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36 彼の感情の影響

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ありがとうございます♪


今回モルディーヌ目線だと

レフの感情が解りづらい!

っと、苦戦話です。

 

 森を抜けると前方に横倒しになった馬車が見えた。

 窓ガラスが割れ、辺りには血が染み込んだのか黒ずんでいる場所が点々とある。


「ニーア、さっきはありがとう」


 モルディーヌはレフに抱えられながら、横を歩いている美少年姿のニーアに声をかける。

 首なし紳士(デュラハン)、コシュタ・バワー、アンの赤帽子(レッドキャップ)、ついでにブロメル伯爵。追っ手が多く、ニーアの足止めが無ければ逃げられもしなかっただろう。


あい(イエス)。お礼は乳「おい。ベン・ニーア」――――何でもないっす。冗談っす。主の番であるお嬢さんには指一本触れやせん!だから、主とお嬢さんのお仕置きは勘弁して下せぇ!!』


 モルディーヌが半眼で睨み、レフに殺気だった声を挟まれたニーアは慌てて首を振りながら両手で降参ポーズをとった。


「・・・ニーアが馬車を倒したの?」


 呆れて見てしまったが、気になっていた事を聞く。

 馬車が倒れる直前、窓から見えた白いもの。


『あい。主が追い付くまでの時間稼ぎっす。後は、流石に順番でないと相手できなかったからっすよ。お嬢さんには予告できず急にすみませんっした!』

「身体にある打った痕はそのせいか?俺が早く追い付ければ良かったが、時間を翔ばす馬車には中々追い付けずにすまない」


 ニーアとレフが申し訳なさそうに謝ってくれた。

 耳のなく、ニーアの声があまり効かない首なし紳士(デュラハン)やコシュタ・バワーには、隙をつかれ抜け出されたが、アンやブロメル伯爵は馬車に押し留めている間に縛り上げて人間界のオッカムに引き渡したらしい。


「ううん、助かる為だもの。ふたりとも来てくれてありがとう」


 ふたりに笑いかけると、ぽかんとした顔をされた。何故?

 ちょっと恥ずかしくなり、誤魔化す為にレフの肩に顔をすり寄せると、ニーアが「お嬢さん不意打ち笑顔は、」とか、レフが「俺の天使が可愛すぎる」とか呻いていた。そんなに笑ってなかっただろうか?

 暖かく気持ちの良い風が吹き、木々がさわさわと揺れた。風に乗ったレフの香りに包まれ、実際にレフとの距離は抱き上げられてるから近くて温かさに安心する。


「それに、肩以外はブロメル伯爵のせいだから気にしないで」


 ふたりがモルディーヌの怪我を気に病まないように明るく告げると、レフの紫の瞳が細まり鋭くなった。あら?


「・・・は?ブロメル?ブロメルに何をされた?」

「え?キースさんに聞いてない?」


 何度も頬打たれたり、お腹けられて痛かったなーとか軽く思い返す。

 レフをブラットフォード公爵だと知った事がキースから伝わっていたので、他の事も報告したのかと思っていたが違うのだろうか。


「キース・ライアーから?・・・そうだな。怪我や服装の事、俺の話の前に君から聞かなければいけない事が多々ありそうだな」


 どうやら聞いていなかったらしい。

 辺りに地響きが聞こえるのは気のせいだろうか。さっきまでの暖かい風が消えてしまい、雲がつくった影のせいか刺すような冷たい風が吹き始める。


「え、うん。ごめんなさい?」

「俺に、謝る事があるのか?」

「う~ん?たぶん無いと思うけど」


 何だかレフが恐い。

 どこか宙を睨むようで、何故か怒ってる?

 冷たい風が強くなり、レフの肩に顔を埋めて震える。


『お嬢さん!主の機嫌直してくだせぇ!!』

「へ?機嫌?」

『いいから!褒めたり抱擁でも接吻でも何でも良いっす!!』


 ニーアが何故か慌て出した。モルディーヌにレフのご機嫌とりを促す。

 よく解らないが、怒ってる人に抱っこされてるのも気まずいのでレフに話し掛けてみる事にした。


「怒らないで?―――私、貴方の笑顔が好きよ?」

「・・・」


 むっすり黙り、モルディーヌを見てもくれない。

 しかし、気のせいかもしれないが地響きが止まり、冷たい風が少し弱まったような。


『もう少しっす!!』


 ニーアの言葉に押され、調子に乗ってレフの胸板を走る傷に指を伸ばして撫でる。さっきから触りたくてウズウズしていたのだ。私、変態かもしれない。


「は、早く帰って話しましょ?私、貴方の事たくさん知りたいわ」


 そう言いながら肩を走る傷痕の上に頬擦りをして、レフを見上げる。恥ずかしくて赤面しているだろうが構うものか。


「・・・ああ。早く、戻ろう」


 モルディーヌを一瞥してすぐそっぽを向かれたが、ボソッと返事があった。


 おぉ!返事あった!

 多少機嫌直ったのかしら?


 徐々に雲が流れて陽が射したからか、冷たい風から暖かな風に変わってきた。まさか。


『主。お嬢さん相手だとチョロいっすね』

「ベン・ニーア黙れ」

「ねぇ、こっち見て?」


 レフの頬に手を伸ばして顔を自分へと向けさせる。

 無表情に変わりはないが、モルディーヌを見る紫の瞳に浮かぶ銀糸が柔らかい光を放っていた。


「ひょっとして、この風とか天気って・・・」

『主の感情の影響っす。軽くだと変わんないっすけど、だいぶ動揺したり、怒ると出ちゃうみたいっす!』

「本当に?私の涙みたいに?」

「ああ。俺の場合は人には関係ないが、妖精や妖精界に影響を与える」


 なるほど。

 それで天気や地響きが。

 妖精界に居るときは怒らせない方が良さそうね。


「貴方も妖精の血族なの?お祖母様が妖精とか?」

「そうだ」

「じゃあ、私と一緒ね」


 よく解らないがモルディーヌもメリュジーヌの血族だったから、レフは仲間意識でこんなに気にかけてくれたのだろうか。


 妖精の血族だから気に入ってくれた?

 だから、助けてくれた?

 では、私が普通の人間だったら?

 他に妖精の血族の女性が現れたら?


「そうだな。・・・君は、俺が恐くないか?」


 レフが急に瞳に不安の色を浮かべ、躊躇いがちに聞いてきた。


「怒ると普通に恐いわよ?でも、だから何?普段は恐くないじゃない。貴方は私が泣くの恐い?」

「可愛いから独り占めしたくなる」


 しれっと話がズレかける。

 違う。今はそう言う返事を求めていない。


「・・・周りの人をおかしくしても?貴方にも影響があったとしたら?」


 真面目な顔で問うと、レフは変わらず無表情だが不思議そうに首を傾げた。


「君は我慢しているだろう?君を泣かすのが悪い」

「貴方は怒りたくて怒るの?」


 何故こんな話を?

 この人(レフ)はひょっとして、誰かに恐がられた?

 私がオッカムさんに恐がられたみたいに?

 それ以上に?傷付いた?


「いや。その為に感情を殺すようにしていた」

「だから、あんまり表情を変えないの?」

「そうだ。元々他人に興味ないが、より関心を持たないようになった」


 鉄仮面の冷血人間。

 部下達にはそう言われているというのは、そういった理由からだろうか。

 モルディーヌの前では割りと感情を出していたが、


『あの雨の夜、モルディーヌに会った時。よく感情を失わなかったと思い、一目で――――俺は君の強さに惚れた』


 と、以前言っていた。

 レフは感情を失ったから、あんな事を言ったのだろうか。


「なら、怒ってもわざと周りに悪影響を与えたいんじゃないでしょ?貴方だって我慢してるじゃない。私達以外にもそういう人がいたら恐い?」

「だが、」

「貴方は充分()()のよ。私は泣かなければいいけど、貴方は魔術師なのに妖精に対してや妖精界に居る間ずっとなんて()()わ。―――――もっと好きになったかも?」


 ふふっと微笑みながら見上げると、レフが驚いた様に目を見開く。紫の瞳の中で銀糸が柔らかく揺れていた。


「・・・やっぱり、君がいい」


 ポツリと呟いたレフの掠れ声は、殆ど聞こえない程の小ささだった。

 モルディーヌは聞こえなかったフリをしてレフの首に抱き付く。

 かなり大胆になってしまったが、今必要な気がした。

 今、言わなければいけなかった気がしたのだ。



『そろそろ良いっすか?』


 暫くして聞こえたニーアの声に慌てる。


 すっかり忘れてた!


 だが、レフにそのまま抱き付いてニーアを睨むに止めておく。今はレフの顔が恥ずかしくて見られない。


『主が喜んじゃって花畑凄いっすよ。安定してる内に人間界に帰るっすよ!』


 言われて周りを見たら、只の草木が生えていた場所が色とりどりの花で埋め尽くされていた。

 そう言えば、川縁に座って話していた時もやたら花が咲いていたような・・・


「お花の妖精みたいね」

「君が俺の側にいてくれる時限定だな」


 微かに笑みを浮かべているであろう声がレフから返ってくる。

 そのままニーアに促され、馬車の近くから繋がる道を通り抜けた先、儀式が行われる筈だった人間界の夕刻に出た。






何だか謎を解くための前段階で

よくわからない話になった気がします。

一応最後の方にもうちょっと

ハッキリ書きます!


順番は大事!


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