45 王太子の応接間
12、28話の伏線回収中。
モルディーヌの従姉妹同様
アストンは重要ではありません。
引き摺られた先は王太子殿下の執務室とくっついた応接間だった。
王城をくねくねズカズカ進まれたせいで、すでに帰り道がわからない。
流石は王太子殿下の応接間。
豪華な調度品や家具に囲まれてはいるが、華美すぎて下品にならず、統一された色調の上品で落ち着いた雰囲気だ。
王太子殿下の向かいのソファに座らされ、モルディーヌの後ろにオッカムが控えて立つ。ソファがふかふか過ぎて綺麗な姿勢で座りづらい。王太子殿下はどかりと座れてズルい。
何故かアストンが横でお茶の用意をしてくれている。ありがたく頂戴してわかる、お茶が美味しいからか。
「モルディーヌと言ったな」
「はい」
ソファに座りお茶を頂くなり王太子殿下に声をかけられた。答えると、次の質問を少し聞きにくそうに頬を染められた。男なのに可愛い。見比べられたくない美少年だ。
「・・・本当にレフ兄上の噂のこ、恋人なのか?」
「はぁ、おそらく?」
「は?どっちだ!?」
思わず疑問形で返してしまい、王太子殿下に顔をしかめられた。すみません。
アストンが王太子殿下の後ろに控えるのを何となく眺めながら王太子殿下に質問を返す。
「噂とはヴォルフォレスト・ハイガーデンでの事でしょうか?」
たぶんそうだろうと思ったが一応確認しておく。違ったら失礼になる。
「え、何それ。俺知らないんだけど!?」
急にオッカムが食いついてきた。
王太子殿下の話に割り込むとはいい度胸だ。そんなに気にする事だろうか。「オッカムさんがキースさんにわざと切られてる間ですから」と、素っ気なく答えるがまだ続けるらしい。
「ああ!急にレフ殿とイチャイチャし出した夜の前か~」
「や、止めて下さい!?イチャイチャしてませんし、言い回しが破廉恥です!!」
イチャイチャし出した夜とか誤解を招く。あれは命を狙われたモルディーヌにレフが過保護だっただけだと思う。
「えー、じゃあ、キースに夜這いされた夜?」
「よ、よば―――――っ違います!こっちはナイフで脅されて死ぬかと思って2階から飛び降りたんですよ!?」
さらに誤解を招く事を言い出したオッカムに強めに言い返してしまう。
叫んでからハッとして高貴なおふたりを見ると、王太子殿下はポカンとしていて、アストンには楽しそうに口笛を吹かれた。
王太子殿下が咳払いをして、改めて仕切り直される。
「ちょっといいか?何の話か解らん。物騒な内容から、おそらく此度の反魔術師派の件に関与したのだろうが、モルディーヌがレフ兄上と関わったところから順番に説明しろ」
中々に察して下さる王太子殿下でした。
誤解を正すべく雨の夜の出会いから、ありがたく説明させて頂いた。言っても、レフと出会って5日しか経っていないので直ぐに説明できてしまったのが少し寂しい。
日数や時間のわりにかなり濃い内容だが、お互いをまだ知らなすぎるのに恋人を名乗れるのか疑問だ。
「――――と、言う訳でして。噂の恋人?ではありますが、そんなに王太子殿下が気にされる仲では無いかと」
チラリと王太子殿下とアストンを見ると、呆然と固まっていた。何故?
「「・・・」」
ただただ見開いた目で瞬きを繰り返し、モルディーヌを穴が開くほど見るふたりにどうしたら良いのかわからない。
困ってオッカムを振り返ると、口に拳を当ててニヤついた顔を横に逸らされた。しまった、からかう為の新情報が更新されたっぽい。
「王太子殿下。私、変な事を言いました?」
「い、いや、本当にそれは、レフ兄上の事か?良く似た別人ではなく?」
「ブロメル伯爵も言ってましたが、あんな特徴的な人他にいませんよ」
「あ、ああ。そう、だな。だが、本当に?想像できなさ過ぎて聞き間違いかと・・・」
「ははっ、ですよね。ここにレフ殿来たら一発ですけど、―――――噂をすればですね」
何を察知したのか、オッカムが言葉を止めていきなり扉を開ける。と同時にレフが勢い良く入ってきた。
「モルディーヌ、何でヴォルディと居るんた!」
開口一番とっても不機嫌な様子で声が低い。浮気現場発見したみたいな勢いは止めてほしい。
王太子殿下が弁明しようと焦って立ち上がるがレフに手で制された。王太子殿下を手で制すとかとっても偉そう。いや、中々に偉いのか。力関係が謎だ。
「あの、レフ兄上?」
レフの勢いに固まった王太子殿下を無視してズカズカと部屋に入り、王太子殿下と同じく立ち上がっていたモルディーヌの前で止まると腕を組み睨んできた。
「レフィハルトは何で怒ってるの?」
首を傾げて見上げると不貞腐れたようにブスッとされた。子供!?
「何で着飾った君をヴォルディが先に見て独占までされているんだ?兵士が報告しに来たぞ」
「へ?何言ってるのよ。王太子殿下に貴方との事を聞かれたから―――――な、馴れ初めを話してたのよ?」
まさか王太子殿下相手に妬いたのかと首を捻るが、不機嫌でいられるのも面倒なので誤解を解く。
ただ、馴れ初めとか自分で言って恥ずかしい。
ちょっと顔が熱いのでパタパタと手で扇ぐ。
モルディーヌの様子で納得したのかレフの機嫌が直った。むしろ瞳に楽しそうな色が浮かぶ。
わざとじゃないがやり過ぎたかもしれない。
「俺との話?」
組んだ腕をほどき腰を抱き寄せられる。
ぐっと顔が近くなるので顔を逸らして、視界に入ったドレスで思い出した。
この服装に関しては一言ある。
「――――大体、私にこんな貴方色の格好させるなんて、何考えてるのよ!う、嬉しいけど、恥ずかしすぎるじゃない!!」
「俺のだと分からせる為に決まってる。とても似合っているが、俺といない時は可愛すぎて危ないな。ヴォルディ以外にも君に寄りつく虫はいなかったろうな?」
いつもの調子で、しれっと王太子殿下を虫扱いし出した。
「む、虫って、王太子殿下に失礼よ!?不敬罪よ!?」
「いや、ヴォルディ相手に何を・・・ああ、前に言ったろ?8年程一緒に育った弟みたいな友人であの公園を案内してくれたって。こいつがそうだ」
雑に家族兼友人の紹介をされる。
一瞬何を言われたのか理解できなかった。
「え?あ、あのヴォルフォレスト・ハイガーデンに前に行ったって言ってた時の!?」
王太子殿下に目を向けると頷かれた。
マジでしたか。
確かにヴォルディってあの時も呼んでたけど。
待って。この人ヴォルフォレスト・ハイガーデン造った本人である王太子殿下に案内してもらったのに興味なかったの!?
覚えてないとか言ってたわよね!?
酷いなと軽蔑の目でレフを見たら狼狽えられたが、甘やかしません駄目です。
レフの謎はどんなビックリ箱仕様なんだ。
「貴方は私に事前に話すべき事が多すぎない?」
「・・・一気には無理だな。ずっと俺といればその都度すぐ説明する。それに別にモルディーヌには何も隠す気はないし、その内全て知れるんだからそんなに怒るな」
「もうっ!」
「そんなに可愛い顔して怒ると口を塞ぐぞ」
安定の意味わからなさで物理的に塞がれそうになり、顔面を手で隠したがそのまま手にキスされた。
「ひゃっ!駄目よ!?貴方に羞恥心はないの、ばかぁ」
指の隙間から覗き見て抗議したが、珍しく解りやすい微笑みを浮かべたレフに抱き締められる。
呆れた様子のオッカムが鼻先に手を突っ込んできた。
「はいはい、そこのバカップル。王太子殿下がおいてけぼりですよー」
オッカムの邪魔にレフが舌打ちして王太子殿下に目を向けた。
「ああ。ヴォルディがいたか」
「流石に扱い酷すぎないですか、レフ兄上!?」
普通に酷いと思う。
うんうんと頷いたが、レフの次の言葉に凍りつく。
「煩い。俺の大事なフェレイラに手を出しておいてモルディーヌにもちょっかいかけるな」
「わ、わざとでは・・・」
・・・大事な、フェレイラ?
初めて出てきた名前に顔が上げられない。
明らかに女性の名前だ。
「俺が居ぬ間に愛するフェレイラにふざけた求婚して赦さん」
「知らなかったんですよ!」
愛する、フェレイラって誰?
王太子殿下が求婚して怒ってる?
何で?――――――嫉妬?
レフの事を知らなさすぎて知りたくない事を知るのが恐い。
他人に基本興味が無いと言うレフが愛するとは相当好きな人だろうか。
ぐるぐると胃が沈んだように気持ち悪い。
目頭が熱い。鼻が痛い。身体が震える。
――――――私よりも、その子が好き?
「レフ殿、レフ殿、ちょっと、」
「知らないで済むか。オッカムは話の途中に何だ」
「あの、モルディーヌ嬢にフェレイラ嬢の事話しました?」
「は?」
レフが上からモルディーヌに目を向けたのか、頭に視線を感じるが今レフの瞳の色を見るのが恐い。
嘘を吐かないなら聞きたくない事を聞くことになるかもしれない。
「・・・・ち、違う。違うからな!」
モルディーヌの様子から何を思ったのかレフが慌て始めた。
しかし、こちらの心に察するゆとりはない。
何とか口を開くが出る声は冷たくなる。
「何がよ?」
きゅっと目を瞑り震えるのを抑えようとするが上手くいかない。
震える身体をレフがきつく抱き締め直して、はっきり告げられる。
「フェレイラは妹だ!」
「へ?」
10年前の暗殺事件で死んだ筈の妹?
28話の
《あっち》と《ふたりの少女》のひとりが
フェレイラの事です。
ヴォルディとフェレイラも
過去の別作品主人公なのでさらっといきます。
彼らのは余力があれば
今後手直しして載せさせて頂くかもです。




