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26 従姉妹で女子会

やっと、叔母や上の従姉妹が登場!

元々10年前に別のメインストーリー作った作品の世界のサブキャラで作った今作。

従姉妹達にもビジュアルデザインや色々と設定があるのですが、この作品では出番がありません。

 

「モル、いつの間にマクビウェル卿と仲良くなったの!?」

「可愛いとあんなイケメンが何度も助けてくれて、求婚までしてもらえるなんていいね」

「モルは危ない事に首を突っ込みすぎではないかしら?ラダとミアだってそう思うでしょう?マクビウェル卿との事だって急すぎない?」

「セリ姉様は心配し過ぎよ!」


 3人の従姉妹達に騒がれながら、モルディーヌはぐったりしていた。





 向かいのレフ=ルト・マクビウェルの家であった早朝の騒動から、数刻。

 朝食には早い時間に昨夜の件を内々に収めるべく、レフとオッカムに付き添われ叔母の待つ屋敷へと帰った。

 あの後、レフやオッカムの部下達が叔母に事情を知らせてくれており、叔母や従姉妹達を警護してくれていたらしい。

 深夜だった為、昨夜の騒ぎは近隣には聞こえなかったのか、運良くモルディーヌの不在は家人以外には知られていなかった様だ。

 しかし、危険な事に首を突っ込み、評判にも傷が付きそうになったモルディーヌは出迎えた叔母から大目玉をくらってしまう。従姉妹達は心配げな顔で叔母の様子を伺っていた。下手に助けようとして長引いてはいけない。

 永遠に続くかと思われたお説教は、不本意ながらレフの発言で収まった。


「ヘッター子爵夫人。モルディーヌ嬢の評判に傷が付くことはありません。命を狙われたモルディーヌ嬢を軍人としてオッカムと共に保護したのが夜中だったので此方で匿わせ頂きました。知られたところで疚しい事はありません。しかし、この件があろうとなかろうと、モルディーヌ嬢の気持ちが此方を向いてくれれば俺は結婚を申し込むつもりでしたので、例え噂になろうと問題はありませんよ」

「まぁ!!本当に?モルディーヌを?」


 鬼の形相だった叔母ヨーリン・ヘッターが、絵に描いたように目を丸くして驚く。思ってもみなかった良縁なのか、喜びで顔が鬼から聖母の様に変化した。まずい!


「ちょっと!勝手なこと言わないでもらえる?」

「勝手?俺は何度か伝えたと思うが?」


 急いで訂正しなければと声をあららげてしまったモルディーヌを見る叔母の目が厳しい。

 しかし、レフは素知らぬ顔でしれっと抜かすからモルディーヌはイライラしてしまった。


「貴方がそんな風に叔母様に伝えたら、貴方と結婚する流れになってしまうわよ!!」


 モルディーヌの態度と言葉に、叔母の眉が大きくつり上がる。それに何の問題が?とでも言いたそうだ。あるよ!この男には問題ばかりですが!?


「君が俺を選んでくれたらな。無理強いはしない」


 レフは実にあっさりした返答を返してきた。


 あれ?

 評判に響かなければ選択肢を残してくれるの?

 それなら、噂にならなければ冷静に判断して考えられるよね。

 ここ3日で色々ありすぎなのよ。

 この人(レフ)が何考えてるかも、何を話せなくて隠しているのかも解らないし。

 ちょこ~っと、もしかして、ひょっとしたら、惹かれてるかもしれない、かもしれないけども!

 昨夜から嫁とか結婚とか急に考えられないもの!!


「噂になったら?」

「君の望むままに。あって欲しくは無いが、酒、金、女ぐせの悪い男や年寄り金持ちの後妻、あとは根源のキースとかが俺より望ましいなら選べ」

「・・・」


 酷い選択肢だ。

 いや、それならアレだよね。

 アレ?アレって、この人と結婚するの?

 人殺しだよ?

 他の方がマシかもしれないよ?

 この人表向きは良いかもだけど正体不明だよ?

 そもそも、あの選択肢から消去法で選ぶとか

 この人それでいいのかな?


 気が付いたら、モルディーヌの考え込んでいる様子にレフが肩を落として項垂れていた。


「そこで悩むのか」


 落ち込むレフに、オッカムが楽しそうに肩を叩いた。


「ははっ!今モルディーヌ嬢に決断は難しいですよ。レフ殿謎しかないですし。でも、悪いことは言わないからレフ殿にした方が良いよ?難点は感情が読めないとこだけど、モルディーヌ嬢には問題ないし、超優良物件だよ?レフ殿以外のラインナップなら男爵家三男坊の俺でもいいけどね!」

「おい、オッカム。フォローしていると見せ掛け、何然り気無く自分も候補に入れているんだ」


 レフの視線が冷えたものに変わり、オッカムは肩を竦めて苦笑いした。


「レフ殿を選んで欲しいところです。けれど、正直レフ殿を選ばないなら、まだ俺の方が良くないですか?」

「俺以外に良いも悪いもない。全てはモルディーヌ次第だが、納得するかは別だ」

「それ、私に選択させる気あるの?」


 レフの発言に呆れたモルディーヌが口を開くと、すぐに厳しい叔母の声が飛ぶ。


「モルディーヌ!いい加減になさい!マクビウェル卿は若くて器量良し、財産や身分も申し分なく、貴女の相続財産や空席の伯爵位狙いでもないのですよ?」

「・・・2、3日で、謎ばかりのよくわからない人を、まだ信じて結婚とか考えられないわよ」


 レフの事をここで全てぶちまける事もできない。苦い物を噛み潰した様な顔でモルディーヌは2階への階段をのぼって逃げた。後ろから叔母に怒ったように名を呼ばれたが聞こえないふりで無視をした。


「モルディーヌ!!はぁ、申し訳ありませんマクビウェル卿。あの子も襲われて気が立っているのだと思います。よく言って聞かせますので」

「いえ、まだ信用に足りない俺に問題があります。早く信用して頂けるように努めますよ」


 見慣れてきたオッカム以外の人間は驚き、見惚れる程の微笑みを浮かべたレフは、去り行くモルディーヌの背中を見送った。






 そして昼になる頃にはぐったりしたモルディーヌの出来上がりだった。


「で?どこが好きなの?」

「何で好きって事になっているのよ!?」


 タニミアの嬉々とした問いにむくれて言い返してしまう。


()()信じられないって事は、信じられたら良いかなって思っているんでしょ?」

「あ、何で。・・・うぅ、知らない」


 意識せず言ってしまった自分の失言に気付き、顔から火を噴きそうに真っ赤になって俯くしかない。タニミアがにやにやしているのがわかる。なんか悔しい!


「あら可愛い♪色んな殿方から、熱い視線を送られようが、誘われようがびくともしなかったモルがねぇ?ふふっ」

「マクビウェル卿、素敵な微笑みでモルディーヌの背中見てたよ?羨ましいぐらい愛されてるね」


 真ん中の従姉ラダフィーナが全然羨ましくも興味もなさそうに言いながら、ふくよかな身体を椅子に押し込め、お菓子をぱくぱく食べている。

 一番上の従姉セリュナスは身体があまり丈夫でない。レフとオッカムに挨拶をしてすぐにベッドに戻ったので、従姉妹達とモルディーヌはセリュナスの部屋に集まっていた。

 セリュナスがベッドから不思議そうにモルディーヌへ目を向けてきた。


「マクビウェル卿って、もっと無表情で無口なのだと思っていたわ。モルに対してだけ違うのかしら?」

「私の前でも基本的に無表情だと思うけど、むしろ心臓に悪いから笑わないで欲しいわ。・・・好きになったら困るもの」


 モルディーヌがぷいっとそっぽを向くが、従姉妹達にくすくす笑われているのがわかる。

 ラダフィーナがクッキーを咀嚼しながら投げやりに口を開く。


「贅沢な悩み。もらってくれるなら嫁げば?」

「ラダ姉様に言われたくないわ。求婚者から逃れる為に不細工メイクして肥るとか意味分からない」


 そう。この真ん中の従姉は少し変わっていて、昔何があったのだか男達の求婚対象になりたくないらしく、わざと見栄えを悪くしている。素材は悪くない筈なのに謎だ。


「そう?可愛くもない私は、ろくでもない奴に目を付けられると困るから逃げないと」

「ラダはちゃんとしたら、とっても素敵よ?」


 クッキーを紅茶で流しながら答えるラダフィーナにセリュナスが首を傾げた。

 チラッとセリュナスを見たラダフィーナは鼻を鳴らして口許を歪めた。


「じゃあ、私よりさらに素敵なセリ姉様が嫁いだら考えるよ」

「ふふっ、病弱なわたしを妻として迎えても良いと平気な殿方がいらっしゃればね?だから、年功序列なんて気にしてはだめよ」


 セリュナスの言葉の後、いきなりタニミアが口を開いた。


「おかしいわ!私はいつでもイケメンに嫁ぎたいのに!」

「タニミアだって、誰でも良いわけじゃないでしょう?」


 ふたりの姉と違い、意欲的に殿方と知り合い結婚願望のあるタニミアは浮いた話題がないのを気にしていた様だ。


「素敵なイケメンならいいわよ!」

「嘘つき。ガウェンディックの小僧が気になってるクセに」


 元気一杯だったタニミアが、ラダフィーナの言葉に凍りついた。


「まぁ、ミアいつの間に?知らなかったわ」


 セリュナスがベッドからにこやかな笑みでタニミアを見た。

 解凍した後、目に見えて狼狽え出したタニミアにモルディーヌもついついさっきの仕返しでにやにやしてしまう。

 ガウェンディック家は隣の領地に昔から住む一家で、ヘッター家やイシュタトン家と各々の父親が亡くなるまでは家族ぐるみの付き合いをしていた。近年は疎遠だった筈だがいつの間に会ったのだろう。


「べ、別に気になってるわけではないわよ。最近偶々会っただけで、同い年なんで子供だもの。ただの幼馴染みじゃない」


 タニミアは肩を竦めて何でもないように言っているが頬が赤い。

 紅茶を飲み干したラダフィーナが新に注ぎながらチラッとタニミアを見やる。


「昨日デートしてるの見た。私らより、モルディーヌとタニミアの方がさっさと結婚するんじゃない?」

「「ラダ姉様!?」」


 しれっと言うラダフィーナに、モルディーヌとタニミアの声が被った。セリュナスが「仲良しね~」と呑気に笑っている。


「セリ姉様が言ってた様に、年功序列じゃないんだから問題ないよ。むしろ、下が詰まってない分私らが焦らされずのびのびできて一石二鳥?」

「ラダ姉様って・・・」


 自分の都合の良い方へ納得したように頷くラダフィーナに、呆れるモルディーヌの横でタニミアがぷりぷり怒り出した。


「ふんっだ!ラダ姉様は好きな殿方ができた時に散々苦労して、私達にからかわれれば良いんだわ!」

「できないから関係ないな」


 今度はカップケーキに手を伸ばすラダフィーナを見て3人は視線を合わせ息を吐いた。

 しれっとした態度のラダフィーナは、窓から外を一瞥し怠そうに口を開けた。


「あ。噂をすればガウェンディックの小僧とマクビウェル卿」


「「えっ!?何でふたりが?」」


 モルディーヌとタニミアの声がまた揃ったのを、セリュナスが「ふふっ、またまた仲良しね」と楽しそうに笑いながら手を叩いた。






読んでいただきありがとうございますヽ(・∀・)ノ

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