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50 治療院の患者達

ついに50!

今回は前半患者達がずっと会話してます

 

 国王陛下によるレフとモルディーヌの婚約を知らせる布令は、何をどうしてそうなったのか、レフとデートした次の日には出された。仕事が早すぎる。

 同じく布令で、ブロメル伯爵家の名前は伏せられていたが、連続殺人鬼首なし紳士(デュラハン)が捕まり処刑されたとの知らせも出されていた。名前を伏せたのは、罪のない名門貴族へまで不信感を民に抱かせないようにする為らしい。

 布令による軍務大臣ブラットフォード公爵のふたつの話題で世間は賑わっていた。


「モルちゃん!そんなっ、俺らの天使が、嫁に行かないでくれよー!!!」

「馬鹿、諦めろ!相手は軍務大臣様だぞ!?あの時のスゲー綺麗なイケメンじゃお前と比べものにならん。しかも首なし紳士(デュラハン)を捕らえてさらに有名人だ」

「ってか、何でそんな人が向かいに住んでるんだ?毎日出勤するにも城から距離あるだろ?」

「そりゃーモルちゃん口説くためだろ?たぶん嫁にもらう為だけに引っ越したんだ!くそっ、金持ちめ!!」

「え、それストーカーじゃ、」

「ばっか!?お前、そんな事言える相手じゃねーよ!鉄仮面の冷血人間って噂が本当ならスパッと殺られんぞ!?」

「その噂とあん時のイケメンが一致しないんだが。マジで惚れてそうだったし、あの目も口も本気って言ってたからな。モルちゃんに意識されずに腕つかまれて、可哀想なくらい嬉しそうだったし」

「モルちゃん、あんなムッツリに、」

「だから黙っとけ馬鹿!大体今じゃモルちゃんも軍務大臣様に惚れてんなら仕方ねぇだろ?」

「そ、そうなのか!?」

「いや、あのふたり見たらわかるぞ。どう見ても結婚秒読みだろ。お前見た事ないのか?」

「ない!マジか。ついに俺の癒しが奪われた・・・」

「何言ってんだ!むしろ、天使を地上に射止めた軍務大臣に感謝すんだな」

「確かに、今も治療院手伝ってるから、もしかしたら結婚しても多少は顔出してくれるかもな」

「いやいや、流石に公爵夫人になったら無理だろ?」

「解らんぞ?なんせブラットフォード公爵の方がモルちゃんにベタ惚れ状態っぽい。モルちゃんがおねだりしたら許可しそうだ」

「おお!そりゃゲオルグ先生も助かるな」

「どうかな?この国王陛下の布令出てから今日はめっちゃ落ち込んでるからな~」

「ここ3年可愛がってた弟子だから、愛娘を嫁に出す父親の気持ちなんだろ?昨日モルちゃんが軍務大臣様とデートから帰ってきた時、若造になぞに儂のモルはやらんっ!って喧嘩売ってたしな」

「でも解る。あんな可憐な天使が娘だったら、当分嫁に出せない」

「いや、出せよ。いき遅れになるぞ?」

「あれだけ可愛いくて優しけりゃ大丈夫だろ。良い娘だからなぁ、引く手あまただろ」

「だからブラットフォード公爵も焦ってんだろな。モルちゃん自覚ないけどモテるし。この治療院もモルちゃん目当てで平民、中流階級のみならず、たまにお貴族様まで来るしな」

「今まで誰がアプローチしてもびくともしなかったのにな」

「確かに、イケメンや金持ちも結構いたよな」

「だから天上に住まう天使は地上の男になんざ惹かれないと油断してたぜ」

「お前なんざ油断してなくとも勝ち目ないだろ!」

「そいやぁ、従姉妹さん達も天使なのかな?」

「さあ、まさか目移りか?しかし、一番下のミアちゃん以外あんま見かけないからなぁ」

「ミアちゃんはイケメン好きだが良い娘だよな。可愛いし親しみやすい。やっぱモルちゃんの従姉妹さんも天使の血が混ざってんのかな?」

「どうだか知らんが、まぁ、俺らの天使はモルちゃんだ!」

「そうだな!治療院の可憐な天使だからな!」


 昼下がりの治療院はその話題で持ちきりだった。

 モルディーヌにも、待ち合いとの仕切り越しに全部聞こえていた。

 と言うか、患者達には隠す気が全く無さすぎる。


「・・・あの、そう言う噂は本人のいないところでお願いします」


 次の患者を呼ぶべく顔を出してむくれるモルディーヌに、ニヤニヤとした笑顔が向けられる。


「怒んなってモルちゃん!皆モルちゃん大好きだから、どうしても気になっちまうんだよ」

「そうそう。可愛い俺らの天使が心配でな!」

「俺はチャンスがあるなら、あんな奴、もがっ!?」

「ばっか!軍務大臣様に殺られんぞ!」

「でも気になるよな。モルちゃんはどこが良かったんだい?」

「確かに!顔か?顔なのか!?」

「いや、金か権力にものを言わせたかもしれんぞ?」

「モルちゃんはそんなのに惹かれないだろ?」

「じゃあ、何が良かったんだ?」


「えっ」


 待ち合いに居る患者達の目が、一斉にモルディーヌに向けられたじろぐ。何故そんな公開告白を期待する様な目で見られなければならないのか。

 その時急に治療院の扉が開いた。


「俺も知りたいな」


 ここ数日で聞き慣れた淡々とした声。

 治療院の入り口に噂のレフがいつもの如く無表情で立っていた。しかも何故かニヤニヤ笑うオッカムまでいた。

 患者達の声が大きすぎて外にまで漏れていたらしい。

 しかし、問題はそこではない。真っ昼間に仕事中の筈のふたりが治療院にいる意味がわからない。


「何で!?今日は朝から仕事に行ったんじゃないの?」

「終わらせた」

「は?もう?終わったって、まさか、また寝てないの!?」


 軍務大臣暇なの!?とも思ったが、そんな事ないだろう。昨日も言っていたがこの常識はずれの男は寝ないで仕事をするという前科がある。

 モルディーヌが睨んだら、すっと視線を逸らした。本当に徹夜で仕事を片付けていたらしい。昼間に時間を作るためとはいえ、よろしくない。ましてや今日は別にデートの約束をしてないのだ。


「いやー、モルディーヌ嬢とデートしたいが為にめっちゃ早く仕事して助かるよ!ははっ、本当に、あのレフ殿が。動機が不純だけどね、ありがとう!」

「不純なものか。恋人といる時間を確保したかっただけだ」


 オッカムが楽しそうに礼を言ってくるが、内容がどうかと思う。レフが良いように使われている気がする。だが、仕事をほっぽり出されても困るので何とも言えない。


「・・・私はまだ手伝い中だからデートしないわよ?」

「終わるのを待つから構わない」

「帰って寝なさいよ!?何故とか言ったら怒るわよ!」

「怒られても無理だろうな。眠くないし」


 肩を竦めて、しれっと即答されてしまう。予想の範囲内だが本当に大丈夫なんだろうか。


「君が結婚してくれるまで、いや、結婚しても虫が寄り付かない様にしなくてはならなさそうだ」


 また虫ホイホイの話なのか、レフがそう言って患者のひとりをじっと見た。確か、さっきチャンスが何とか言っていた青年だ。レフに見られて面白いぐらい冷や汗を流し顔を青くする青年がちょっと可哀想になった。

 きっと冗談で言っていただけなのに外にいたレフに偶々聞こえてしまったのだろう。


「馬鹿な事言ってないで、終わるまで家で寝て待ってなさいよ。デートするなら貴方が少しでも寝てからよ!」

「・・・善処しよう。後、今夜のディナーにお祖父様が君を招待したいそうだ」


 嘘は吐かないから寝る努力はしてくれそうだ。ついでとばかりに付け足された話に首を傾げる。急にどうしてお祖父様が出てきたのだろう。


「えーっと、どちらの?」

「エイルズベリーのだ。ブロメルの件が片付き関係を隠す必要が無くなったから、布令を見て飛んできた。しかも、一緒にいた国王陛下が先に君と会ったことを自慢したから拗ねて喧嘩してしまい、ディナーを取り付ける約束をさせられた」

「す、拗ねた?貴方のお祖父様が?」


 国王陛下何やっているんだ。しかも、それに拗ねて喧嘩するとは、この国の上層部のお偉い方は大丈夫か。

 周りで患者達が「こ、国王陛下!?」「エイルズベリーって最強辺境伯の?」「お祖父様に紹介ってもうガチじゃん」とか聞こえて、こんな話をここでしても良いのか心配になる。


「昔から、やたら家族愛の強い方だからな。可愛くて強い者好きだから、きっと君を気に入るだろう」

「そ、そうなの?」

「なんせ、俺の母やフェレイラの気に入りっぷりが凄かった」


 それはレフの容姿から想像するに、人間離れの凄い美形の母娘だったからでは?と思うが、無駄に真剣にフォローされそうなので黙っておこう。知り合いばかりの中でやられたら恥ずか死ねる。


「・・・気に入って頂けるように頑張るわ」


 取り敢えず、患者達の大注目の中レフと会話し続けるのは危ない気がするので、向かいの家で大人しく待っててもらう為に追い出しにかかる。

 治療院を出たところで、オッカムが居た事を思い出して見やると苦笑いされてしまった。すみません。

 オッカムは長期任務中なのを今回の件で抜けていたらしく、また暫く留守になるそうなので、その前に顔を出してくれたらしい。裏の仕事をこなす副隊長様は忙しい様だ。

 それなのに態々挨拶に来てくれるとは、と礼を言ったら「上司を唯一働かせる将来の嫁に媚売っとかないと!」とか言い出したので呆れて半眼になってしまったが文句はなしでお願いしたい。


「じゃあ、またね!モルディーヌ嬢とレフ殿の結婚式には絶対戻るよ!!」

「・・・またそれですか」


 王太子殿下と似たようなセリフを吐きながら手を振り去るオッカムに手を振り返して呟くと、横でレフが「ああ」と頷いた。


「帰って来たらどうせ解るが、オッカムは一応は王太子婚約者フェレイラの護衛の任務に就いてる。だからヴォルディが使えなくとも帰ってくるだろ」

「うわぁ。色々思うところはあるけど、何なの?王太子殿下の扱いヒドイわね」

「ヘタレ王子だからな。多少はマシになってきたが」

「あんなに可愛いキラキラ美少年なのに・・・」

「一応君と同じ歳だから本人に可愛いとは言うな。面倒なくらい落ち込むから」


 苦々しくため息を吐くレフに、やはり王太子殿下が弟の様に可愛いのだろうなと笑みが溢れてしまう。


「ふふっ、大事な妹さんと弟みたいな王太子殿下が結ばれたら寂しい?それとも嬉しい?」

「いや、フェレイラがヴォルディで良いなら問題ない。俺としては君に逃げられたら寂しいどころではないが」


 ちょっとからかうつもりがブーメランが返ってきた。

 患者達が窓から覗いているので、甘い雰囲気を出すのは控えてほしい。一時退却しよう。


「そ、そう。じゃあ、終わったら家に知らせるわね」

「ああ。後で」


 レフと別れて治療院に戻ると、やはり盛大にからかわれてしまった。「おめでとう!ラブラブだね」「美男美女かー」「ゲオルグ先生がデートにごねたら説得は任せろ!」など騒がしい話題から逃げる為にもキリキリ働いて誤魔化す。


 これが続くかと思うと恥ずかしいが、何だかんだレフとの事が祝われているので嬉しく思う自分がいるのはまだ内緒だ。




読んで下さりありがとうございます!



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