11月 一般大会 21
キャプテン自らがとったタイムアウトでベンチに戻って来たメンバーは、寡黙だった。
陽介は、キャプテンが自らタイムアウトを要求したので、キャプテン#1ヨシちゃんが当然ながら何かを話すのだろうと思っていいたが、それすら無い。
マネージャーの彩姉さんが、「今は試合中だから、皆な元気を出して試合に勝つことだけを考えてプレーしようよ!」と言ったが、誰も返事もしない。
間もなくタイムアウトの30秒が過ぎようとした時、キャプテン#1ヨシちゃんが、「ゴメン、私のせいでチームの雰囲気を悪くして。監督の言うことを聞くから指示を出してほしい。」と小さい声で言った。
陽介は、「今更何を言ってるんだ!」と思ったが、ここで何も言わなければまともるものも、まとまらないと思い、「分かった。とにかく相手の攻撃を早く切って、サーブで攻めよう!この点差だと、この先は全てのサーブを勝負だと思って必死に打たないと、追いつかないよ!、頑張って大きな声を出してリズムを自分達に持ってこよう!」と言って、コートに送り出した。
タイムアウトが終わり、メンバーがコートに戻り、陽介がベンチに座った時、コーチ登録の三輪さんが、「陽ちゃん、ヨシちゃんは確かに問題児だと思う。頑固だし、いい歳をして子供みたいに振舞って。でもねヨシちゃんにああいう形で謝らせてはいけないと私は思うのよ。ヨシちゃんに陽ちゃんが今思っていることや感じてることは、正しいことだと思うけど、あそこまで追い詰めるとヨシちゃんの逃げ道が無くなってしまうから。だから、そこは我々が気を遣ってあげないといけないと思うのよ。ゴメンね、陽ちゃんからすれば理不尽な言い分だと思うだろうけど、それも含めて永竹クラブなのよ。そしてそうでありながら、ヤッパリ勝ちたいのよ。今更ながら正体が分かったかもしれないけど、それが弱小ママさんバレーチームなのよ。強豪チームや学生チームとは違って…。陽ちゃんには苦労をかけていると思ってるし、今までのどの監督よりも一生懸命私達のことを考えてくれていると感謝もしてる。だから虫のいい話なのは重々承知してるけど、ヨシちゃんに逃げ道を作ってあげてほしい。お願いします。」と、頭を下げて陽介に言った。
陽介は、「分かりました。僕も至らない点がたくさんありますし、何分にも若輩で世間を知らない部分もあります。何とかしたいと思いますが、取り敢えず今は試合中なのでこのセットをどうするかを先行して考えたいと思います。」と言った。
しかし何分にも7点のビハインド。正直言ってかなり厳しい状況だ。
タイム明け、プーアルのサーブ。
永竹クラブは、バックセンター#3キーちゃんがレシーブ。セッター#6マメちゃんはレフト#2ヤマちゃんにトス。
#2ヤマちゃんは、プーアルの2枚ブロックからブロックアウトをとった。
永竹クラブ2-8プーアル
永竹クラブは、#6マメちゃんのサーブ。
陽介はベンチから立ち上がり、「サーブ勝負して!、思いっきり打って!」と指示。
#6マメちゃんは、速くて低いサーブを打った。
プーアルは、中衛レフトがレシーブ。乱れたボールをハーフセンターがライトアタッカーに二段トス。ライトアタッカーは、ネットから離れた二段トスを打ち切れずチャンスボールを返す。
永竹クラブは、ハーフセンター#16イソちゃんがオーバーでセッターに入っている#3キーちゃんにパス。#3キーちゃんはライト#1ヨシちゃんにトス。
#1ヨシちゃんは、プーアルの高い2枚ブロックめがけアタックを打つ。
プーアルのブロックがワンタッチ。ハーフセンターが長身レフトアタッカーに二段トス。長身レストアタッカーはいつものように二段トスをスタンディングジャンプでアタック。
しかしタイミングが合わず、山なりのアタックが永竹クラブコートに返った来た。
バックレフト#13シズさんがセッターに入っている#3キーちゃんにパス。#3キーちゃんはレフト#2ヤマちゃんにトス。
#2ヤマちゃんは、プーアルの2枚ブロックを避けアタックを打つ。
プーアルは、バックレフトがレシーブ。セッターは速くて低い平行トスを長身レフトアタッカーにトス。レフトアタッカーは素早い助走から踏切、アタックを打とうとしたその瞬間、「アッ!」と言ってその場に倒れた。
永竹クラブ3-8プーアル
プーアルの長身レフトアタッカーは、膝を抱えて苦悶の表情。プーアルのメンバーが駆け寄って様子を見ている。
どうやらケガをしてしまったようだ。かなり痛そうでうめき声も聞こえる。
プーアルは、タイムアウトをとった。