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幸福な食卓

絶望の味からの続きで、おまけ程度に読んで頂ければ幸いです。

マリアは幼少期から色んなものを欲しがった。

特に食に関しては貪欲であった。

『少しでもいいから、特別なものを食べたい』

マリアの両親はマリアの我儘を最大限叶えた。

何故ならマリアは産まれた時から体が弱く長く生きられないと言われていたからだ。

仕事で世界を飛び回るマリアの父は、仕事で訪れた土地の珍しい物を見つけては必ず持って帰り娘に与えた。そうすれば娘は喜んでくれるだろうと…

またマリアの母も娘の我儘に答えるように料理を工夫した。時には職人を呼び珍しい調理法などをショーのようにして見せては楽しい食事を提供した。

しかし、どんなに珍しいものを与えてもどんなに貴重なものを与えてもどんな余興を出そうともマリアは不満顔だった。

少し口にするとまるで糞でも食べてるような顔で咀嚼をする。

マリアは一体何が望みなのか。

『マリア食べたいものがあれば言ってごらん』

そう聞いた両親にマリアはこう言った。

『私、私を愛してくれているパパとママが食べてみたいの。』

両親は困惑した。

『きっと愛情が詰まって居て今まで食べた事のない味だわ。私にしか食べれない特別なもの。』

娘は長く生きられない。しかし人間を食べさせるのは如何なものか。しかも他人ではなく私達を求めている。

両親は迷いに迷って、ついに一人の女性を殺した。殺した女はその家にお手伝いとして来ていた若い女だった。

その女の肉を母の肉だと偽って父親がマリアに与えた。

マリアは今までに見せた事のない喜び様で肉を食した。

その為マリアの母は屋敷の離れに身を隠す事になった。

若い女の肉がそろそろ無くなる頃、父はマリアに言った。

『もうママの肉はなくなるんだ。私を食べさせてあげたいのだけど、そうするとマリアの事を愛してくれる人は居なくなるよ』

マリアは笑いながら父に抱きつき耳元でこう言った。

『うそつき』

『嘘なんかじゃない。私のマリアへの愛は嘘ではないよ。』

『ママのお肉じゃない』


ーーー◆ー◆ーー


町の外れの御屋敷に美しい娘が住んでいました。名はマリア。

両親を早くに失い、その残された遺産でひっそりと一人慎ましく生活していました。

その話を聞いて町の若者は、是非ともマリアを嫁に貰いたいと申し出ました。マリアに求婚をすべく次々とその屋敷を訪れる若者達。

しかし不思議な事にマリアの屋敷に入った者は絶対帰って来ないのです。

一人…二人…三人…。

この事態に町の者はマリアが若者を監禁しているのではないかと怪しみました。

しかも帰ってこない四人目は町長の息子でした。

さすがに我が息子が帰って来ないとなると黙っては居られないと、町長と町の人間が数人でマリアの屋敷に押し掛け家中を調べました。

ところが、屋敷のどこを調べても若者はもちろん町長の息子も出てこなかったのです。

マリアはいきなり押し掛けた無礼な町の人間にも温かいスープを振る舞いました。

『このスープは味わった事のない素晴らしい味ですな』

町長はマリアのスープを絶賛しました。

『本当、何て美味しいのかしら』

町長の奥さんもため息を漏らしていました。

『おかわりは要りますか?』

マリアはそのスープを全て町長と奥さんに振る舞いました。

他の町人は気味悪がって食べなかったのですが町長と奥さんだけはその味の虜になってしまったのです。

二人だけマリアの屋敷に残り出された料理を堪能しました。

『マリアさん、私達だけにこのスープのレシピを教えてくださらないかしら?』

マリアは少し渋りつつもキッチンへ案内し、大鍋の蓋を開け夫婦に中を覗くように促しました。

芳しい匂いが二人の鼻を刺激しました。

『見ても分からないわ。下は何だか濁っているし…』

『いい薫りなのは分かるのだが…一体中身は?』

マリアは微笑みながらこう答えました。

『愛情を注いで育てたものは特別に美味しいでしょう?』



ーーー◆ー◆ーー



女の腹は丸く膨らみ、その腹をさすりながら慈悲深い笑顔を浮かべた。

この部屋は女が食事を取る為の部屋だ。

灯りは細い蝋燭のみで後は月明かりが大きな窓から差し込んでいる。

絢爛豪華な食卓も椅子もか細い蝋燭の灯りのみではどこか廃墟のような佇まいに見える。

女の足元には先ほどまで愛を詠って居た男が静かに転がって居た。

女はその転がっている男に目もくれず椅子に腰かけ子守唄を歌いだした。

それを聞きつけ目のないコックが部屋に入って来た。

『奥様今日の食材は?』

『こっちよ。私の足元。』

コックは声を頼りに近づき足元の肉感に気付いた。

『今日は如何いたしますか?』

『簡単に食べれる物がいいわ』

『承知いたしました』

『旦那様は如何いたしましょうか?』

『それはいいわ。』

『承知いたしました』

コックは頭を下げると足元の動物と思わしき物を掴み調理場に引きずって行った。

重い生き物だとは思ったがコックは目が見えず左手は温度感覚や痛覚がないので詳しくは分からなった。

その時生き物が唸り声の様なものを上げた。

コックは長く苦しめては行けないと手元のハンマーで頭部辺りを叩きつけた。

今夜の食事は簡単なものがいいと奥様がおっしゃるので…っとコックは新鮮な肉のあぶりをサンドにした。

残りの肉は燻製用と明日の煮込み用と切り分けた。

夕食には女とコックが同じ部屋に集まる。

女は少しばかり良いドレスを着て夕食をたしなむが、一緒に居るのが目のないコックなのでその様子はコックには分からない。

女はコックが用意した食事を口にし、ゆっくり味わった。

『奥様…お味は如何ですか?』

『とっても美味しいわよ』

『奥様…私は目が見えませんし、左手は感覚がございません。なのでこの肉が何の肉かわかりません非常に臭みがあってかなりハーブを足したのですが…臭みは残っていませんか?』

『ええ。とっても愛情が詰まっていて美味しいわ』

女は食事を平らげると、食事部屋のテラスに出て外の長椅子にゆっくり腰かけた。

女の腹が時々思い出したかのように微かに動く。

コックが温かいハーブティーをもってテラスに現れた。

『私は今まで色んな物を味わって来たけど、どうしても味わった事のない物があるの。』

『それは何ですか?』

『もう少ししたら、あなたに料理してもらえるものよ。』

女は日々大きくなってゆく腹を優しく撫でながらこう言った。

『絶望とはどのような味かしら?』



【幸福な食卓】完

ここまで読んで頂き本当にありがとうございます。読んで頂ける事に本当に感謝しています。

相変わらず文章変だし誤字脱字半端ないと思います。精進します!!


水曜日の誘拐魔は水曜日によく仕事帰りに映画に行ったりして帰りが遅くなるのでその時に思いつきました。なので水曜日の設定なんですが、今思えば何曜日でも良かったねって後で思いました(笑)

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