陽介、弱小ママさんバレーチームの監督になる! 1
6人制バレーボールと9人制バレーボールの違いを述べたが、陽介が監督を引き受けたのは『弱小ママさんバレーチーム』。見た目は別として、当然ながら女子である。コートの大きさも6人制と同じである。多くの弱小ママさんバレーチームの場合、その構成員のほぼ全員が元全日本の竹下(ロンドンオリンピック銅メダルのセッター)や、木村沙織(同じくロンドンオリンピック銅メダルのエース)等と自分を重ねている。恐ろしくヘタなのに、悪気が無く自分と重ねているからいっそうタチが悪い。つまり、大したプレーも出来ないのに、速攻コンビネーションバレーをやりたがる。いや、本気で出来ると勘違いしている。陽介はこの恐ろしいまでの思い込みを、現実に戻すことから取り組んだ。
陽介が監督を引き受けて最初の練習日、メンバー全員が比較的早く集まった。陽介はまず準備体操をいつものように終えたメンバーを陽介の前に集合させ、メンバー全員に言った。
「この度皆さんの意向で永竹クラブの監督になりました。どうぞ宜しくお願い致します。つきましては、一つ確認したいことがあります。皆さんは、試合で勝ちたいから僕に監督を要請したんですよね?」
(一同)「そうだよ」
「では、これからしばらくの期間は、基礎練習に時間を多くとっていきますので、つまらない練習の日々が続くかもしれませんが、僕を信じてついてきて下さい。宜しくお願い致します。」
(一同)「いいよ」
本来であればスポーツをする上において、指導者側とプレーヤー側との間で、一同のこの返事はありえないのだが、そこは地元ママさんバレーチーム、世話になったお姉さんや、はるか年上の大御所達もいるので、良しとした。