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イデアル -魔術師達の夜に斬撃を-  作者: ねこねここねこ
3/12

転校生はまさか!?

そのうち出てくる主人公・・・

 アタシの名前は蒼井 渚、旭南高校に通う二年の女子高生。

 

 二年になって早々二日間も休んでしまっているのだがそれに関しては勘弁して欲しい。むしろ二日間で元の生活に戻る決意をしたアタシを誰か褒めて欲しいくらいである。


 鏡の前の自分の顔を見る。


 そこには容姿端麗なはずの美少女の姿はなく、髪もいつもより艶や張りがない。ふんわりカールのレイヤーロングの自慢の髪はふんわりが潰れている感じがするし、本来ぱっちりとしているはずの瞳は寝不足で閉じ気味である。そして肌も荒れている気がする。


 絶不調。


 化粧でごまかしたが見る人が見ればその下に隠している顔色の悪さやクマなどはきっとバレるだろう。


 こういう日に限って時代錯誤の教育指導者、皆の嫌われ者のセクハラ体育教師が校門に立っていたりするのだが今日だけは何か言ってきたとしても勘弁してもらおう。下手に思い出すとまだ吐き気がするくらいなのだ。


 たった二日で精神を持ち直したのは助けてくれたあの少年のおかげだろう。


 もう二度と会う事はないと言っていた少年。


 (住む世界が違う・・・よね。)


 命を助けてくれた恩人であり、恐怖で壊れかけたアタシの心をこの世界に繋ぎとめてくれた人。


 そしてアタシの初めての男の人。


 (馬鹿だな・・・私・・・やっぱりチョロインだよね。)


 ただの一度の出来事、幻の一夜。


 こうして全てを受け入れても後悔をしていないし、あんな目にあったにしては心がまだ落ち着いている気がするのだから意味はあっただろう。


 「あ~・・・もう!」


 外に出ようと玄関に立つと足がすくむ。まだ少し怖いけど、アタシは少年の言葉を思い出し一歩を踏み出す。


 「今日の事を忘れる事が出来ないなら、それを塗り替えるぐらいのモノを手に入れればいい。そして少しづつ遠くの過去の出来事にして忘れてしまえ。」


 彼の一言一句を間違えずに口ずさむ。


 自然と顔がニヤけていくのを感じる。


 「よし!!学校にいくぞアタシ!」



**********************************

 「あ、なぎたん!」


 教室に着くと隣の席に座る中学時代からの知り合いの油井 唯さんが声をかけてきた。


 「大丈夫?二日間も休んでて。」


 「う、うん。ちょっと体調悪くて。」


 「そうなんだ。風邪?そういえば顔色がまだ・・・」


 言いかけた言葉を遮るように教室の入口から派手な二人組が入ってくる。


 「あ、なぎじゃん!ッス!あの後急にいなくなったからびっくりしたよ!」


 「え?なぎ?病気だったん?男と抜けたと思ってたし。」


 合コンで一緒だった加奈子と由美が机の周りに寄ってくる。


 油井さんは二人が苦手なようで、小さく気を付けてねというと話をしていなかったかのように本を読み始める。


 彼女はギャル系の騒がしい女の子が苦手なのだ。アタシとは中学のとある件により助けてあげた事で例外として好かれているようだが・・・・


 「ちょっ、どうしたのさ、そんな泣きそうな顔してさ。」


 「もしかしてこの前の時に変な男に捕まってショックで寝てたとか?それか振られて休んでたとか?けっこう遊んでそうな男ばっかだったけどカッコよかったからね。」


 「違う違う・・・本当に体調が悪くて家で寝てたの。」


 二人は心配してくれるようだ。


 キーンコーンカーンコーン・・・キーンコーンカーンコーン・・・


 「あ、アーシ達この後体育だった、着替えなきゃ。行くよユーミン、じゃ、ナギもまた昼メシで!」


 加奈子が由美の手を引っ張って教室から出て行く。


 「あん?またあいつ等か・・・この学校の面汚しどもめ。」


 変わるように入ってきたのは担任の体育教師である。


 「あ~、HRの前に今日は転校生を紹介する!」


 教室がざわざわとし始めるが気にせず担任は転校生を呼び教室に入るように促す。


 渚は、この展開に少しドキッとする。


 もしかしたらという予感がしたからだ。


 「入りなさい。」


 言われて一歩教室に足を踏み入れた瞬間、2人を除き皆が喜びの声をあげる。


 そんな中で真逆の反応をした内の一人は、この騒ぎを予想していた担任教師であり早くこの騒ぎを収拾しなければといつもなら机を叩くなどして威圧するか男子の一人でも叩いて見せしめにするはずが今日はそれをしないのは出来ない理由があるからだろう。


 そして、もう一人は予想の外れた渚である。


 「そう上手くはいかないよね・・・・あの人じゃなかったか・・・」


 そんな期待を裏切られたという心情をしらない唯が、机を叩いて興奮している。


 「なにため息ついてるの!男の子じゃなかったけど金髪の外人さんだよ!しかも、超がつく程の美少女よ!」


 そう、転校生はあの黒髪の少年ではなく、金髪の美少女であった。しかも性別だけでなくそもそも国籍すら違っていたのだから残念がる所か根本的に全然違ったのだ。


 よかった事と言えば転校生がいたからか担任の体育教師が朝に校門前で立っていなかったのと、こうして騒ぎが起きても暴力的な何かでこの場を収める事ができない事だろう。国際的な問題に発展するのを避けているのか美少女だからなのか権力による誰かに何かを言われたからなのかはわからないが・・・。


 (もう会えないのかな・・・)


 そんな一人クラスメイトの中で違う反応を示していた渚が視線を転校生に向けると目が合った気がする。

美少女がこちらを見て笑ったような気がしたのだ。


 (気のせいかな?)


 「ねえ、こっち見たよ。同じ金髪なのになぎたんとは違って全然ギャルに見えないよね!本物は!」


 「・・・・あのねー。」


 渚は隣で目を輝かせている唯を見て呆れてため息をつく。


 「まったく・・・これが日本の高校生か。いつから学校というのは動物園になったのだ?」


 ピタリっと彼女が喋り出すと教室が静かになる。いや、その言葉の内容になのか流暢な日本語になのかはそれぞれなのだろうが中々に強烈な言葉が見た目からは想像のつかない美少女の口から放たれる。


 一部の男子や女子が立ち上がり声を出そうとしたが次の二人のやり取りによって黙って座らされることになる。  


 「私は同じ動物でもなければ飼育係でもないのだが?荒木さん。」


 「す、すいません。ベルセフォネさん。すぐに静かにさせますので。」


 あの荒木が生徒の言葉に大人しく従った。


 それは、この学園で校長と教頭の次に偉いのは俺だと言わんばかりに君臨していた担任とは思えない態度だったからだ。


 教室の皆が一瞬にして悟ったに違いない。


 彼女は荒木にとって校長に逆らうよりもマズイ存在なのではないか?と。そしてそれは間違いないのだろう。

 

 「私は唯一騒いでいなかった彼女の隣に席を設けたいのだが構わないだろうか?」


 「はい、わかりました。ベルセフォネさん。おい!すぐそこをどいて、蒼井の後ろの席に移動するんだ!油井。」


 「えっ!」


 唯が目をパチパチとさせ何を急に言われたか理解できないと言った顔をする。


 するといつものように顔をカッと赤く染めた荒木が大声を出しかけた時、転校生が制するように右手を上げる。

   

 「耳元で騒がないで頂けますか?私の耳がおかしくなりましたら責任は当然取って頂けるのでしょうね?」


 「そ、それは・・・」


 「なら、お黙り下さい。」


 転校生が一歩一歩、唯の元へと歩いて来る。


 誰も反論もしなければ文句も言わない。彼女が通る道に微かにぶつかりそうになる机は自然と彼女の邪魔にならないように横に避けられていく。今日この瞬間にこのクラスのランク付けがガラリと変わったのだ。男子のリーダーも女子のリーダーも関係なく皆が彼女に悪印象を持たれては終わりだと悟ったのだ。


 まだ理解していないのは突然名指しで支持された混乱している唯くらいであろう。


 「ねえ、貴女。」


 皆が唯に対して、あのバカ!あるいは鈍感な女だと思ったに違いない。彼女を怒らせる姿を見た瞬間、連帯責任としてとばっちりがくる可能性があるからだ。それは担任であろうと。


 「私の為にそこの席を譲りなさい。貴女の席は隣の彼女の後ろよ。いいでしょう?」


 唯と目が合った瞬間、微かに頭がガクンと下がったのは頷いたからだろうか。


 「・・・・はい。わかりました。ベルセフォネ様。」


 「・・・ベル・・・あの担任殺してやろうかしら。まあいいわ、理解したのならば急ぎなさい。」


 「はい。ベルセフォネ様。」


 唯が後ろの席に移動し座るのを渚は驚いて見ていた。


 「ねえ、貴女。作り物の髪のわりには綺麗な髪色をしているね。名前を教えてくださらない?」


 「え?アタシ?」


 突然話しかけられ渚は内心焦るが、転校生を見ると二度は言わないわと言った顔でこちらの返答を待っている。


 「あ、アタシは渚。」


 「フルネームは?」


 「蒼井 渚です。気軽にナギとかナギサって呼んで下さい。」


 「そう。私はシャルロッテ・・・フルネームは長いので省略させて頂くわ。貴女には特別にシャルと呼ぶことを許しましょう。宜しくね。」


 「え?ベルセフォネでは?」


 微かに聞こえた声に僅かにピクリッとシャルロッテさんの眉が上がるのを見て慌てて渚は返事を返す。


 「こちらこそ、宜しくお願いします。シャル。」


 「貴女はなかなか賢いようですね。よかったわ、ここが動物園ではない事がわかって。まあ教師が一番の無知のようですから同情の余地はあるのだけれどもね。」


 「あ、あははは。」


 (・・・ここ笑っておくところ?)

 

 キーンコーンカーンコーン・・・


 結局、転校生は渚以外に向けた自己紹介をしないままHRは終わるのであった。



予想に反して主人公は転校生ではございません。

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