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閑話 兵士達の上司愛

読んでいただきありがとうございますヽ(・∀・)ノ


今回は閑話です。

彼です。あの兵士です。

 

 少し遡り。

 南区画で首なし紳士(デュラハン)騒ぎのあった夜から、2日後の夕刻。



 王宮内兵舎には第1から6部隊まである。


 第1部隊は近衛団、王族直属護衛の花形職。

 第2部隊は騎士団、騎乗戦を得意とする英雄職。

 第3部隊は守衛団、王宮に限らず外からも国を守る情報収集、外交に強い盾職。

 第4部隊は重機戦団、銃、大砲、防具等の開発実戦の工学変人の集まり。

 第5部隊は鬼兵士団、剣や槍など戦場での接近戦を得意とする身体能力の高い兵士の集まり。

 第6部隊は魔術師団、軍務大臣ブラットフォード公爵も所属されていた、今乗りに乗った実力主義の魔術戦を得意とする精鋭揃いだ。


 そんな王宮内兵舎第6部隊の訓練場にあるひとりの兵士が駆け込んだ。


「俺はこの目で見た!」


 彼は魔術師仲間達の元へ着くなりいきなり叫んだ。

 かなり興奮した様子で、顔を赤らめ、目をキラキラと輝かせている。

 仲間達は何だ何だと不思議そうに彼を見ている。

 彼と一番仲の良い男が代表して尋ねる。


「落ち着け。何を見たんだ?」

「軍務大臣ブラットフォード公爵閣下の恋人だ!!」


「「「「閣下に恋人!?」」」」


 彼の言葉を聴くなり、周りの仲間達も興奮して騒ぎ出した。

 ざわめきが少し収まったところで、彼が鼻息荒く抑えきれないとばかりに口を開く。


「ああ。俺は今日の昼過ぎ、この目でしっかり見たんだ!ヴォルフォレスト・ハイガーデン勤務の日で良かった!!!!」

「何!!?あのブラットフォード公爵閣下がヴォルフォレスト・ハイガーデンに?」

「王太子殿下が自ら案内しても、興味なさそうに無表情だった閣下が!?」

「恋人と、まさか、デート!!!」


 彼は口々に騒ぎ出した仲間を見回し、満足そうに頷いた。


「そうだ!!あの閣下が恋人とデートしている所を俺は見た!!」

「マジか!?基本他人に無関心な閣下だぞ?見間違いじゃないのか?」

「あの鉄仮面冷血人間だぞ!?今まで恋人なんて影も形もなかったどころか、どんな美女に猛アタックされても興味示さない方だぞ!?くうっ、勿体無かった!!」


 酷い言われようだが衆知の事実なので、彼はまた頷き返し仲間達にしっかり聴こえるように告げる。


「ああ。そのブラットフォード公爵閣下だ!俺が閣下に憧れ尊敬し、敬愛しているのは皆知っているだろう!!超リスペクトしている俺が見間違う筈がない!あの美少女は閣下の恋人に間違いない!!!」


 彼が閣下への愛を叫ぶと、皆頷き返してくれた。この場に閣下をリスペクトしない者などいない!

 しかし、皆一様にブラットフォード公爵のお相手が気になるのかそわそわし出した。そうであろう!


「び、美少女!?ど、どんな方だ!?」

「閣下を振り向かせる美少女とは!?」

「今までも沢山の美少女がアタックしたが駄目だったろ?」


 途中から話を聞きに寄ってきた後輩兵士のひとりが恐る恐る手を挙げた。確か魔術師団の中でも貴族出身だったはずの眼鏡君だ。


「何だ、眼鏡君言ってみろ!」

「はい!まさか、その美少女とは金茶色の髪に澄んだ海の様な瞳の可憐な令嬢では!?」


 眼鏡君の発言を聞き、本当か?と眼鏡君から彼に視線が集まる。


「何だ、お前も見たのか?そうだ!その美少女だ!!」

「わたしが見たのは昨夜です!最近できたばかりのホテルでディナーをし、ダンスホールでその令嬢と親しげに微笑みながら踊っているところをお見かけしました!!」


 かなりの高級ホテルだ。眼鏡君は貴族出身だから家の付き合いで行ったのだろう。魔術師団には平民出身者が多くいるので、プライベートでの差がある。


「何だと!!あの閣下が、ほ、微笑みながら踊っていただと!?基本最低限の社交で愛想もなく、陛下や殿下に言われて渋々付き合い程度に踊られる閣下が?」

「本当です!その令嬢の従姉妹殿達には付き合いで自らダンスに誘い、それ以外の時はその令嬢から片時も離れず!!むしろ、その令嬢に見惚れる男どもを牽制してました!」


 興奮して語る眼鏡君に、皆のテンションも上がる。

 彼も興奮して同意を示し声高に叫ぶ。


「おお!正しく俺が見た美少女と同じだ!広場で周りの令嬢、紳士方に見せ付けるかの様にイチャイチャされていた!!」

「か、閣下がイチャイチャ?想像できん」


「ふっふっふっ」と、彼はニヤつきながら思い出し、少し期待値を溜めるように周りを見回す。


「我らが閣下は、美少女の手ごと髪を持ち上げ見せ付ける様にキスしておられた!しかも、熱い目差しで見詰める閣下が最高にカッコ良かった!あれは男でも惚れる!むしろ、もう惚れてる!!」

「マジか!あの眉目秀麗の閣下にそんな事されたら俺も惚れる!!」

「しかも、赤らめた顔を手で隠す照れた美少女が可愛すぎだった!閣下が美少女の手を握って、微笑んでいたんだぞ!!ベタ惚れ、デレッデレの溺愛だ!!!」


「「「「おおぉ!!!」」」」


 そこで、彼はゴクリと唾を飲み込み、真剣な目差しで仲間達の興奮を静めた。


「しかし、その後で美少女が突き飛ばされ、馬車に轢かれそうになってな」

「はぁ!?誰だそんな事するやつは!危ないだろ!」

「何だと!?閣下の大事な恋人が!無事だったんだろうな?」


 敬愛する上司の恋人の危機情報に場が怒りや困惑でざわめく。

 彼は拳を空へ突きだし、フッと笑いキメ顔をした。


「ああ、我らが閣下が間一髪で助けた!美少女の腕を引き込み、風圧から庇う様に抱き締めていた!!マジで最高!!!素敵カッコ良すぎるイケメンだった!!マジで俺は閣下を一生リスペクトします!!!」

「おお!!流石閣下だ!」

「マジかっこよ!!」

「魔術師は魔法だよりで素早さが足りん奴が多いのに!」

「確かに、最近の閣下は書類仕事も多いのにすげぇ!」


 さらに大事な事を告げる様に、彼は顔を興奮で真っ赤にさせて叫ぶ。


「大事なのは、その後だ!!閣下にすがり付く美少女!抱き締めて離さない閣下!もう素晴らしく絵になる光景だった・・・」

「おう。想像だけで鼻血が!!」

「見たい!何故今日勤務当番でなかったんだ!!」

「くそっ、お前ばかりズルいぞ!」


 仲間達からブーイングが出始めたが仕方あるまい。第6部隊は信者だらけだが、第6部隊に限らず軍務大臣ブラットフォード公爵閣下の人気は高い。

 嫌っているのは一部の古い考えの化石集団ブロメル伯爵の派閥の奴等ぐらいだ。


「あっはっはっはっはっ!羨ましかろう!!さらに、俺は閣下に声もかけて頂いた!!!」

「何!この裏切り者め!」

「ちくしょう!偶々当番だったからって!」

「ブラットフォード公爵閣下と何を話されたんですか?」

「眼鏡君、良い質問だ!閣下はお忍び任務中でな!俺が名前を呼ぶことを叱責された!!」

「閣下に叱って頂けたのか!?羨ましすぎる!」

「ああ!とても凛々しい声だった!!しかし、閣下は美少女に身分を伏せているらしい。それでも想い合う閣下に美少女が拗ねてめちゃめちゃ可愛かった!!!」

「おお!美少女超気になる!」


 うんうんと頷き、彼は取って置きを出すようににんまり笑った。


「そうなんだよ!俺が美少女の事を尋ねたら、閣下に射殺さんばかりの嫉妬の目で見られ、「俺の想い人に不埒な目を向けるな。惚れても殺す」と言われた!俺なんか閣下の足元にも及ばないのに、俺相手に嫉妬してくださる閣下にドキドキした!!その事で美少女が閣下を怒り、胸に額を押し当てて横腹をぽかぽか殴る姿に閣下が微笑んでいた!絵に残す為に、マジで画家を探したかった!」


「「「「「閣下と恋人最高!!!」」」」」



 とか延々と語る、端から見たら「コイツら大丈夫か?」と言う信者に囲まれてレフはお仕事をしていたのであった。


 そして、このヴォルフォレスト・ハイガーデンでの一件は瞬く間に軍内に広まり、反対派閥のブロメル伯爵の耳に入ってしまったのである。




はい。

ブロメルに伝わる程の噂を流したのは彼です。

モルディーヌさん、噂の犯人は彼です。


この国大丈夫か?

大丈夫です。

皆仕事は真面目にします。きっと。

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