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11 いざ尋常に勝負  狙う者

内容が変わる書き直ししたくなかったので、前回から続きのキリ悪い文章スタートですみません!

 

 またしても、モルディーヌはレフ、キースはオッカムに帰りは送られる事になってしまった。向かいに住んでるので仕方ないが、何故だと思わずにはいられない。

 ここ2日の寝不足により頭の回転が鈍くなってきたモルディーヌは、このもやもやした状態に堪えられなくなってきていた。

 今後、一昨夜の騒ぎの件に関わらないとして。私をどうするつもりなのか聞きたい。例え死期を早めても、漠然とした不安や恐怖に蝕まれるより良いだろう。最悪、即逃げる。

 何としてでもレフと話そうとモルディーヌは決めた。

 安全の為に人目に触れて、尚且つ周りに声は聞かれないでゆっくりじっくり話し合える場所はないかと考えながら帰路についたのだった。








 昼食後の人々で賑わう商店街からの喧騒が微かに聞こえる路地裏。人通りはなく、塀の高い家が並ぶせいで見通しが悪い。

 うろうろと落ち着きなく歩き回る男と、木の影に寄りかかって立つ男がいた。


「おい!まだ小娘ひとり始末できないのか?俺は遊ぶなと言ったよな」


 男が苛立たしげに足を踏み鳴らし怒鳴った。木の影から出てきた優男は、その様子を見て肩を竦めながら口を開く。


「問題が起きました」

「何だ」

「魔術師に邪魔されました。使い魔が見張ってましたよ」

「魔術師だと?」


 こめかみに青筋を浮かべ鼻息荒く男が唸る。ため息を吐きながら優男は腕を組み男を見据える。


「厄介な仕事は事前に言って頂かないと困ります。報酬が足りませんね」

「ふんっ、良いだろう。彼の御仁にもっと報酬を上乗せさせてやる」

「よろしくお願いします。ああ、後もう1件。具体的に名は出ませんでしたが、彼の御仁の家に出入りした(あなた)を調べている町方の兵がいました。その兵士には心当たりがあるそうなので、足がつくのも時間の問題ですよ」


 思い出した様に付け足した優男は、楽しそうに笑みを浮かべる。男は舌打ちをして、また足を踏み鳴らす。


「クソが!調べてるのはどいつだ?」

「南区画のサムと名乗っていました。軍務大臣からの命で町方駐屯所が動いてるようです。中区画駐屯兵長オッカムが報告を受けていましたが、詳しくは把握していない様子。サムが心当たりを探る明日の夕刻までの間は一任されるそうなので、今のうちにサムを始末すれば内密に処理できるのでは?」

「そうか。今日中にお前が始末できれば報酬を倍にしてやろう。その代わり、また失敗したらお前が消える事になると思えよ」

「承知しました。約束忘れないで下さい」


 偉そうに文句や命令ばかりの男に恭しく一礼した優男キース・ライアーは、男の側を離れて路地裏の角を曲がり奥へと進んだ。

 歩きながら物陰に向かって声を投げる。


「わたしは兵士(サム)を。あなたはお嬢さん(モルディーヌ)を。今度は殺り方は拘らず仕留めましょう」

「了解、キース兄さん」


 艶めいた声が返事をした。






 イノンド王国の王都中区画の西南側大部分を占める高台の森を生かした公園。《ヴォルフォレスト・ハイガーデン》は、年若い現王太子殿下が2年前に高台の森の中を改装し、乗馬や馬車での散策を楽しめる広場や庭、花園などを作った。夜には王立研究所で開発された魔動花火が打ち上がり、広場には楽団や大道芸、様々な出店等で賑わう今王都で一番人気の施設だ。

 毎日多くの人々でごった返し、商談や大人数での遊び、婚約したての男女が世間体を守りながら交流するのに適した場所だと話題になっている。

 昼を少し過ぎた2時頃の陽射しを受け、公園の木々が青々と風にそよぐ。

 高台にある為、モルディーヌが帰り道に歩く中区画南端入口門の通りからも公園の一部が見えた。これだ!とモルディーヌは公園の方へ目をやる。


「あ、あの!私、まだ帰りたくないの」


 急に立ち止まり、エスコートされる手に力を入れたモルディーヌの言葉にレフは変わらない表情で瞬きを繰り返して視線を向けたてきた。この人、人間らしさがちょっと足りない気がする。


「ヴォルフォレスト・ハイガーデンへ行った事ありますか?私はまだ行った事ないんです」

「・・・今から行きたいのか?」


 どう誘ったものかと頭の中でぐるぐる考え過ぎていたモルディーヌの下手な言葉をレフが汲んでくれる。


「ええ。時間があれば、ふたりで散策しながら話したいです」

「俺とふたりは不服なんだろ?」


 鼻を鳴らして訝しげな目を向けられた。昼の事を根に持たれてた!

 しかし、ここで頷いてもらわないと行けないので、レフの腕をすがるように掴み、背の高い彼の瞳をひたと見据える。


「あれは・・・ふたりきりは、だめ?」


 あ。首疲れて目が乾く。


「だ、だめではないが、」

「本当に!?では、行きましょう!」

「・・・ああ」


 また口許を手で押さえたレフにそっぽを向かれたが、言質は取った。

 ヴォルフォレスト・ハイガーデン行きが決定し、実は前々から興味もあり行って見たかったモルディーヌは少し浮かれながらレフを連れて公園に入った。話す内容次第でそれどころではないだろうが。

 色とりどりの旬な花々が咲き誇る花園の小道に入り、薫り高く手入れのされた低い生け垣から少し離れた人々の胸上が見える。離れすぎず、声を聞かれない距離を測りながら進む。


 いざ、尋常に勝負!


「単刀直入に聞くわ!貴方は何者?」

「何者とは?」


 くるりと向きをかえ、レフに真っ正面から向き直ったモルディーヌの問いに、変わらぬ淡々とした声が返ってきた。


「連続殺人鬼首なし紳士(デュラハン)でないなら何なの?」

「ああ、その話か」


 この話以外にないでしょ!?


「知ってどうする?」

「貴方の事を知りたいだけよ。どうもしません!」


 あ。殺されるなら逃げます。

 でもチクらないのは本当なので

 できれば殺らない方向でお願いします。


「そうか」


 視線をさ迷わせたレフが口許を手で覆い俯いた後、少し考えるように眉を寄せた。


「悪いが、まだ言えない」

「まだ?」

「ある事が解決すれば知られても構わない。君が信じるかは別だが。まだ、死にたくないだろ?」


 そう言って何の感情もこもらない表情と声で淡々と告げられた。しっかりと視線を合わせると、瞳に何かが浮かんでいた。これは何だ?


「またなの?初めて会った夜も言ってたわね。死にたくなければって」

「そうかもな。知らぬ存ぜぬで関わらない方が良い」

「でも、昨日襲われたわ!」

「君があの場所に戻ったからだ」


 瞳に浮かんだものが鋭くなった。鋭いこれは苛立ち、後は何が混ざっている?・・・もしかして心配!?何で?


「だから、殺そうと思ったの?」


 私が証拠を見つけに戻ったから?でも何で心配?と困惑しながらも前々から聞きたかった事を聞くと、端整な顔が顰められた。


「俺ではない。それは解っているだろ?昨日の夕刻、あの場所へ向かう前に君は俺の家を覗いて確認し、襲撃後に俺と会った時はオッカムにアリバイを聞いていただろ」

「知ってたのね!私が怯えて狼狽えてるのを知ってて楽しんでいたの?」


 家を覗いていたことが知られていた事に、顔がカッと熱くなる。内心馬鹿にされてたのだろうかと恥ずかしい。


「どうしてそうなる?」

「貴方に共犯者がいるかもしれないでしょう?間接的に殺そうと思ったらできるわ!」

「まさか、今日もずっと俺を疑っていたのか?」


 信じられないものを見る目を向けられた。段々レフにも余裕がなくなったのか、表情が動き人間味を増してきた。


「当たり前でしょう!?むしろ何で疑われないと思ってたの!?」


 こっちの方が心外だわ!と睨み付けると、盛大にため息を吐かれた。もやもやを解決すべく話しているのに疑問符ばかりだ。何で?


「いや、むしろこっちが聞きたい。治療院で何を聞いてた?俺、本気なら問題ないだろって言ったよな?」

「へっ!?本気で殺られるのかと・・・」


 内心ずっと殺される心配ばかりしていたから、そうとしか考えられなかった。まさか、恋人うんぬんの方かと考えて顔が先程と違う意味で熱くなる。

 モルディーヌの驚きに、レフがとっても分かりやすく肩を落としてしゃがみ込んでしまった。


「嘘だよな!?話の流れ的に、いや、はっきりは言わなかったけど、普通解るかと・・・」


 遂に、淡々とした声が歯切れ悪くぼそぼそとしたものになった。


「本当に私を殺さない?」


 視線を合わせるために一緒にしゃがみ、顔を覗き込んで聞くと、両手で顔を隠されてしまった。もしかして、恥ずかしかったり照れてる時に顔を隠してる?


「うっ。俺が殺されそう」


 もごもご何を言ってるか聞き取れず、顔を寄せる。


「なに?」

「最初から殺す気ない。むしろ死なせないため、っ近い!」


 聞こえづらくて手を避けたらデコピンされた。乙女の顔に何をする!


「いたっ!・・・殺さないでくれるならありがとう?なのかな。でも、何で?言っといて難だけど、一昨日の夜に貴方を見てるのよ?」

「詳しくはまだ言えない。が、俺は今言い触らされなければ困らない。今の時点で誰にも言ってないんだろ?このまま黙っていてくれればいい」

「事が済んだら姿を眩ませるから?」

「そうとも言うが、そうではない」

「意味が解らないわ。誰かに喋るかもしれないわよ?」

「悪いが納得してもらうしかない。喋ったら、数日監禁ぐらいはするかもな」


 さらっと何でもない事の様に無表情で告げられ、モルディーヌはぴしりと固まる。


「・・・黙っとくわ」

「頼む。あと数日なんだ。待ってくれ」

「貴方を信じろと?解決したら全部説明してくれるの?」


 これでは、モルディーヌを殺す気がない事以外に何もわからない。いや、一番大事なところだが、何とも言えない気持ちが燻る。

 正直、あの出会い方で2、3日で信用できたら奇跡だと思う。


「ああ、約束しよう。俺は嘘が吐けない」

「・・・人間は嘘を吐く生き物よ」


 随分昔、幼い頃を思い出したモルディーヌは、苦々しい顔をして呟いた。その様子をみたレフが皮肉げに唇を歪めた。


「君が知りたい俺はどの俺かな?」

「どういう意味?」

「ナイショだ」


 今朝のニーアを思い起こさせる、あっさりした顔で教えてもらえなかった。

 おかしい。これだけやり取りしたのに、結局殆ど解ってない。





一応、前回襲撃方法に雑な理由があるので、もう少し後でさらっと書きます。

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