11月 一般大会 5
それは、ドリーム化繊と5月に対戦した時に感じた、サーブの威力や攻撃の巧みさ、そしてドリーム化繊というチーム力を、今回の対戦ではそれほど感じないことだ。
別にドリーム化繊のレベルが落ちた訳ではない。
おそらくは、永竹クラブがこの半年で経験したことが引き起こしている感覚、要は永竹クラブのレベルが上がったということだと陽介は思っていた。
永竹クラブのメンバーもまたしかり、半年前なら「凄いサーブを打つなぁ~」とか、「攻撃が早いなぁ~」とか、感心しながら自分達とのレベルの違いを感じていた。
しかし今回は、ドリーム化繊と対等に戦っていて、レベルの違いを感じてないに違いない。
陽介は、永竹クラブの成長を目の当たりにして、感心するばかりであった。
永竹クラブのサーバーは、#8ハリちゃん。
ドリーム化繊は、バックレフトがレシーブ。セッターはライトアタッカーにトス。ライトアタッカーは永竹クラブの2枚ブロックを避けアタックを打ち込む。
永竹クラブは、ブロックのコースに入っていたハーフセンター#16イソちゃんがオーバーでレシーブ。コート真ん中に上がったボールをバックライト#9井口ちゃんがレフト#2ヤマちゃんに二段トス。
#2ヤマちゃんは、ドリーム化繊の2枚ブロックめがけアタック。とその時主審の吹笛。ネットタッチの反則。主審のジャッジは永竹クラブに上がったが、ドリーム化繊のキャプテンが、主審に質問に行く。
「今のネットタッチは、#2ヤマちゃんの方が先ではないか?」という質問の内容だ。
主審は、「確かに#2ヤマちゃんのネットタッチもあったが、ドリーム化繊の中衛ライトがブロックの上がり際にネットタッチをしたので、#2ヤマちゃんの打ったアタックのフォロースローがネットに触れるより先であった。」と説明。
判定は変わらなかった。
(通常、主審に質問したキャプテンと、主審や副審や線審の会話の内容は公表されない。最近の日本最高峰リーグのVリーグや国際試合などでは、説明のアナウンスを試合進行責任者がするこがあるようだが、一般的にはない。陽介はこの時の内容を、試合終了後連盟控室にいた主審に直接聞いて知った。しかしこの行為も通常ではありえない。陽介の人間関係とレベルの低いA区ならではのことだった。)
永竹クラブ9-5ドリーム化繊
#8ハリちゃんのサーブが続く。
#8ハリちゃんは、速くて低くてエンドラインまでとどくサーブを打った。
ドリーム化繊のバックレフトとバックセンターが、#8ハリちゃんのサーブを見送った。
線審の旗は、床を指した。サービスエース。
永竹クラブのメンバーは、全員#8ハリちゃんのところに集まりハイタッチ。
ドリーム化繊はタイムアウトをとった。
永竹クラブ10-5ドリーム化繊
ベンチに戻って来たメンバーに、「ナイスプレー!、このまま行こう!」と陽介は言い、何か指示を与えることはしなかった。
するとマネージャーの彩姉さんが、「皆な凄いじゃん!、ナイスゲームだよ!、だけど一発でボールが返ってくるかもしれないから、レシーバーをはじめ皆な集中してプレーしてよ!」と言った。
メンバーは、「そうだ!、そうだ!、集中しよう。一発で返ってくるかもしれないし、アタックのホローやフェイントカバーも忘れないように!」と、各々が確認し合っていた。
タイムアウト終了の吹笛が副審からあり、永竹クラブは円陣を組んでキャプテン#1ヨシちゃんが声がけして、コートに向かった。 陽介は、今のところ何も言うことはなかった。全員が今出来ることを精一杯やていると思っていたからだ。