11月 一般大会 23
ベンチに戻って来たメンバーに、「もう少し、泥臭くプレーをしよう!格好が悪くてもボールがコートに落ちないことが重要だということを、思い出そう!」と陽介が話している時に、プーアルベンチ後ろで横になっていた、長身レフトアタッカーのところに救急隊が到着した。
陽介もメンバーも、すっかりその様子を見入ってしまい、大した指示をすることもなく、またメンバーも要求することなく、タイムが終わった。
タイム明け、プーアルのサーブが続く。
永竹クラブは、救急隊の処置が気になってプレーに集中出来ない。
バックセンター#3キーちゃんとバックレフト#13シズさんがお見合いして、その間に相手のサーブが落ちた。サービスエース。
永竹クラブ5-15プーアル
プーアルのサーブ。
永竹クラブベンチから、マネージャーの彩姉さんが、「集中して!!!」と大声。
バックライト#9井口ちゃんがレシーブ。セッター#6マメちゃんはレフト#2ヤマちゃんにトス。
#2ヤマちゃんは、プーアルの2枚ブロックからブロックアウトをとった。
永竹クラブ6-15プーアル
永竹クラブのサーバーは、#9井口ちゃん。
しかし、サービスエリアでは#1ヨシちゃんがサーブを打つ構えをしている。
主審のサーブ許可の吹笛。
マネージャーの彩姉さんが、サーブ順間違えに気づいて、「違う!、違う!。井口ちゃんだよ!井口!」と大声で叫ぶも間に合わず、#1ヨシちゃんはサーブを打ってしまった。
記録席からサーブ順間違えを知らせる警告音が、けたたましく鳴った。
副審がサーブ順間違えを示すシグナルを行い、キャプテンが呼ばれ正しいサーブ順を指摘され、サーブ権がプーアルに移動。同時に1点がプーアルに与えられ、永竹クラブの次のサーバーは、本来打つべき順番だった#9井口ちゃんを飛ばして#3キーちゃんとなることになった。
永竹クラブ6-16プーアル
永竹クラブはこの後、救急隊の動向を気にしている事もさることながら、このゲームにおけるチームの状態も手伝い、全く集中するこが出来ず、1セット目7-21、2セット目6-21のストレートで試合に敗けた。
試合後の表彰式でも、永竹クラブの雰囲気は悪いまま。
ほどなく表彰式が終わり、メンバーが体育館を出て陽介の総括を聞こうと集まった時、彩姉さんが、「今から中華料理屋に行くので、総括はその時聞きましょう!、皆な早く着替えて!、三輪さんと私と監督は先に行ってるから!」と言って、集まったメンバーを解散させた。
陽介は、飲み会の席で今日の話をするのは嫌だったが、渋々了解して中華料理屋に行くことにした。
それにしても、『これからの時間』はどんな状況でも必ず執り行われる。感心するばかりだ。
これだけチームの雰囲気が悪いのにもかかわらず、チームのメンバーもほぼ全員参加する。そして必ず遅い時間まで飲みまくる。
中華料理屋に向かう道中で三輪さんが、「陽ちゃん、今日はありがとう。チームがあんな状態でもよく我慢してくれて感謝してるわ。中華料理屋でも色々あると思うけど、今日は我慢してね。ゴメンネ。」と言い、彩姉さんは、「タイムの時、川さんが陽ちゃんの話を遮らなかったら、陽ちゃんはヨシちゃんを責めてたでしょ?、川さんはそれを察したのね。皆な陽ちゃんの気持ちは分かってるけど、川さんはヨシちゃんを追い詰めたくなかったのね。もしあそこでヨシちゃんを追い詰めたら、本当に試合どころじゃなくなってたかもしれないし…。」と言った。
中華料理屋に着くとママさんが、「今日は大変だったって話じゃない!、暴れてお店壊さないでよ!」と笑いながら迎えてくれた。
そして、「ハイ、お疲れ様。」と言って生ビールとネギチャーシューをお店からだと言って、陽介に出してくれた。
陽介は、「ありがとうございます」と言って、遠慮なくママさんの好意を受けたが、おそらくは彩姉さんが電話で今日の出来事を話しして、それを聞いたママさんが陽介に気を遣ったのだろうと思った。
毎度試合のある日曜日の夕方から、永竹クラブのためにお店を貸し切りにしてくれて、さらには色々と気まで遣ってくれるのは、中華料理屋のママさんもきっと永竹クラブのファンなのであろう。いや、彩姉さんをはじめとする猛獣御一行様のファンなのであろう。いずれいしてもありがたい限りである。