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41 伯爵の有罪証拠

ノリと勢いで書いてるせいで

ちょっとぐだくだしてきた気が


落ち手前苦戦中(((((゜゜;)



 

「騙ってなどないだろ?」


 レフがどこか歪んだ笑みを口許に浮かべた。


「その傷で、い、生きていられた筈がない・・・ば、化け物め!!」

「・・・化け物、か。だが、俺は生きているぞ?」


 そう言ったレフの瞳には何の感情もない。


 感情を圧し殺し続け、とっくに失ってしまった様な悲しいほどの無感情だった。

 モルディーヌ以外と接する時は、いつもこうなのだろうか。


 鉄仮面の冷血人間。


 そう見えるかもしれない。

 しかし、いくらレフがブロメル伯爵に言われた言葉を気にも止めないとしても、言っていい事と悪い事がある。

 レフにだって感情がある。

 そう思い、レフに自分から抱き付いていた。

 ハッと息を飲む音が聞こえる。


 ―――――好き。


 ブラットフォード公爵でも、

 レフィハルト・マクビウェルでも、

 よくわからない不思議な力があっても、


 ―――――この人(レフ)が好き。


 アルマンに殺されなくて良かった。

 致命傷に見える傷痕だって、

 化け物には見えない。

 仮に・・・

 本当に、化け物であったとしても恐くなんてない。


 誰がこの人(レフ)の感情を傷付けたか知らないが、


 ―――――――私は大丈夫!


 息を吸い、思いきって呼ぶ。


「レフィハルト」


 初めて名前を呼んだ。

 やっと分かったこの人(レフ)の名前を。


 心臓の上であろう胸板を走る傷痕に頬を擦り寄せる。

 ビクッとレフの身体が反応した。

 ドクドクと早い心音がはっきり聞こえる。モルディーヌの心音も同じくらい早いかもしれない。


 生きている。

 心地良い音に胸が一杯になる。


「貴方は化け物じゃないし、恐くないから大丈夫よ。――――――私は、レフィハルトが好きよ」


 レフの瞳を見詰めて告げると、紫の中の銀糸が揺らいだ。

 詰めていた息を吐き出すレフの顔に


 唇を寄せた時――――――――



「や、やはり籠絡して、おるっ、ぶぴゃっ!?」


 豚が吠えた。続く鈍い音に鳴き声。


「空気読めよ、ブタメル伯爵」


 オッカムの呆れた声にモルディーヌは固まる。

 レフの事ばかり考えていて忘れていた。

 ブロメル伯爵だけなら放っておいたかもしれないが、オッカムやキースがいたのだった。

 さらに、部屋の入り口に控えた兵士と目が合い、気まずそうに目を逸らされた。ひぃっ。


「何を、半裸の男に抱き付くなど、ぶぴっ!?」

「ブタメル伯爵、天使様の前でぶーぶー鳴かないでもらえます?」


 豚の鳴き声とキースのにこやかな声が聞こえる。


「ブ、ブロメルだ!!貴様ら、化け物の言うことを、ぶぎゃっあ!!」

「はいはい。罪を認めろ、ブタ。誰に向かって化け物とか言ってるのかな?」

「し、しかし、アルマンが犯人だとしても、わしが黒幕とか言う証拠はない!!」


 まだ言うのか。往生際の悪い奴だ。

 振り向いてブロメル伯爵に目を向けると、左右をオッカムとキースに挟まれて顔が赤く腫れていた。あら、殴られた痕?


「そうかなぁ?最近見たんじゃないか?」


 オッカムが何かを話そうとした時、モルディーヌがお預けを食らわせてしまった形になるレフが不機嫌そうに口を開いた。


「・・・ブロメル。早く認めろ。でないと、俺は仕事を放棄して、お前を存在しなかった事にする」


 わー、不機嫌。私のせいでしょうかね。

 いや。うん。ごめんなさい。

 でも周りに気付いたら無理です。

 だけど、ブロメル伯爵も悪いと思うのよね。

 あそこで止められなければ、――――――けふんっ。

 そもそも、人の事化け物とかいう奴が悪いわ!


 レフがスッと手を上げるのを眺めていたら、光速でオッカムが飛んできた。目で追えず、人間の動きとは思えない。

 気が付いたらオッカムがモルディーヌを間に挟んだ状態でレフの手を掴んでいた。何だこの状況は。


「えっ、オッカムさん!?」

「ちょ、ちょ~っと待ちましょうか?レフ殿、モルディーヌ嬢とイチャイチャしたいからって、ブタ野郎を消しちゃ駄目ですよ!?」


 後頭部からオッカムの必死な声が聞こえる。

 よくわからないがサンドイッチの具みたいだから離れて頂きたい。


「うるさい。後少しで、後数センチで・・・モルディーヌからキスしてくれそうだったのに、ブロメル赦さん」


 やはり、それで不機嫌だったようだ。でも、露骨に言うのは控えて欲しかった。恥ずかしい!


「いやいや、駄目ですよ!?そりゃ気持ちは分かりますが、一応ブタにも反魔術師派の筆頭で名門ブタメル伯爵って大層な身分がありますからね!!」

「貴様ら、さっきからブタとかブタメルとか馬鹿にしおって、ふざけるなよ!!!」


 さらに後ろからブロメル伯爵が激怒している声が聞こえる。

 いや、豚が吠えた。

 オッカムがずっとブタブタ呼んでるから本当に豚に見えるかもしれない。・・・豚にも失礼かもしれないが。


「おーーーーーーっと、黙れブタ!!誰の為にレフ殿を宥めてると思ってやがるんですか!?お前だぞ、ブタメル伯爵?」

「天使様に酷い仕打ちをした時点で消えても良いのでは?」


 オッカムが首だけ振り向いて叫ぶと、キースのにこやかな声が返ってきた。何だか物騒な話の筈なのにノリが軽すぎないか。


「ちょ、キースまで止めて!!レフ殿にかかったら一振りだから!洒落にならんぞ!?」

「オッカムどけ。そいつは俺の邪魔をするどころか、モルディーヌに暴力を振るった塵だ」

「ストップ!落ち着いて下さい!!確かにあのブタは塵ですが、簡単に消したら不味い塵です!!ほら、モルディーヌ嬢も見てないでレフ殿止めて!!!」


 いきなりモルディーヌに話が回ってきた。


「え、私ですか?」


 こんな物騒な人達に挟まれてどうしろと?


「そうだよ!?むしろ、モルディーヌ嬢以外にレフ殿をスムーズに止められる人いませんが!?両手握っておいて、はい!お願いします、モルディーヌ嬢!そっちでイチャイチャしてキスしてても良いから!!!」


 そう言って、オッカムが掴んでいたレフの手を渡された。

 よくわからないまま、取り敢えず受け取り握っておく。特に抵抗するでもなくレフもモルディーヌの手を握り返してきた。うん、意味わからない。


「え?いちゃ、き、キスって・・・」


 振り向いた時には既に、オッカムはブロメル伯爵の方に行ってしまっていた。


 この距離瞬間移動とか何者!?

 あ、元暗殺者か。

 いやいや、瞬間移動関係ないよ!


「―――――そうだな。それくらいの間なら塵に猶予をやっても、」

「何を言ってるの!?しないわよ!?」


 またレフが安定の意味わからなさになっている。無感情より遥かに良いが、心臓に優しくない。顔が近い!

 咄嗟に否定してレフを見上げると、端から見れば無表情のままなのだろうが、モルディーヌにはしょんぼりして見えてしまう。


「―――――しないのか?」

「何でがっかりしてるのよ!?人前で恥ずかしすぎるわよ、馬鹿!!」


 顔が赤くなってそうでそっぽを向くと、視界の端で紫の瞳が煌めいたのが見えてしまった。


「人前でなければ良いのか?」

「はっ!い、いや、違くて・・・・し、仕事しない人は嫌だって、言ったじゃない」


 またやってしまった。

 駄目だ。この滑る口でレフを好きなのがバレバレだ。全く誤魔化せていない。

 やはり自覚しても散々知らぬ考えぬと言っていた手前、こんなに早く知られると恥ずかしい。


「ちっ。わかった。可愛過ぎる恋人の為に仕事をする」

「「ちっ。」じゃないわよ!?」


 とか言いながら恋人という言葉に喜ぶ自分の脳内は充分浮かれているようだ。熱い頬を隠したいがレフの手を握ったままでは難しく、いとも簡単に甘い雰囲気になる。


「何なんだ貴様ら!?人をおちょくってるのか!!」


 ブロメル伯爵に怒られた。

 気持ちは分からなくもないが、自分の立場を分かって言ってるんだろうか。


「いや、いたって真面目だ」


 レフがしれっと答える。うん。まぁ、そうですね。

 素でやってるからおちょくってるつもりは無いだろう。


「んな訳あるか!?軍務大臣が化け物な上に、そんな売女に骨抜きにされるなど、国の終わりだ!!魔術師派など握り潰してくれるわ!!」

「さっきも思ったが、売女とは?まさかモルディーヌの事じゃないだろうな?」

「騙されておるぞ!この売女には人を洗脳する力があると首なし紳士(デュラハン)から聞いた!!きっと色で籠絡されておるんだ!!」


 レフの冷ややかな視線にも怯まず罵るブロメル伯爵はある意味勇者だ。悪い奴だけど。

 キースが「フフッ、このままだと寿命が秒読みですね」とかニコニコしているので、こちらも大概悪役に見えるかもしれないが。

 しかし、首なし紳士(デュラハン)がここで出てくるとは。

 洗脳ではないが近いものはあるので否定はしない。レフには効きませんけど。


「洗脳・・・されたいんですか?」


 最近やたらとレフの前では涙腺緩く泣いてしまっているが本来は泣かない様にする癖がついている。潤むぐらいはあるが涙を流すことなどそうそうない。

 先程もレフ達の役に立てるならと思ったが、却下されたのでモルディーヌは役立たずだ。

 ブロメル伯爵に一応聞いてみると鼻で笑われた。


「はっ!わしには効かなかったではないか!」


 うーん。腹立つし、勘違いされている。

 だけど訂正するのも面倒くさいわ。


「やってみましょうか?」

「モルディーヌ駄目だ。塵には君を見せるだけで勿体ない」


 やはりレフからストップがかかる。わかってます。

 だからと言ってイチャイチャするのもおかしいので、そろそろ服を着て頂きたいレフに服を押し付けて追い払う事にした。

 さっきから、控えてる兵士が半裸のレフと抱き合うモルディーヌを気まずそうにチラ見してきてるのだ。私も気まずい!


「早く服を、風邪引くから服を着て」

「ああ。でも、その間に涙を()()たら駄目だからな」

「分かってるわよ」


 念押しされなくとも基本的には泣かないんだけどな。

 役立たずで申し訳ないとオッカムに目をやると、気にした様子はなく、むしろにんまりと笑っていた。何故!?


「さて、レフ殿が大人しい内にサクッと吐こうか?ブタメル伯爵!」

「な、何を!証拠も無いし、吐く事も無いぞ!!」

「そうかな?では、証拠を並べていこうか!」


 え。あるの?

 そう言えばオッカムはさっき何かを言いかけていた。

 あるならこんなにゴタゴタする前に早く出せば良かったのでは?と思ったが、レフが遮って暴走したから止めるのが先になったからだった。仕方ない。


「まず、今回の件から。イーサンが拾ったアルマンのカフス。言質はモルディーヌ嬢が取ってくれたけど、これによりアルマンの死を隠す為イーサン経由でモルディーヌ嬢殺害依頼をしたのがブタメル伯爵だと言い逃れはさせない」


 あの夜モルディーヌも見た、剣と狼の紋が入ったカフスが引き寄せられたテーブルに置かれた。

 続いて、何かびっしりと文が書かれた紙も置かれる。


「俺の頑張りでギリギリ生きているイーサン・スクラープの証言もあるからね」

「ちっ。だが、娘は生きているから未遂だ!ぐっ―――ぷぎゃっ!?」


 オッカムがブロメル伯爵の足の甲を、踵でぐりぐり踏んでいた。


「はい、おブタ(ばか)さん。殺人未遂でも犯罪!次はアルマンが魔女であり、殺人を犯している事を知りながら協力した罪。さらに自身が行う悪魔の儀式の贄にモルディーヌ嬢誘拐及び暴行罪!」

「痛っ!っし、知らん!わしは知らなかった!娘の誘拐も無事だっただろうが!」


 だいぶ無理がある抵抗をするブロメル伯爵に呆れてしまう。

 ばっちり人を悪魔の儀式の贄にする言っていたのに知らない訳がないし、無事生きていれば無罪になるわけではない。多少は罪が軽くなってしまうかもしれないが。

 キースがブロメル伯爵の頬に、微笑みながらナイフの背をぺちぺちと当てる。


「本邸と別邸で捕らえた使用人が吐きましたよ?主人親子の犯罪は気味が悪いと不評だった様ですね」

「う、嘘だ!そんな筈は・・・だが、10年前の事件は証拠はないだろ!!」


 自信があるのか、ブロメル伯爵は勝ち誇ったようにニヤリと笑った。どう見ても劣勢なのに凄い度胸だ。

 服を着たレフが軽く息を吐きながら話に戻ってきた。


「ああ。そのせいで10年もの間、お前を死罪にする証拠集めに苦労した」

「ぶははははっ!そうだろう。小僧が調子に乗りおって!」

「苦労()()と言っただろ。証拠がやっと揃った」

「・・・は?」


 ポカンとアホ面のブロメル伯爵に構わず、レフが扉に控える兵士に合図をした。

 直ぐに扉が開き、モルディーヌが見知った男が入って来た。


「やれやれ、やっと出番か?」

「―――――――え?何で、」


 モルディーヌの疑問に男が笑みを見せた。


「おお!モル、無事で良かった!心配したんだぞ!!」

「な、何で――――――ここに!?」

「何でって、そこにいる向かいの若造に呼ばれてな。ブロメルを死罪にする証拠として来てやったんだ」


 驚くモルディーヌにのんびりとした声で答えたのは、3年前からよく知っている人。

 治療院の医師ゲオルグだった。

 いつものように草臥れた医者らしい格好が、兵士達の中で目立っている。


「それで?証拠()が来てもブロメルはまだ認めないつもりかい?」


 ゲオルグはのんびりとした口調のままブロメル伯爵に向かって首を傾げた。

 ブロメルは顔を青白くしながら口をはくはくとさせていたが、我にかえったのか縛られたままで暴れ出した。すかさずオッカムが取り押さえたので、ブロメル伯爵が口汚なく罵る。


「―――――くそっ!退きやがれ!!ぐっ、何故!今さらゲオルグが出てくるんだ!!」

「愚問だな。グレアム・ラットゥールは儂の古くからの友人だったんだぞ?」


 ゲオルグの言葉にキースを見ると、既に知っていたのか場違いなぐらい人好きのする笑顔でニコニコと静観していた。手にナイフを持ったままなのが異様で恐い。

 そんなキースには気付かないのか、ブロメル伯爵はゲオルグを睨み付けて怒鳴り続ける。


「知っておるわ!だが、10年前は黙っていたじゃないか!!」

「10年前、グレアムがそれを望まなかった。馬鹿正直なグレアムも儂も、お前に騙されたせいでな」


 ドロリとしたものがゲオルグの瞳に見えた気がした。何かに既視感を覚える。


「ふんっ、わ、わしが騙しただと?」

「ああ。真実を直ぐに調べなかった己の馬鹿さ加減に落ち込んださ。お前がグレアムに持ちかけた話は記録されているぞ。だが、儂が真実を知った時にはもうグレアムは処刑された後だった・・・」


 ゲオルグは静かに過去にあった事を、ブロメル伯爵に分かりやすく語った。





ゲオルグを後半どう出そうか

ずっと考えていました・・・


次回ゲオルグside

10年前編です。


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