偶然は必然 崩れゆく日常の始まり
よろしくお願いします。
基本短めの話を繋げていこうと思います。更新は遅いですがご勘弁を・・・
『正義とはそこに立つ者の背に背負うモノとその者の揺るぎない心の意志を表す悪とのバランスを量る天秤の片方である。ゆえに、正義はより悪ではない方であると同時に時として正義という二つの意志の内の勝者が得られる利益の称号でもある。ならば均一のバランスこそが正義と言えるのでなないだろうか。そしてそれが成立するのであれば同時に悪もまた・・・・』 極東の魔女 御影 時葉
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ほどよく暖かくなってきた4月の中旬、桜の舞い散る並木道とは程遠い国道から一本外れた路地裏に入ると少年は口に咥えていたアイスの棒を右手に持ち掲げる。
かじりかけのアイスの棒をジッと見てもう出てきてもいいのではないかと棒を回転させる。しかし、少年の求めている解答を得るにはもう少しの時間が必要なようだ。
まだ見えてこないかと棒を口に入れなおそうとした直後に壁にぶつかり顔にアイスをぶつけてしまう。
顔にぶつけたアイスは地面に落ちる事はなかったが顔にはややベトつきを感じる。
しかしそれよりも左手に持っていた袋の明日の朝食が何もない空間の壁と自身の身体に挟まれ潰れてしまったようで、少年としては顔のベトつきよりもそちらの潰れたパンの方がショックが多きかった。
(明日の朝食のパンは潰れたメロンパンと具が漏れ出したカレーパンか・・・)
少年はあのドーム型にのっている四角の部分を一枚一枚剥がして食べるのが好きだった。
はあーと少年は溜息をつくと”見えない壁”をノックする。
コンコンッ・・・・
目的地はもう目と鼻の先であるのにそこに入る事ができないようだ。
コンコンッ・・・コンコンッ・・・・
どうやら目の前のこの駐車場全体に結界が張り巡らされているようである。
「・・・やはりふふめまい。(進めない。)」
日課となっているトレーニングをしにこの解体をただ待つだけの状態で放置されている立体駐車場にやってきたのだが、少年は渋い顔をし駐車場を見上げどうしたものかと首を傾げる。
残りのアイスを平らげながら余計なトラブルに巻き込まれるのは良くないと判断し今日は残念だけど諦めるかと結論を出しかけた時、
「誰か助けてー!!」
女性の叫び声が微かに聞こえる。
駅から少し離れた寂れたホテル街にある裏通り。同じく寂れたカラオケボックスの隣にある駐車場が少年の目的地であった。
この時間はホテルへと足を向ける人達以外はこの道を通らないとは言うものの全く人がいないわけではない。
けれども誰も悲鳴に気づきもせず見向きもしない。
4月という季節がら通行人が耳につける防寒具をしているなんていう理由でもなければ、皆がイヤホンをしているという理由でもない。
ここを通る人間が薄情な人間ばかりだからというわけでも当然なく。ただ単に一人の少年を残し誰もがこの異常事態に気づいていないのだ。この結界の作用なのだろう。
ドカン!
と聞こえる何かが破壊される音。
「あー・・・面倒ごとに巻き込まれるのはごめんなんだが女を見捨てるわけにはいかないか。」
食べきったアイスの棒を左手に持ち剣のように構えると当たりの文字が上に書かれていた。
(まじか・・・初めて当たり出たのになー・・・ははは・・・。)
アイスの棒を行き止まる見えない壁に左手で押し入れるようにする。
(確か鞄のこの辺に・・・お、あった。)
左手に反発される感触を感じながら右手から取り出した一枚の札を柄の部分に貼り付ける。
「せーのっ!」
左手に持つアイスの木の棒を離すと同時に右手で札のついた部分を当て押し込む。
壁に吸い込まれるように当たり棒が先端から粉々に砕け散るとその地点から破片が落ちていく下部向かって亀裂が入り次第に人が入れるほどの三角の空洞が空くのを感じる。
空くのを感じるというのは少年の感覚であり実際に目に見た感じでは周りのそれと大差はないのだが、風の流れというか確かにそこに通れる部分が出来たのだ。
「あーあ・・・俺の当たり棒が・・・」
少年は手で穴のサイズを確認するとゆっくりと中に入り込む。
「ほんじゃ、お邪魔しますよっと。」
誰もいなければ鼻歌でも歌っていただろう。それくらい気軽な感じで進んでいく。
(声がしたのは上の方か・・・・)
階段を使わずに坂になっている
「おっ、第一不審者発見。」
来るはずのない第三者と遭遇しその男達は驚きの声をあげる。
『なっ!?』
だが少年は女性がいないのを確認すると即座に行動にでる。
「人生初の当たり棒を無駄にしたんだ。間に合えよ!!」
二話連続で投稿致します。