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37 再会とネタばれ

いつもありがとうございます!


Q、今回は誰の謎でしょう?

 

「お帰りモルディーヌ嬢!お疲れ様ですレフ殿!」

「あぁ、天使様!ご無事で何よりです!!ブラットフォード公爵には黙ってた事を先に謝ります!!」


 人間界に出た瞬間。

 待ち構えていたオッカムとキースが出迎えてくれた。


 儀式の場所はブロメル伯爵家所有の王都南区画東側のアルマン用の別邸であった。

 中区画中心地の貴族街にあるブロメル伯爵家の本邸。そこに囚われていたモルディーヌを夕刻前には助け出すつもりで準備をしていてくれたらしい。

 レフは直ぐにでも助けたかったが、ブロメル伯爵家の関係者全員を漏らさず捕らえなくてはならないから準備手配が多く、責任者として勝手はできなかったと謝ってきた。

 それでも朝日が昇ったすぐ後には本邸を囲み込み尖兵を入れ、ブロメル伯爵にモルディーヌが連れられた後だと知った。

 捕らえた本邸の使用人達に儀式の場所がアルマンの別邸である事を吐かせ、急ぎそちらも抑えてレフとニーアで妖精界へ追って来てくれたのでモルディーヌは間一髪で助かった。

 オッカムとキースは別邸を抑えた兵士達と共に、万一レフとニーアがブロメル伯爵を逃しモルディーヌを見つけ出せなかった時に儀式をさせない為控えていたらしい。


「しかし、また凄い事になってますね・・・」


 オッカムが苦笑いしながら此方をまじまじと見ていた。

 半裸のレフに抱えられ、モルディーヌはレフの服とニーアのマントにくるまれた状態だ。

 確かに、いきなり見て何が起きたのか解らないし、異様な光景だろう。


「天使様!わたし不肖ながら、妹のドレスで良ければと用意させて頂きました!!」

「わぁ!本当ですか?キースさんありがとうございます!!」


 本邸に囚われていた時に一度潜入したキースはちゃんと考えてくれていたらしい。

 キースに笑顔を向けたらレフが片眉を上げて不機嫌そうになった。さっきの続きだ。


「おい、キース・ライアー。お前はモルディーヌに関する報告が足りなかった様だな?」

「はい。ブラットフォード公爵が冷静な判断力を失わない為には伏せる事も必要かと」

「確かに、レフ殿は事モルディーヌ嬢に関してはヤバいですからね」


 キースとオッカムがしみじみと頷きあっていた。

 基本的にモルディーヌと接するレフしか知らないので、ここ数日の付き合いでは他でどうなのかわからない。


「どういう意味?何がヤバいの?」


「「「・・・」」」


 何故か3人にサッと目を逸らされた。え、いじめ?

 レフは少し気まずそうに、オッカムはうんざりした様に苦笑い、キースは若干面白がって考える様に。


「ねぇ?」


 ムッとして一番近いレフを見たら、横にいたニーアがあっさり答えてくれる。


『主がお嬢さん大好き過ぎるって事っすよ。お嬢さんが拐われた八つ当たりで、イーサンって人間は死にかけっす!後はず~っと殺気立っちゃって大変だったっすよ!』


 イーサンが死にかけってところでポカンとしてしまった。


「へ?・・・そんなに心配してくれてたの?」

「当たり前だ。オッカムに止められなければ腹立たしくて殺していた。まぁ、今も顔を見たらわからないが」


 客観的に見て大好きだと思われちょっと嬉しかったが、レフがしれっと殺人未遂からの予告をし出したので固まる。

 オッカムを見ると「マジで大変だったよ」と肩を竦められた。


「まぁ、天使様も人の事言えませんよね。ブロメル伯爵に何を言われても黙ってれば良いのに、レフ殿の事に関しては言い返して頬を打たれたり、お腹蹴られたのですよね?御身を大切にして頂かないと」


 ブロメル伯爵とのやり取りをキースにバラされて少し気まずい。レフを見ると眉根を寄せて顔をしかめてしまっていた。


「俺の事で?そうなのか?」

「だって、理不尽な理由で逆怨みして、貴方の事を馬鹿にしたのよ!?」


 言い返してもレフは厳しい顔のままだ。

 しかも、キースが煽るように笑って口を挟み出す。裏切り者め!


「ふふっ。あの格好で手足縛られたら、普通はもうちょっと大人しくしますよ?」

「モルディーヌ・・・」


 レフからの呆れも混じった目にいじけたくなる。

 確かに、ちょっと後先の事を考えられていなかった自覚はある。しかし、ブロメル伯爵の言い方にカッとしてしまったのだ。


「むぅ。私の事は良いけど、貴方の事はムカついて我慢できなかったのよ!どう話を聞いても貴方悪くないじゃない!!」

「・・・ああ。ありがとう」


 言い募るモルディーヌにレフの厳しい顔は消えたが、何とも言えない感情が目に表れ、宥める様に背中を撫でられた。なぜ!?


「もうっ!子供扱いしないでよ!」

「俺は子供扱いしてるつもりは無いが」


 つい、むくれてしまいいじけていたら、レフがさも当たり前の様に顔を寄せて囁いた。

 そのまま近付く綺麗な顔に嫌な予感がして、素早く顔を塞いだら舌打ちされた。


 この人キスしようとした!?

 人前なんですけど!!


「ち、近いのよっ!!―――――――着替えます。キースさん、着替える部屋あります?」

「はい、天使様!ご案内いたします」


 誤魔化すべく逃げようとキースに視線を移すと、キースがイキイキと手を差し伸べてくれた。

 然り気無くレフから降りようとしたが、逆に抱き上げる腕に力を入れられた。バレたか!


「駄目だ。俺が連れて行く」

「貴方は仕事があるでしょ?」

「君からなるべく離れたくない。せめて、部屋に送るぐらいは良いだろう?」


 ごね始めた!?

 この人軍務大臣よね?

 つまり、軍のトップよね?

 仕事たくさんあるんじゃないの?


 突然、


 パァーーーーーンッ!!!


 と、オッカムが手を叩いた。


「はい。レフ殿は仕事あるのでこんな所でごねないで下さい!さっさとモルディーヌ嬢を部屋に送って着替えさせて、自分も服着て戻って下さい!さぁ!早く!!」


 やたら迫力ある笑顔のオッカムに、恐い家庭教師が生徒を叱る様に追い出された。






 着替えたモルディーヌがひとりで元の部屋に戻ると、先程は周りを見る余裕が無かったせいか、改めて見る異質な部屋に驚いた。


 気味の悪い曲がりくねったオブジェや善からぬ魔術書。人なのか動物なのか解らぬ部位が詰められたビンが棚に並び、如何にもな悪い魔女の部屋であった。

 さらに、床には大きな魔法陣らしき円と模様。

 13箇所に印がつけられている。1箇所を残し、そこ以外は人の頭サイズの壺が置かれていた。中身は見なくても解ってしまう。

 最後の1箇所に自分の首が入る姿を想像したくない。

 間違いなくアルマンの部屋らしきそこは、モルディーヌを贄に悪魔儀式をする予定の場所だった。


「うわぁ~。気持ち悪い部屋」


 モルディーヌは部屋に入るなり呟いてしまった。

 声が聞こえたのか、他の兵士と話して背を向けていたオッカムが振り向く。

 そのまま、他の兵士達がオッカムの指示で部屋を出ていった。邪魔してしまっただろうか。


「やぁ、モルディーヌ嬢。また随分と扇情的なドレスだねー」

「イブニングドレスと露出同じぐらいですけど、アンさんのドレスですからねー。シックな色を普段着ない私がお色気美女になるのは無理ありました」


 自分の姿を見下ろしながら肩を竦めるしかない。

 シックな深い赤色のドレスは黒いレースで縁を飾られている。開いた胸元と細く絞られたウェストライン。ボリュームなく落ちたスカート部分はヒップの形をひろう。

 小柄なモルディーヌではスカートの丈が合わず、歩く時に気を付けないと転ぶ。他も袖やウェストが弛かったのでコルセットで絞めずに着た。


 うん。

 似合わない。


「ははっ!モルディーヌ嬢は可愛い系だからね!でも似合ってるよ。レフ殿には見せた?」

「まだです。私より先に服着たから、キースさんと部下の人に連れてかれちゃいました」


 ちょっとしょんぼりしてしまった。

 死の危機や緊張感から解放され落ち着く間も無く、知らない兵士達が慌ただしく働く中に放り出された気分だ。

 やはり、レフが一緒にいてくれようとしたのに甘えれば良かったかもしれない。

 でも、へとへとでろくに動けないモルディーヌがいては仕事の邪魔だ。しかも、兵士達には部外者。


「よしよし。お兄さんが慰めてあげよう!」


 オッカムが両手を広げて抱き付いて来ようとしたのを、サッとかわす。人が疲れているところに何て奴だ。


「いえ、あの人(レフ)に怒られそうなんで遠慮しときます」

「ありゃ?・・・はっ!?まさか、ちょっと雰囲気違うなとは思ったけど!?」


 やたらニヤニヤし出したオッカムから速やかに逃げたい。


 いや、その内知られるとは思ったけど。

 こんなに直ぐとは。

 あれだけ知らない考えないって。

 何回も言ってたのに、恥ずかしすぎる!!


「はぁ。・・・好きになってしまったみたいです」

「おお~っ!おめでとう!!ところで、何でそんなに微妙な顔なの?」

「まだ何にも聞いてないし、知らないのに悔しくて」

「ははっ!大丈夫だよ。レフ殿がブラットフォード公爵なのは解ってるんだよね?」


 オッカムの手に頭をぐりぐり撫でられたので、まだブスッとしたまま頷くと今度はポンポンされた。


「じゃあ、俺の事もちょっとネタばれしようかな?」


 何だか楽しそうなオッカムに首を傾げる。


「へ?オッカムさんも何かあるんですか?」

「んー?大した事ないけど。正確には俺、中区画駐屯所の兵長じゃないんだよね!」


 さらっと耳を疑う事を言い始めた。


「・・・はいっ!?え?嘘、だったんですか?3年前から?」


 ここ数日の付き合いのレフとは違い、オッカムの事は3年前から知っていたのだ。

 3年前からシーズン中は王都に来るようになって、ずっと中区画駐屯所兵長だと認識していた。モルディーヌのみならず、叔母や従姉妹達、治療院の患者達、中区画の住民の大多数にそう認識されている筈だ。


「一応兵長でもあるけど下町用の役職でね。本当は王宮内兵舎所属第3部隊っていう守衛団の副隊長なんだよね!!」

「えぇっ!?オッカムさんも結構な偉い人だったんですか?」


 モルディーヌは軍の編成や組織図に詳しくないが、確か王国内外に散りばめられた兵士が国を守る為に情報収集、外交を行う部隊だった筈。隊長率いる半分の兵士は表で外交や警備を、副隊長率いる半分は影から秘密裏に情報収集や処理等の仕事を行うとか何とか。


 まさかの―――――――その副隊長!?


「ははっ。あんまし副隊長として顔知られたら困るから、基本俺は縦列上の上司や部下達以外に認知されてないしどうかなぁ?モルディーヌ嬢も内緒にしてね?」


 大した事ない様に笑っているが、結構な軍の秘密をペロッと喋られた。人差し指立ててしーっとかされても可愛くないし、そんなノリで良いのだろうか。


 やたら上司(レフ)(しかも軍務大臣(ブラットフォード公爵))に馴れ馴れしいとは思ったが、ほぼ隊長格の副隊長だったとは・・・


「あれ?第3部隊の影から秘密裏に情報収集とかって、秘密の影(シークレットシャドウ)みたいですね?」


 ふと似てるなと軽い気持ちで聞いてしまった。

 オッカムがにんまり笑ったので、またしても嫌な予感。


「正解!第3部隊の一部は元々秘密の影(シークレットシャドウ)だよ。5年前にレフ殿ことブラットフォード公爵に解散させられたけどねー」

「そうなんですね」


 あまり突っ込んだ事を聞かない方が良い気がする。曖昧に笑って流そうとするがオッカムがずっと笑っている。恐い。


「後、今は新たな秘密の影(シークレットシャドウ)みたいな諜報組織が再編成されてて、《竜の瞳(ドラゴ・アイ)》って言うんだ。使える人材探してて、キースの腕前気に入ったからスカウトしたよ!だから妹のアンも悪霊の件が片付いたら入れるか検討中!!」


 キースの事をライアー氏呼びから呼び捨てになって、随分仲良くなった様だ。

 もしや、作戦中にキースに切りかかったのはわざとでは?


「なるほど。オッカムさんはその後から第3部隊に?」


 やたら明るく話すので、話を逸らすつもりで聞いた。が、これがさらに不味かった。


「ううん?俺は、レフ殿が軍務大臣になる直前に暗殺者として雇われて殺そうとしたんだよね」

「はい!?」


 さらっとヤバい話をし出した!

 この人達、話を聞くほど何かおかしい!

 大層なことペロッと喋るし、色々隠しすぎでしょ!?

 上手く隠して気付かせないでよーー!


「俺みたいな男爵家三男坊とか捨て駒に最適だったからさ。んで、レフ殿に仕掛けたら腕気に入られちゃった。俺もレフ殿面白いし気に入ったんだよね!だから、そのままレフ殿に雇われて秘密の影(シークレットシャドウ)の悪い奴らを一緒に潰して、空いた副隊長の職に就いちゃった!ははっ、あ。これ極秘ね?」


 さらに、聞いちゃいけないこと聞いてしまった!?

 軍の秘密諜報組織を一緒に潰した!?

 そこからなら解散が楽だったでしょうとも!

 と言うか、

 それでオッカムさん投げナイフ常備してるのね。

 そしてあの腕前。


 元暗殺者でしたか!?





A、オッカムでした!


この設定がいるかって?

一応ノリで必要にしました。

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