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イデアル -魔術師達の夜に斬撃を-  作者: ねこねここねこ
8/12

噂の人 狙われているはずの人

 「ねえ、今日は泊って行きなさいよ。」


 「アタシの家でもいいけど?」


 「今日の今日で見知らぬ部屋に泊まるのはいくら私が強いと言っても少し不安が残るわ。地形や周りの建物などを把握してないから守り切れないかもしれないわ。私の泊まる所にしましょう。絶対に安全だから安心しなさい。」


 「んー、でも替えの服ないし。一度家に帰りたいんだけど・・・」


 「時間がないからそんなものはいくらでも買ってあげるわ。これは選択肢の無いルートなの。まだ生きていたいのならね・・・・。」


 「わ、わかったわよ!!」


 飲み終わった三人分のカップを洗い終わる頃には日も暮れ夕飯を考える時刻となっていた。タダの珈琲三杯で4時間も居座る事になるとは思わなかったが内容が内容だけに適当に必要な情報だけ貰い解散というわけにはいかなかったのだ。


 長く話していくうちにポロポロと次から次へと余計な情報をシャルが漏らしていくのだ。


 極めつけは、他人の売られた喧嘩を勝手に買い余計に場を混乱させていたのだ。義理の姉に対して事を構えるのならば私が相手になってやるとシャルは宣戦布告を例の魔術組織の一つ紅蓮の守護者に出してきたという。


 そんな話の中、渚と出会うきっかけになった事件の内容と相手の風貌を伝えると既に他人事でいられない状況に陥っている事が判明する。倒したうちの一人がその組織の末端の人間らしいというのだ。


 そして、そこにはもう一人いたはずだという。基本二人一組で動くらしく、倒した男と行動をよく目撃されているらしいそいつの特徴と一致する敵があの時いなかったのだ。


 たまたま席を外していた?


 どこかに連絡を取っていていなかった?


 不利と悟り情報を収集するのに徹したのか?


 シャルとカナタはいいとしても、もしも渚の情報が流れていたとしたら渚は奴らに存在を知られた人間としてマークされ、抹消すべき対象とされているだろう。


 一般人には公にその存在を知られてはならないというのは古くからある掟なのだ。


 海外であろうと日本であろうとそれは変わらない。


 知られた場合は二つ、

 一つ、素質があれば魔術師となり同類として生きる。

 二つ、知られた存在の家族になるかその僕となり人生を捧げるか。


 「・・・・噓でしょ?」


 「コイツがいい例でしょ。よりにもよってお姉様の義理の弟にしてもらうなんて・・・・」


 こうして全ての情報をさらけ出した女王様は全ての魔術師の頂点に立つ四人の魔女の一人


 「言わせないぞ。それ以上は。」


 頭を叩いておく。


 そんなわけでかなり不味い話を聞かせ続けているシャルと面白そうに事の大きさに気づいていない渚がなんとなく噛み合っていないが話せているようなので片づけをして再度部屋に戻ったのだが、2人は一緒に今夜過ごすことにしたらしい。


 「じゃあ、いきましょうか。泊まる前にお姉様に挨拶しておかないと・・・・。」


 「お前どこのホテル取ってるんだ?」


 「ホテルは駅前の帝都ホテルのスイートよ?」


 「・・・・あ、そう。」


 (確かに安全性も大丈夫だろうよ。ブルジョワめ。日本で最上級にあたるホテルのスイートじゃねーか。首脳とかも泊まるホテルなら警備も安全だろうよ。こちらの事情を知ってる者が警備しているんだから。)


 「じゃあ、案内して。」


 「・・・・はいよ。渚もいいか?」


 「え、うん。」



*********************


 「こ、ここがカナタの家なの?」


 渚は想像と違っているその家の作りを見て驚いている。魔女の住む家と聞き、渚は山の中にある洋館などにひっそりと住んでいるのではないかと想像していたのだ。


 それが都内の外れにあるとはいえ、その敷地の広さに驚いていた。学校くらいの大きさがあるのでは?と思ってしまったほどだ。そして、それは渚の思った通りであり、廃校になった学校の敷地を縁あって譲り受けたカナタの義姉が強引に土地を平らにして家と庭をほぼ全財産に近い金額を使って建てたのだ。

 その時、20歳の彼女は既にその業界では極東の魔女の名を欲しいままにしていた。


 そんな事を知らない渚はこの時、どちらかの親が大金持ちだったのだろうと思っていた。


 「・・・この手のセンスだけは理解できないのよね、お姉様。」


 「ヤバいよね・・・なんでこんなに鉄骨が盆栽みたいに刺さってそうな形で外から見えるのかすっごい不思議。」


 中の見えない高い壁に囲まれている塀から何故か鉄骨がそのまま斜めに飛び出ていたり、地面に対して垂直に刺さっていたりするのだ。


 「気にしたら負けだから・・・・中に入ろう。」


 カナタは正面の門の横にある四角い箱を開けると手をかざした後にカードをスリットする。


 指紋センサーとカードの読み取りにより門が開く仕組みのようだ。


 ズンツと思い音を立てるとゆっくりとその扉が開いていく。


 「行くぞ。大丈夫だとは思うが・・・俺の後ろについて二人とも来てくれ。」


 そういうと、まるでボスの部屋に入る勇者のような足取りでゆっくりと進んでいく。一瞬カナタが右手をあげかける。なんだろうと渚が変な行動をとったカナタを見ながらついて行くとその理由がすぐにわかることになる。


 「・・・この赤いレーザーみたいなのは何?」


 「気にしたら負けだよ。後、この道から庭に入ったら人生終わりだから注意してくれ。」


 そういわれ庭を見ると先程の鉄骨がどうなっているのかが目に入ってきて絶句する。


 鉄骨が不自然に斜めに捻じ曲げられていたり、そのまま垂直に刺さっていたり、何かで穴を開けられたような不思議な痕があったりしている。何かが爆発したかのような跡もあったりと校庭程の広さの庭は別世界の訓練場かサバイバル場のような惨状になっていた。


 「くそ、カメラもレーザーも数カ所増えてやがる・・・アイツ何してんだ!」


 三日しかたってないのにまたこんなにと渚の正面に立ち警戒しながら進むカナタはブツブツと呟いている。 


 「お、お姉様らしいじゃない。魔法使いらしくなくて。」


 「普段のアイツを見たら幻滅するぞ。覚悟しとけよシャルも。」


 「だ、大丈夫よ。負けてから2週間一緒にいたじゃない。あのお姉様も見てるから。」


 「あれは他人だ。既に過去の人物であり、今現在のアイツはそれ以上だ。」


 「あ、あはははは。」


 玄関前につくとレーザーがフッと消える。


 ピンポーン・・・・ピンポーン・・・


 カナタは玄関の呼び出しボタンを二度押す。


 「あのさ・・・カナタの家だよね?ここ。」


 「人を連れて来た時はアイツこれをしないと怒るんだよ・・・たぶんこの状況見たら起こるのは変わらないだろうけど。」


 しばらく三人大人しく玄関前で待っていると寝起きの女性の声が聞こえてくる。


 「・・・あん?」


 そのドスの聞いた声にビクリッと自然と背筋を伸ばしてしまう。

 シャルも同じらしく急に態度が固くなっておりクラスでの態度が嘘のようにガチガチに緊張している。


 「ひっ久しぶりれすっ!お、お姉しゃま!!」


 「・・・・どちら様?」


 「え・・と、わ。私ですわ!!」


 「・・・・・・」


 インターホン越しの相手が沈黙する。


 「あの、ごめんなさい。新聞とかならいいです。あ、N〇〇とかでしたら見てないので結構です。お金もないので。」


 急に弱くなりおろおろし始める相手に渚は笑いそうになる。こんな所に住んでてその言い訳は・・・


 「違いますよ!!シャルです!お姉様の妹分の魔女のシャルです!!」


 「・・・・シャル・・・シャル・・・ああ!どしたのこんなとこに来て。迷子?」


 「違います。今日、ここに泊めていただきたくて!!」

 

 「・・・なんで?ご飯作れる?」


 「い、いえ、私は作れないのですが・・・その代わり料理人を連れてきて作らせますわ!!」


 「え~・・・・家庭の手料理がいい・・・でもそうも言ってられないか。なら入っていいよ。」


 「あ、ありがとうございます。では失礼させて頂きましょう。」


 「頂きましょう?一人じゃないの?複数で来たの?もしかして攻めてきたの?戦うの?死にたいの?」


 「落ち着け馬鹿義姉。それならここにたどり着く前にドンパチうるさい事になってるだろう。安全に入れれる時点で俺がいる事に気づけよ・・・」


 呆れたようにいうカナタの声。こんな顔もするんだなと渚は先程から百面相をしているカナタを見て嬉しくなっていた。


 「あれ?大人しくなりましたわね。お姉様?いいのかしら・・・入って・・・」


 「いいんじゃないか?許可出たし。」


 「では失礼し・・」


 バン!!ガン!!・・・バタリ。


 「え?きゃっ!?」


 凄い音がして扉が開いたと思ったらシャルが目の前から消え吹き飛んでおりそれをスローモーションのように見ていたら真横で突風がかけ抜けてカナタを押し倒していた。


 「な、なにが起きたの!!」


 えっとカナタを襲って・・・抱き着いているこの人をどかしたいという気持ちが強いのだがそれをすると身の危険がという直感にしたがい渚は取り敢えず派手に吹き飛び白目をむいて仰向けに倒れているシャルを助ける事にする。


 「しゃ、シャル?」


 「・・・・きゅう。」


 シャルが!!と言おうとカナタを見るとカナタはカナタで主人を迎えに来たどかない大型犬をどかそうとするかのようにええいっ!うっとおしい!などと言って本気で抵抗しているようだ。


 「んー・・・ごめんね。お姉ちゃんが悪かったから許して!愛しい弟よ!」


 顔を真っ赤にして本気で抵抗しているようなカナタを顔色一つ変えずに両手を押さえつけ馬乗りになり抱き着くカナタのお姉さん?は暴走している。


 「お帰りなさい!カナちゃん!ごはんにする?ごはんにする?それともごはんにしてくれる?」


 直後、ぎゅるるるううう~・・・・という音が鳴り響くと電池が切れたかのようにパタリとお姉さんがカナタの上で抱き着いたまま動かなくなる。


 「・・・・・あの、お姉さん。いつからご飯たべてないんだすか?よくみたら少しやつれて見えるのですが。」


 渚は聞いてみる。


 「誰よ・・・あんた・・・・まあ、いいわ・・・・・死ぬ・・・・・今日で3日目・・・よ・・・。」


 「・・・俺が出てから一度も飯食べてなかったのかよ。」


 「だって、作るの怠いし・・・電話するのめんどいし・・・すぐにカナちゃんが戻ってきて作ってくれると思ってたから実験に没頭してたら三日過ぎてたのよ。いつの間にか。」


 「す、すごい人だね。」


 「こんなのはいい方だよ・・・」


 「そ、そなんだ。ヤバいね・・それ。アタシもなんか手伝おうか?料理。」


 「あー・・・じゃあ、お願いしようかな。取り敢えず俺は義姉さんを引きずっていくからシャルをお願いできる?」


 「ひきづ・・・う、うん。わかったって本当にひきずってるし。」 






 


 







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