魔神の暗殺者1 オッカムside
更新遅くなりすみません。
今回はレフとの出会い
オッカムsideをお送りします!
「懐かしいなぁ~」
オッカムは目の前の景色を見ながら呟いた。
戦争跡地の大きなクレーター。
5年半ほど前にあった、西の国との戦い。
上司である軍務大臣レフィハルト・フォンデューク・ブラットフォードとの出会いを思い出す。
しがない男爵家三男である俺は捨て駒。
そんなオッカムが生まれて初めてまともに父親と顔を合わせた時に与えられた任務。
西の国との戦いで圧倒的な戦力として《イノンドの魔神》と近隣諸国のみならず大陸全土に轟く名を持つ、イノンド王家秘蔵の魔術師暗殺だった。
彼の魔術師は敵の陣営ごと1000人近くの兵士を跡形もなく一瞬で消し去り、残されたのは大地にめり込んだ魔法によるクレーターのみ。
それも戦力差を見せ付けて敵国を降伏させるために手加減をしたとか。
事実、思惑通りに開戦1ヶ月で敵国は降伏、後処理は多々あったが迅速に終戦した。
普通の魔術師は大きな魔法を使っても魔力の問題で2、3人を消して周辺の5人を巻き込んで怪我を負わせられるぐらいだ。それでも兵士が一人一人剣や槍で敵を撃つのに比べたらかなりの戦力になる。
さらに、妖精や精霊の力を借りたり、予め術式を構築した魔法陣を準備しておけばさらに火力を増すことができる。10~50人戦闘不能にできるのは魔術師のいない国にとって脅威だ。
要するに、手加減して1000人消す魔法を扱い、ケロリとしていたらしい彼の魔術師が異常なのだ。
敵味方関係なく《イノンドの魔神》と畏怖されたのも当然と言える。
そもそも、戦の3年前に就任した今期の若き五大魔術公爵は5人とも歴代遡ってもいない程の人外級の力を扱う魔術師達なのだが、その中でも彼の魔術師ブラットフォード公爵はずば抜けた魔力を扱えた。
きっと、人であることを辞めたに違いない。
そんな戦の功労者である人物を暗殺。
ブラットフォード公爵は功績により、近々軍務大臣に就任予定なのだが、まだ20前の若造が権力を持ちすぎる事を危惧する者は多かった。彼は五大魔術公爵に就任する前の時点でイノンド王家の後ろ楯を持ち、何処かの国から預かっている王子と噂されていた。
更には軍に入隊してから発揮された才能や実績。
厄介な事に、魔術師らしく実力主義。
根強い貴族思考の権力主義者達にはこれ以上ないぐらい目障りな存在だ。
しかし、相手は1000人消し去れる《イノンドの魔神》だ。
簡単に暗殺などできる筈がない。実際に何人もの刺客が送り込まれているらしいが、未だに彼の魔術師はピンピンしている。
あまりにも馬鹿げた話である。
ほぼ初めましてな父に対するオッカムの返事は決まっていた。
「承知しました」
俺はにっこり笑って答えてやった。
え?断らないの?
何故かって?
そんなのは決まっている。
楽しそうだから!
普通は畏怖して逃げ出すか、怖じ気付いて人に殺らせる。
現に父はビビった氏族の格上に指示されたのだろう。誰も暗殺が成功するとは思っていないが数打てば当たるかも的なノリだ。馬鹿だな。
父はそれを捨て駒である三男坊にふった。
大切な嫡男、そのスペアである次男を死地には送らない。
そこで、存在すら忘れていたであろう三男オッカムが軍人をやっていると思い出したかどこかで知ったのか、任務を与えて格上の氏族からの指示に従った事にするらしい。
きっとオッカムが失敗しても知らぬ存ぜぬで通すのだ。魔法で消されたら誰かもわからないだろうが。
まぁ、オッカムにとって父母や兄達家族などどうでも良かった。
ただ自分より強い奴等と戦うのは楽しい。
所謂、戦闘狂ってやつだ。
そもそも権力主義でなく、強さを求める軍人なんてそんな奴ばかりだ。
むさ苦しいが戦うのは楽しいので良しとする。
噂のブラットフォード公爵とやらはどうかな?
通常、詠唱や魔法陣により魔法を使う魔術師は接近戦が苦手らしい。
だが、ブラットフォード公爵が今まで暗殺されていないところを見ると普通の魔術師とは何か違うのだろう。
魔術師としての力ばかり聞くが、肉体的武力に関しては何も聞かない。
軍の訓練中に遠目で見る分に、背はかなり高いが特別鍛えているようには見えなかった。
その辺の魔術師みたいにもやしの如くヒョロくは無かったが、育ちの良さそうな成長途中の青少年と言った風体だ。
見たことない様な綺麗な顔に髪の色素が薄いせいか迫力はあるが強そうには見えない。腕は立つのかな?
ブラットフォード公爵が訓練を終えて他の魔術師隊員と離れて去って行く姿を目で追いながらオッカムは隙を窺っていた。
いくら強い者と戦いたくとも、武闘派なオッカムとしては手合わせなく人外の魔法で瞬殺は御免被りたい。
よって毒殺や遠隔攻撃は控え、不意討ち先制攻撃ぐらいで様子をみたい。
ここ数日、オッカムは戦う邪魔をされたくないのでひとりになる所を狙っているのだが、ブラットフォード公爵は中々に人気者だった。
わらわらと群がる。
「公爵様!訓練素晴らしかったですわ!是非私と休憩がてらお茶でもしませんか?」
「あら?貴女は先日公爵様にフラれていたではないですか。御迷惑ですから控えてはいかが?」
「そう言う貴女方が騒ぐのが迷惑だと思いませんか?閣下は我々魔術師隊員と訓練のディスカッションをしますので邪魔ですよ」
「うるさいですわ、ダッサイ魔術師ごときがわたくしに話しかけないで下さいまし!!」
「閣下の顔や地位に惹かれて、真の素晴らしさがわからない貴女方は引っ込んで下さい!!」
「あ~ら、公爵様に比べて実力が劣りすぎる雑魚魔術師がなにか仰ってますわ!貴殿方が相手では公爵様の訓練にもなってないのではないかしら?」
「ぐっ、閣下はそんな見下した様な差別はなさらない!確かに実力に差がありすぎるが、ペチャクチャ煩い令嬢方にわずらわされるよりは有意義な時間を我々と過ごして頂けている筈だ!」
「なんですって!?公爵様、此方の魔術師が酷いですわ!」
「閣下!!我々と魔術の研究やディスカッションによるフィードバックを、―――――あれ?閣下はどちらに?」
「ま、また貴殿方が邪魔なさるから公爵様を見失ったではないの!!」
我関せずと、無関心無表情でとっくに姿を消したブラットフォード公爵。
ひっそりと追いかけるオッカムは、ブラットフォード公爵の行く先々で勝手に行われるコントに苦笑いを漏らす。
「ははっ。あの人、周りに興味なさ過ぎじゃない?」
しかし、注目は勝手に集まるので中々ひとりにならない。正確には、ブラットフォード公爵が誰とも一緒に行動せず喋ってなくとも、王城や宮内では人気による人の目が有りすぎる。
たまに人目もなくひとりになる時もあったが、
「死ね、公爵」
突然現れた暗殺者5人に囲まれ、投げナイフや毒針、剣や鞭などで襲われても、眉ひとつ動かさず腕を軽く振って一掃していた。
無詠唱、魔法陣なしで魔法が使えるらしく、ブラットフォード公爵は息ひとつ乱さないどころか口すら開かない。
腕を軽く振るだけなので衣服に掠り傷どころか乱れもない。
魔術師、兵士や令嬢のみならず、ブラットフォード公爵は暗殺者にも人気な様で、オッカムが見ている間に何組も現れては瞬時に消されるか捕らえられていた。モテモテだな。
中には暗殺系のハニートラップもあったが男女関係なく容赦なく打ちのめすか消していた。
面白いぐらいに相手になってない。流石魔神様。
オッカムは何組かの暗殺者を見ていて気付いた。
たまにブラットフォード公爵が相手の攻撃をぎりぎりまで待っている時がある事に。
最初は多少油断して魔法の発動が遅れたのかと思ったが違った。
わざと攻撃を避けた?身体を動かして?
しかも、手練れの相手の時だけ。雑魚は瞬殺されていた。
―――あれは、俺と一緒かもしれない!
期待に心踊らせ、うきうきしたオッカムがやっと他の暗殺者がいない時にブラットフォード公爵をとらえられたのは3週間後だった。
「やっと、二人きりですね~」
そう言ってオッカムはブラットフォード公爵の前に姿を現した。普段通り、いっかいの兵士の姿で。
奇襲なし。変装や覆面もなし。剣は鞘に納めたまま距離をつめた。
にこやかに笑いながら話しかけると、今まで暗殺者に見向きもせず始末していた魔神様が此方を見た。
「・・・やっと?出てこなかったのはお前だ」
初めて声を聞いた気がする。
気じゃないな。遠巻きに見ていた訓練中以外で初めて口を開いた。
どうやらオッカムが見ていたのに気付いていたらしい。来なければ放置プレイなのか、それとも害にならないと判断したのか。
「ははっ、喋れるのか。喋れないかと思った」
「何故だ?」
無表情で喋られると人形と喋っているみたいでちょっと不気味だった。流石は人外の美貌の魔神様だ。
いやぁ、「何故だ?」って不思議そうに聞かれても。マジで暗殺者相手には無言で淡々と始末してたし。
しかも声まで淡々としてるのかー。
「いや、ずっと喋んないからさ」
「・・・そうか」
少し考えるように首を傾げてから返事がきた。
眉ひとつ動かさず頷いたから自分でも口を開いていないと気付いたのだろう。
「ま、いいや。俺の目的はわかってる?」
「お前、変わってるな」
「ありがとう。無敵魔神様も変わってるよね」
「そうか?」
「観察してた感じ俺と似てると思うんだ。強い奴と戦いたいんじゃないかな?」
確信した。
コイツも戦闘狂だ。
俺とはちょっと違うが間違いない。
力が強すぎて退屈してたのだろう。
「俺も退屈してたんだ。楽しく殺ろうか」
イノンド王国シリーズで
フェレイラ×ヴォルディの本編や
オッカムやモル従姉の話も
載せようかと思ってるので
更新スピードがバラけるかもしれませんが
そちらも宜しくお願いします!




