2話
「きょむいなー」
俺は女神に異世界に連れて来られてから今まで立ち尽くしていた。
「そりゃ異世界転生に憧れてた時期もあったけどさー」
俺は決してオタクではない、が、世間から見るとオタクの部類に入るのだろう
しかし、俺も、もう26だ。ラノベは大学受験の頃から全く読んでいないし、読む暇もない。そのおかげで大学は県内一番の進学校に入学出来たけど
「きょむい」
あの頃は、異世界行きてー、って言っていたけど、実際には家族もいるし、仕事もあるし、俺の場合は彼女もいたから、決して嬉しいものではないよな
こんなことを考えながら体感で1時間が経過した
16歳の頃もこんなことで悩んでいたな、俺はなぜ生きているのか、とか、何のために勉強しているのか、とか。
確かその時は、生かされているんだから、死ぬまで生きよう。って考えてたな。生きることに何ら意味は無い。生きているんだから、生きる権利があるんだから、生きればいいって
「……あ、あの……マスター?」
……?なんか電子音がしたな
「……マスター、そろそろいいでしょうか」
??ここには誰もいないはずだが、そもそも転生したことで周りが見えていなかったようだ。周りは土に囲われているし、銀色の玉が浮かんでいるし、……恐らく、ここが俺のダンジョンで浮かんでいる玉がダンジョンコアで、このコアが壊されたら俺も死ぬんだろうな
「その通りです、マスター。ここは女神様が以前管理していたダンジョン、そしてあなたは新しくここのダンジョンを運営していくダンジョンマスターです」
おおー、思念会話も出来るのか、しかもちゃんと日本語で聞こえる、言語は日本語でいいのか、イージーだな
「いえ、マスター私が日本語を喋れているのは女神様の力です。マスターが転生する際に女神様より、マスターの生まれた国の言語は勿論、風俗や宗教なども習得済みです」
「おお、それは助かるな、ただ、そのマスターって呼ぶのはやめてくれないか、少し、いや、かなり恥ずかしい」
「そうですね、では……そもそも、まだマスターの名前を聞いていませんでしたね、マスターの名前を教えてくれませんか」
名前……名前か、俺には親から名付けられた名前が勿論ある、しかし、その名前は親が俺に、この世界でこんなふうに育って欲しい、という強い思いが込められているものだ、その名前をこの世界でも使うのは、親にも失礼だよな……
「……マスター?」
「悪い、なんでもないよ。俺の名前は……ライフ。だ」
俺はこの世界でも生きる、1度死んでしまったにも関わらず、まだ生きている、これは奇跡だ奇跡以外の何物でもない、だから生きる。絶対にこの命を守り続ける
俺はそう誓った