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序ノ怪
闇が広がる常闇の、明けることのない空に紅い月。
大きな屋敷に紅い鬼。一羽の雀は白い籠。
大事に大事にされすぎて、気づけば闇夜の雀は羽忘れ。
怯え怯えになりすぎて、気づけば光へ逃げた梅は枯れ果てて。
慄き憂いて籠の中。枯れた梅か飛ばぬ雀か。
選ぶものはどちらだろう。選んだ道はどちらだろう。掴んだ掌どちらだろう。
そして選んだ口はどちらだろう。
光溢れる退魔の切り口か。闇溢れる紅き鬼の甘口か。
そして選んだ自分は誰なのだろう。
泣いているのか鳴いているのか、それとも啼いているのか。
羽ばたいたのは一羽の雀。
鬼に鳴いて啼いて、そしてまた泣いて。
紅い鬼の手に乗る一羽の雀。
白い籠の中にいるのは誰なのだろう――?