48 不眠症の恋人へ
更新が遅くなりました!
今回もいつもよは少し長めです♪
愉快な外野を想像しながら読んでください!
「モルディーヌ、今日はデートをしよう」
昨夜いつの間にか泥のように眠ったモルディーヌは、少し疲れや筋肉痛はあるもののかなり元気になった。5日間酷使したわりにはピンピンしているので回復力は高いのだろう。
朝のうちに目覚めたモルディーヌのもとへ、レフが用意してくれたらしいモーニングドレスを携えた王宮メイドが身支度の手伝いや、朝食のお知らせをしてくれた。
王宮にある朝食の間に招待されたモルディーヌは、レフと国王陛下、王太子殿下と同席する事になった。王妃殿下と王女殿下は不在中らしく、朝から無駄にキラキラした美男子ばかりの朝食会に微妙な気持ちになる。
王宮料理人の調理したての温かく豪華な朝食を食べ終わる頃。
昨日の今日でレフがデートに誘ってきた。
「いや、レフ兄上は仕事が山積みなのでは?」
「うむ。ここ数日ブロメルの件に時間を取られて通常業務が滞っておっただろう?儂が未来の嫁と仲良く遊んでいてやるから働いて来ると良い」
王太子殿下や国王陛下が仕事のあるレフを嗜めたが、レフは鼻で笑って聞き流した。
「いえ、俺はこの為に徹夜で終わらせました。きちんと仕事をした後ならモルディーヌも良いだろ?」
しれっと何の問題もないと宣言したが、徹夜ですと?
何故か王族ふたりがすんなり納得しているのが解せない。
「何やってるの!?私とデートしないで寝なさいよ!?」
「何故?」
レフに不思議そうに瞳を瞬かれ、またモルディーヌがおかしな事を言っているみたいになった。何で?
しかし、今回は価値観とか関係なく、常識的に間違っている気もしない。
「なぜ、って、寝ないと身体か大変じゃない?」
「レフ兄上は昔からほとんど眠れないんだ」
困惑したモルディーヌに王太子殿下があっさり答えをくれた。
当たり前の様に言っているが普通におかしい。
眠れないで支障なく生きていけるのだろうか。
そもそも眠れないとは、
「どういう事?」
「ただ寝られないだけだ。気にしなくて良い」
「・・・そんな事あるの?」
「ああ。ここ10年ずっとだから1、2日など問題ない。準備が整ったら出かけよう。王宮からはそのまま失礼しますよ国王陛下」
まだ言い募ろうとしたがレフに出かけるよう促され、仕方無く王族ふたりに1泊お世話になった挨拶をする。
昨日は屋敷まで帰る体力がなかったので本当に助かった。しかし、次があるなら不意打ちではなく万全の状態で訪問したい。
「うむ、いつでも遊びに来なさい。結婚式の日取りが決まったら直ぐに知らせるのだぞ?」
「そうだな。それまでにフェレイラ・マクビウェルは連れ戻すから、モルディーヌがレフ兄上と結婚する気になったら知らせろ」
レフのお陰か、かなり気安い調子の王族達だった。
しかし、着々とレフとの結婚が決定事項になっていく。
モルディーヌとしては結婚したいしたくない以前に、とんとん拍子に話が進みすぎてノリが軽すぎないか、本当に私で大丈夫かと心配になる。日取りが決まっている訳ではないが、レフが結婚を急ぐ理由もわからない。
従姉妹達から聞いた話だと、婚約を何年もしているが中々結婚しない家もあるそうだから不思議だ。
朝食の間を後にし、デートの前にキースやアンの元に寄らせてもらう。朝ニーアに確認してもらった時にアンが目覚めた事を教えてもらっていたのだ。
ふたりはオッカムが副隊長を務める王宮内兵舎第3部隊のところにいるとの事だったのでレフに案内してもらっているのだが、やたらに注目されている気がする。
王宮の王族住居スペースを出るまではそこまででもなかったが、王宮の王族住居宮の外側に付属する兵舎の建物が並ぶ場所に出た途端に兵士達の視線とざわめきが凄い。
明らかに軍務大臣であるレフが兵舎に出向いた事に興奮している様子だ。
「随分と人気者なのね。反魔術師派とかいるから、もっと皆の態度は控えめなのかと思っていたわ」
「そうか?気にした事がなかった」
「言うと思った。鉄仮面の冷血人間さん?」
「・・・」
冗談なのに沈黙された。
レフ自身否定できない事実だと思っているが、モルディーヌに肯定したくないから返事をしないのだろう。
ちょっと拗ねてる様で可愛い。
「違うでしょ?別に鉄仮面でも冷血人間でもないんだから否定しなさいよ」
「いや、君以外にとっては事実だ」
「ここにいる人達も、貴方が照れて赤面したところを見たら考え直すんじゃないかしら」
何かしてみようかとレフの顔を見上げたら、思いっきり視線を逸らされた。
「・・・俺を殺す気か」
ぼそっと呟かれたのがおかしくて思わず顔がにやけてしまう。
「ふふっ、それは困るわね。そう言えば、本当に不眠症でも体調は大丈夫なの?」
「ああ、支障はないが・・・気になるなら早く結婚してくれ」
「へ?」
ちょっと予想外の返事がきた。
不眠症がどうして結婚を早める理由になるのか解らない。
怪訝に思いレフを見たら口角を持ち上げてニヤリと笑われる。碌でもない事しか言わない気がする。
「君が傍に居れば眠れる気がする」
「・・・」
うん。やっぱり意味がわからない。
頭の中どうなっているのか謎過ぎる。どう考えても10年来の不眠症がモルディーヌが傍に居るだけで治る筈ない。
人が真面目に心配したのに。と、白けた目でレフを見た時、いきなり大声が聞こえた。
「あぁ、天使様!ごきげんよう、本日も朝から神々しいまでの可憐なお姿ですね!!!」
かなり恥ずかしい事を叫ばれた。レフの出現でざわついていた兵士達の視線が集まり痛い。
こんな恥ずかしい事言う人はひとりしかいない。
声のした方を見ると建物のひとつからキースが出て来たところだった。
「ご、ごきげんよう、キースさん。その呼び方止めて下さい!事実でもないのに恥ずかし過ぎます!」
「いえ、いくら天使様の願いでも事実ですので承服いたしかねます。輝く銀の翼でわたしだけでなく、我が妹まで救って頂き感謝しきれません!!流石は天使様のお力!!!」
治療院でひっそりと噂されている分には問題なかったが、こんな王宮内の兵舎のど真ん中で叫ばれたら不味い。しかも、兵士達の注目を集めている中だ。
モルディーヌはレフとは違い魔術師ではない。悪い魔女だと思われたらどうしてくれよう。空気を読んで頂きたい。
「しーーーーっ!!何を叫んでるんですか!?周りの方達に変な勘違いされちゃうじゃないですか!天使とか頭ヤバい娘だと思われます!」
「モルディーヌが俺の可愛い天使である事は事実だ」
此方にも空気を読めない人がいました。
駄目だ。レフの言葉が兵士達へ聞こえたらしくざわつきが増した。
これで悪い魔女だと捕らえられたら困る。
「ちょっと!?レフィハルトも何言ってるの!?貴方が言ったら本当に誤解を招くわよ!!悪い魔女だと疑われたらどうするの!?」
「魔女?まぁ、海の妖精翼を持つ人魚の様に周りの男どもを惑わす程魅力的なのは悪い問題だ。他の男に奪われる前に早く俺だけのものにしたい」
安定の意味わからなさがまた出た。
さらに周りの騒がしさが増した気がする。只でさえ目立つ人が注目されている時に止めて欲しい。
「馬鹿な事言ってないでよ!」
「他の男に譲るくらいなら既成事実を、」
「ひゃっ!もうっ、破廉恥男なんて知らない!」
まだ馬鹿な事を言おうとするレフの口を塞ごうと手を伸ばしたら、解っていたのか然り気無く掌にキスされた。
段々行動パターンが読まれてしまっているらしい。やられた。
その時、キースの後ろから笑い声が聞こえた。
「ははっ。レフ殿とモルディーヌ嬢は、朝からまたアホなことやってるんですか?もうさっさと結婚して落ち着いて下さいよ」
「ごきげんよう、天使のお嬢さん」
オッカムと、続いて元気そうなアンが現れた。
アンににっこり微笑まれ、ホッとして「アンさん!」と叫んで抱き付いてしまった。オッカムが「俺にはハグしてくれないんですか?」とか言うのと、レフが舌打ちするのが聞こえたが無視だ無視。
「アンさん!もう身体の具合は大丈夫ですか?」
モルディーヌより背の高いアンを見上げれば、ぎゅっと抱き締め返してくれた。震えていたあの時と違って温かい。
そっと身体を離すとアンは胸に手を当てて誓うように口を開く。
「はい、本当にありがとうございます。私、不肖ながら天使のお嬢さんに一生お仕えさせて頂きます!」
「へっ?い、いきなりどうしたんですか?」
幻聴かと思い聞き返すと、頬を染めた素敵な笑顔が帰ってきた。美女にときめくわ!
「危ない限界のところで赤帽子から救って頂き、貴女のお陰で化け物に成らずに済みました。ブロメル伯爵の命とは言え酷い事をしてすみませんでした。貴女には本当に感謝しております」
「いえ、アンさんは私に然り気無く情報をくれてましたよね?アンさんからは悪意があまり感じられなくて正直脅えられませんでしたが、お陰で囚われている間に逃げる為の気力を失わずに済みました。此方こそありがとうございます!」
「ああ、本当に兄の言う通り天使様なのですね。一生ついて行きます!」
ん?やっぱり何かおかしな言葉が聞こえる。気のせいじゃなかったらしい。
「えっ、そんな事ないですよ?私はアンさんに仕えられる様な人間じゃないですって!」
「そうですよね、私ごときでは仕えるに値しないですね。出過ぎた真似をしてしまいました」
「ち、違います!そう言う意味では無いです!!私には勿体無いからですよ!?」
アンにしゅんっとされて慌てて訂正したら、パッと笑顔が戻ってくれた。が、
「では!是非にお願い申し上げます!!」
「え~っと、あの・・・」
何だかおかしな方向に話が進んでしまった!?
まず、仕えるって何だ?意味が解らないと周りに助けを求めたらオッカムにニンマリ笑われた。これは駄目なやつだ!
「諦めなよモルディーヌ嬢。目覚めてからずっとこの調子なんだよ。モルディーヌ嬢に仕える為なら軍で働くって言ってるから減刑の為にも許可してやって?アンが処刑されるの嫌でしょ?」
「わたしからも妹の為にお願い申し上げます!ついでに、わたしも心は天使様にお仕えしておりますのでお許しください!」
「えぇ!?キースさんまでとか絶対に力のせいですよ!?」
「いやいや、キースはあの夜にレフ殿の力で目を覚まさせたけどずっとこんな調子だから素だよ?アンに関しても涙の作用じゃないから、マジでモルディーヌ教の信者だね!!」
オッカムにサムズアップされたのでレフを見たら頷かれた。
確かに言われてみれば、ブロメル伯爵に囚われている時も、助かった後も話してる時呼び方こそアレだったが目が普通っぽかった気がする。
「・・・確かにあの時以降は恍惚としたヤバい目じゃないですね。って、それじゃあ本気で?」
「「はい。天使様」」
うわぁ。兄妹で揃ったわ。
しかも美男美女の良い笑顔。
「モルディーヌを害虫から守る為にも良いだろう。さっさと許可して俺とデートに行くぞ」
「なっ!?――――――もうっ。な、仲良くしてくれるなら嬉しいので、ふたりともよろしくお願いいたします」
レフが拗ね出したし、キリが無さそうなので仲良くする方向で頷いたら、ふたりに跪かれた。何で!?
そのまま「よろしくお願いいたします」と返されてしまい、何だか自分が大層な人物の様で居たたまれない。
減刑の為もあるが本来真面目なラットゥール兄妹は暫く軍でキリキリ働く事になるらしいので、居たたまれない場からは速やかに退散させて頂いた。
これ以上は兵士のざわめきが恐い。
レフとのデートは、折角なので王城内の庭園の散策にさせてもらった。
どこか行きたい所やしたい事の希望を聞かれたが、正直デートした事ないから分からずに適当にお散歩したいと答えてしまった。
もっと、年頃の令嬢らしく城下町でお買い物とか劇場観覧とか博物館等他にあっただろうと後から気付いたが、咄嗟に出てこなかったので仕方ない。
お散歩と言っても、王城内の庭園などそうそう入れない場所にもレフと一緒なら入れてもらえるからかなり貴重なお散歩になったので、決して只のお散歩ではないからセーフだと思いたい。
ぽつぽつと、のんびり会話しながら歩くのも悪くない。
休みの日は何をするとか、どんな食べ物が好きとか、この作家にハマっているとか、当たり前の何て事ない会話。
庭園の花を見ながら、ヴォルフォレスト・ハイガーデンの時とは違い隠し事なく何でも聞けるって素晴らしいと感慨にふけてしまう。
あの時みたいに、命を狙われる心配もなくなった。
もうレフの事でもやもやしなくて済む。
「楽しいか?」
「え?」
急にレフに聞かれて上を見れば優しい微笑みが降りてきた。何だかくすぐったくて、笑いながら首を傾げてしまう。
「いや、君が自然に笑っていたから」
「ふふっ、そうね。平和を噛み締めていたわ」
「そうか」
「あ、可愛い東屋があるのね!」
歩く先の小さな白い東屋を指差しレフを引っ張って行く。
大人しくされるがままのレフを東屋のベンチに座らせてモルディーヌも隣に座った。眠れないならせめて少しぐらいレフを休ませたい。何もしなくたって一緒に居るだけでデートにはなる。
「少し休むのか?」
「ええ。貴方がね」
「俺?」
「働かない人は嫌だけど、眠れないのも心配だもの!ちょっと目を瞑って休むと良いわ!」
不思議そうなレフに肩を貸そうとしたら、レフが少し迷った様に黙った後、いきなりモルディーヌの太股に寝転んで来た。
「君が膝枕をしてくれるなら」
「へ!?な、なんっ、あ、誰かに見られたらどうするのよ?」
「ここに入れる人間は限られてる。君が見張って人が来たら起こして、くれ、」
レフはモルディーヌが慌てても気にせず目を瞑り、段々と声が呟く様に消えていく。
しんっとした東屋でモルディーヌは少し落ち着きを取り戻して首を傾げた。暫くしても動きがない。
「・・・レフィハルト?」
そっと囁くが、レフの目は閉じられたままだ。
アレだけ寝られないと言っていた筈なのに。
すやすやと寝息を立てるレフの長い睫毛や薄く開いた唇など端整な顔立ちをまじまじと観察してしまう。
本当に眠っているのだろうか。眠っているなら、かなり寝付きが良い。
もしかして「ただ寝られない」とは、眠りが浅い質なだけなのかもしれない。音を立てない様に気を付けながら顔を上げ、東屋近くの花を眺めて時間を潰す事にした。
温かい陽の光で暖まった空気の中を、秋の少し冷たい風が吹き抜ける。そよそよと風に揺れる花を愛でていると、同じく風に揺れるものが視界の下をチラつく。
風に揺れる度に光の反射で色が変わる明るい銀色のレフの髪。ちょっと触ってみたくてウズウズする。
そっと、毛先に手を伸ばして触れてみる。
サラサラと柔らかいが思ったより芯の硬い髪に、将来あまりハゲなさそうだな。とか失礼な事を考える。そのまま調子に乗って鋤くように指を通して弄ぶがレフに起きる気配はない。
「本当に不眠症?」
思わず小さく呟いた声にも反応しない。
レフは「君が傍に居れば眠れる気がする」と、本気で言っていたのだろうか。そこで、ハッと気付く。
今更だが、妖精女王の孫であるレフ。昨日の話をよく考えてみれば、レフは嘘が吐けない妖精族の血が濃すぎて嘘を吐かないと言うか吐けないのだろう。つまり、嘘を吐けないから沈黙を選ぶレフは、人間の様に冗談でも嘘は言わない。
嘘吐かないなら本気で言ってるわよね。
だから早く結婚したいとか?
でも寝なくても生活に支障ないって言ってたし。
本当に私が不眠症に関係あるの?
しかし、レフ自身「気がする」と言った。
もしかしたら何らかの理由から関係あると考えているが、まだ確信を持っている訳ではないのかもしれない。
今見る限り不眠症には見えないが、こう言う状況でない限り未婚で一緒にいて眠れるかなど確認できない。これでモルディーヌと一緒なら眠れるなどと言われたらどうしたら良いか解らない。レフの身体は心配になるが、安眠枕だから結婚をさらに急かされるのは嫌だ。
モルディーヌとて結婚したくないのではない。
自分がレフを愛してると解っている。しかし、移ろう人の気持ちは解らない。ただ過去の様な想いをしたくないだけ。
この数日だけでは踏ん切りがつく程自分に自信がない。
レフが駄目な訳でも信じてない訳でもない。むしろ、今となっては結婚できるならレフしかいないし選ばない。
ただ、貴族相手となると沸き上がる不安。
「・・・私、貴方の子供産めるのかしら」
父が亡くなり初潮が来た時あたりで気付かされた。
自分が普通でない事に。
ヘッター子爵家に引き取られるまで世話になっていた遺産目当ての親戚達。
涙の事もあり気味悪がられた。
メリュジーヌの血族と知らなかった以前には理解できなかった。
竜は解らないが、魚、蛇、の生態を考えたら何となく察した。しかし、不安が消える訳ではない。
そんなモルディーヌを何も言わずに受け入れてくれたヘッター子爵家の家族には感謝し本当の家族の様に愛している。
レフにこんな話を打ち明けられる気がしない。打ち明けて捨てられたらどうしようと言うより、信じてるからこそレフを困らせたらどうしようと言う気持ちが強い。
ため息とともに吐き出した言葉に項垂れた。
そして下を向いて胃の腑から凍り付く。
紫の瞳とバッチリ目が合ってしまった。
驚いた様に瞬く瞳に感情が浮かぶ前に、自分の顔を手で覆い見ないようにする。
自分の迂闊さを呪いたい。油断し過ぎだ。
「・・・モルディーヌ?」
「い、今の、聞いて、た?」
呼ばれて返事をするが、声が震えてしまう。
「・・・」
「聞いた、のね」
「・・・」
否定しないのはそう言う事だ。
「ず、ずっと黙ってるつもりじゃなかったの!貴方と婚約する時に、本当ならもう少し親しくなってから、話さなきゃ、って、」
突然膝の上が軽くなり温度を失う。
レフの起き上がる気配に息を殺して堪える。
駄目だ。上手く説明ができる気がしない。
手首を掴まれ、顔を覆っていた手を退けられてしまう。仕方なく意を決してレフの目をみると、
「・・・モルディーヌ、どういう意味だ?」
何故か愛しい人の瞳が、初対面の時と比べものにならないくらいの殺気に溢れていた。