ずそれぞれのマークが入った『ワッペン』を、審判から見える位置に付けなければならなかった。いずれも選手と兼用が出来たが、その場合はユニフォームを着用していることと、コートに入る時は当然ながら『ワッペン』を外すことが条件であり、選手となった瞬間から、監督の権利を失う。勿論ベンチに戻り、『ワッペン』を付ければその権利は復活する。)
主審のサーブ許可の吹笛。
八葉クラブはやっと『監督マークのワッペン』を外した監督兼選手が、メンバーチェンジが出来る状態になったので、副審に監督の代わりにコートキャプテンがメンバーチェンジを申し出た。
しかし、主審の吹笛。八葉クラブは、何が起きたか分からない。呆然としている。