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無謀!? 『地域連盟』の一般大会に参加した永竹クラブ 7

 この大会は、トーナントで予選が行われたため、負ければ『お帰り』であった。


 まだ、昼過ぎだということもあって、永竹クラブのメンバーは、大会会場に程近いファミリーレストランに入り、遅い昼食を軽くとりながら、陽介の試合の総括を聞いた。


 陽介は、「そ~れ見てごらん。言わんこっちゃない!」と言いたかったが、あまりにもショックを隠せない面持ちのメンバーを前に、その言い方はやめることにした。


 しかし、言うことは言わないといけないと思い、取り敢えず下を向いているメンバーに、「そんなにガッカリしなくてもいいじゃないですか!、まだまだ永竹クラブは力が足りないということが分かっただけでも、めっけ物ですよ!、皆さんは確かにA区では、チーム力の違いを見せられるようになって来ました。でも、所詮は『井の中の蛙』。まだまだ上には上がいるってことですよ!、それにいかに基礎練習が大切か、よく理解出来たでしょ?A区ではドリブルにならないオーバーパスでも、上部ではドリブルの反則になります。だから正確なパス、要するに基礎練習に勝る物はないのです。」と陽介は言い、さらに「でもね、永竹クラブは確かにまだまだだけど、一般大会を家庭婦人の資格のメンバーで戦っても、勝てる可能性はあるんだと気付きましたよ!、パスやレシーブさえ良ければ十分に通用すると思いました。だから、これからもチーム全体で一生懸命練習に励んで、勝利を勝ち取りましょう!」と総括した。


 しかし、永竹クラブのメンバーは、誰も陽介の話しに反応しない。食事もあまり進まない様子だ。


 試合を見ていた大御所2人は、「陽ちゃん、ゴメンね!、私達も本当は永竹クラブは無敵になった、強くなった!と、どこかで思ってた。でも陽ちゃんの言う通り『井の中の蛙』だった。どうしたら本当に強くなったって、思えるようになるのかしら?」と、ショックを隠せない表情で陽介に言った。


 陽介は、「どうしたら強くなったと思えるか?ということではなく、どうしたら永竹クラブが満足できるか?ということだと思います。その意味ではこの『地域連盟』の試合で勝てなかったこを、もう仕方ない。これ以上は無理だ。A区の家庭婦人大会だけ優勝出来れば良い。などと思い、それが永竹クラブとして満足をすることであれば、それも有だと思います。しかし、家庭婦人大会だけではなく一般大会も、またその上の大会でも勝ちたいと思うなら、それを成し遂げて満足ということになり、私達は強くなったんだと思うことにつながるのだと思います。したがって、僕がどうしたいとか、他人がどう評価するかなんて全く関係ないのです。永竹クラブがこの先どうしたいのか?が、最も重要なことで、それを今度の練習の時、皆に聞いてみようと思ってます。その結果でこれからの練習内容も考えたいと思っています。」と自分の考えを話した。


 大御所は、「そうね。永竹クラブがどうしたいかだよね。もし今日の試合をもって、これ以上は無理だ。という結論に至っても、陽ちゃんはこの先も永竹クラブの監督を続けてくれるの?」と不安げに陽介に聞いた。


 「まぁ、仮定の質問に答えるのは難しいですけれど、僕は勝負にこだわる中でやってきた経験しかないので、もしそういう結論に達したとすれば、永竹クラブの監督を続けるのは難しいかも知れませんね。いずれにしてもよく考えて結論は出しますけど…」と陽介は答えたが、大御所のあまりの弱気な発言に、「ヤッパリ『地域連盟』の試合には参加しない方がよかったかなぁ?」と、後悔さえした。


 ファミリーレストランに入ってから2時間位経ったであろうか、外で何やら電話していた彩姉さんが戻って来て、「それじゃぁ、これから地元に戻って、いつもの所で飲みます!、どうせ帰り道だから皆な行くでしょ?、シャワーを浴びたい人は、A区の体育館で浴びて戻って来て下さい!、車で来ている人は皆なの荷物を中華料理屋まで運んで下さい!、では行きましょう!」と、声をかけた。


 陽介は、「軽くとは言え、昼食を食べたばかりじゃないですか?、それにこんなに早い時間から中華料理屋は開いてないでしょ?、僕は電車で来てますから今日は帰りますよ!」と彩姉さんに言ったが、当然のごとく陽介の申し出は却下された。


 陽介は面倒なので「ハイ、ハイ」と言ったが、そのまま電車で帰ってしまうと考えた。


 一同がファミリーレストランの外に出て、何人かは家路についたが、彩姉さんの指示通り電車で中華料理屋に向かう者、車に相乗りするために試合会場であった体育館の駐車場に向かう者が、それぞれの方向に歩き出した。


 陽介は電車組みと一緒に駅に向かったが、彩姉さんが走って来て、「陽ちゃんは監督なんだから、私の車で送ってあげるよ!」と陽介の腕をガッチリと掴んだ。


 「いや、いや、そんなお手数をかけては申し訳ないので、電車で行きますよ!」と陽介は言ったが、まるで陽介の魂胆を見透かすように、「電車だと、そのまま帰っちゃうといけないから、私が車で送ります!」と彩姉さんはのたまり、陽介を引きずって体育館の駐車場に向かった。

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