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これは痛い! 大会に出場出来なくなった人 1

 Kさんが練習に来てくれて、皆な嬉しかった反面、思ったより厳しい練習であったので、あらためて気を引き締めた永竹クラブだったが、もう一つ、Kさんが練習で伝えようと話してくれたり指導してくれたこことが、言い方は違うものの陽介が普段言っている内容とほぼ変わらないことに気づいた。


 実はKさん、練習をみてくれた日の『これからの時間』もお付き合いしてくれた。伺えば永竹クラブが練習している体育館の最寄りの駅から自宅までは、1時間30分くらいかかるとのこと。


 大御所の三輪さんと川さんも陽介に、「お車代くらい出さないといけないんじゃないの?」と言い、近くのコンビニに小さい熨斗袋を買いに行った。


 飲み会の最中もKさんは、自分が現役時代のことや、バレーボールに対する気持ちや取り組み方、ママさんバレーに携わってからの話し、そしてプライベートの話など、永竹クラブの面々が質問することに丁寧に答えくれた。


 中には、「現役の時は、彼氏とかいたんですか?、身長が高いから洋服とかはどこのお店で買うんですか?」という、質問を浴びせる者もいた。まるで女子高校生が質問しているようだった。


 そうしたKさんの話しから、陽介が普段言い続けているバレーボールに対する、指導が間違っていないんだと、今更ながら思ったらしい。


 1時間位経ったころであろうか、「ママぁ、いつの頂戴ぃ~!」とゾウアザラシが吠えると、当然のように飲み物とそれ用のグラスが人数分だけ出て来た。


 ゾウアザラシは、練習中Kさんに厳しいことを言われていたので、さぞかし接しにくい状態でいたであろうに、「Kさんは、何を召し上がりますか?」と笑顔で訊ねた。


 Kさんは、「私は、レモンサワーをお願いします。」とゾウアザラシに伝え、三輪さんに、「ヨシちゃんは、私に色々と言われたから、きっと嫌な気分で飲んでいるだろうに、私にも気を遣ってくれていい娘ね。それにこのお店の雰囲気もとても良いし、あなた達にお店のママさんが気を遣っている様子が心地いいですね。」と感心していた。


 そしてしばらくすると、さすがにこのまま飲んでいると電車が無くなると思い、「今日は永竹クラブで皆さんと一緒に練習出来て、とても良かったです。今度の試合頑張って下さい。結果を是非聞きたいので、必ず連絡して下さいね。連絡先は三輪さんに渡しましたので。本当に残念ですが、このまま飲み続けていると電車が無くなったしまうので、これで失礼しますが、今日私が皆さんに言ったこと特にサーブやパスやレシーブ、そして練習や試合に入る時の気持ちを思い出してくれると、嬉しいです。今日は本当にありがとうございました。」と言い、三輪さんに、飲み会の割り勘分相当の代金を渡した。


 三輪さんは、当然ながら「お気持ちだけいただきます。本来であれば私達がレッスン料をお支払しなければならないのに、かえってお気遣いをいただき恐縮致します。これはお車代ですのでお納め下さい。私達のせもてもの気持ちです。」と言って、Kさんが出した割り勘分代金を返し、お車代を手渡した。


 しかしKさんは、「何を言ってるんですか、私はA区に面白いチームがある。新しい監督を迎え頑張ってるから、君も一度見に行って勉強してくるといいよ!と、A区の連盟顧問から言われたから来たんです。確かに学ぶことはたくさんありました。私達は実業団でプレーをしていた過去があり、テレビや雑誌などでも取り上げられたりして、バレーボールを指導するという背景がハッキリ見えているから、やりやすい一面もあるけど、永竹くクラブの監督さんのように、私達と同じように一生懸命バレーボールに取り組んできたという背景がありながら、その背景をアドバンテージとして見せることが出来ない状況で指導をしている姿を見て、正直感銘を受けました。何とか説得しようとしている姿には尊敬の念すら抱きます。ですから、私の割り勘分のお代はお支払しますし、お車代も必要ありません。また来ますから、練習の後飲みましょうね!」と言って、家路についた。


 三輪さんは陽介に、「陽ちゃん、あなた本当は何者なの?、Kさんがあそこまで言うなんて…。」


 陽介は、「ただのバレーボール好きのオヤジです」と笑いながら言った。


 そうした中で、大御所と陽介が今日一日のことを楽しく会話をしている時、よっちゃんが陽介のそばに来て「陽ちゃん、実は私、今度の一般大会に出れなくなったの。本当に残念なんだけど欠席でお願いします。」と言って来た。

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