9月 家庭婦人大会 2
第一試合、実力を見せつけて勝った永竹クラブ。
第二試合はBコートの4試合目、『明星』が対戦相手。
陽介は、第1試合を実力の違いはあったものの、自分達のバレーボールをやりぬこうと、一切気を抜かずにプレーしたメンバーに感心していた。
ただ、ラリーもなく、一方的に勝ったので、次の試合で相手が攻撃してきた時などに戸惑ったりしないか、むしろ心配な思いもあった。
主審の吹笛があり、Bコート4試合目のプロトコールが行われた。
キャプテン#1ヨシちゃんが、いつものように走って陽介のところに戻って来て、「サーブ権とった!」と満面の笑顔で報告した。
#1ヨシちゃんは、実に分かりやすい。
本人の性格につてのコメントはここでは避けるが、サーブ権をとれば陽介のところに走って戻って来る。サーブ権をとれなければ、歩いて戻って来る。
心から喜べば、満面の笑顔。不平不満がある時はふくれっ面をしたり、目をつり上げたり、場合によっては平家ガニが潰れたような形相になることもある。
今回も#1ヨシちゃんが「サーブ権とったよ!」と言う前から、彼女の行動でサーブ権が永竹クラブになったことを、永竹クラブ全員が分かっていた。
双方の公式練習が終わり、試合開始の運びとなったが、
永竹クラブは、危なげなくストレートで勝ちをし、Bコートで2勝をあげた。
その結果、Bコートでは2勝のチームが2チームしかもセット率も同じとなり、得失点差で永竹クラブが決勝に進むことになった。
5チームの変則リーグ戦では、このように同じ勝ち数をあげるチームが出る可能性がある。したがって、必ずしも強いチームが次のステージに駒を進めるとは限らない。
実に怖いリーグ戦だ。
さて、決勝戦に進出が決まった永竹クラブだが、Aコートではまだ予選が続いていた。
陽介が、永竹クラブのメンバーと一緒にAコートに目をやると、何とA区の家庭婦人女王『蕨クラブ』が大苦戦をしていた。
蕨クラブの対戦相手は、『日の出クラブ』。
1勝同士の対戦で他チームの成績にかかわらず勝った方が2勝となり決勝戦に進出する状況だ。
すでに1セットずつをとりあい、3セット目に入っている。
蕨クラブには、あの若きエースも出場しているが、大苦戦だ。
陽介は、日の出クラブは、レベルの低いA区において中堅どころのチームで、過去には決勝戦まで進出したことのあるチームと聞いていたが、「蕨クラブと同等に勝負出来るほどではないはずだ!」と、目を疑いながら試合を見た。
よく見ると、片言の日本語で、「私、私!!!」とレフトでアタック呼んでいる、身長175cmはあろうかという人が、蕨クラブの若きエースと打ち合っていた。
陽介が、「だれ、あの人?」と言うと、
大御所の川さんが、「あの人今年の3月から(A区の連盟では、原則3月選手登録、新年度4月から出場可)チームに入った、中東出身のママさんよ!、ご主人が日本人でお子さんが今年から小学生になったんだって。」と、教えてくれた。
陽介は、「えぇぇぇ~、ズルいじゃん!、あれだけ身長があれば絶対にアタック打てるじゃん!」と言って、天を仰いだ。