牢獄
地獄であり、牢獄である場所に帰りたくなくて、車を走り続けてしまった。
国道を、南下しているうちに、県境まで来てしまった。
子供を迎えに行かなくてはいけないのに・・・・・
携帯を取り出して、友人にお迎えを頼んだ。
ここのところの私は、変だ。
死を考えるぐらいだから、もはや正常ではないだろうが、子供のことだけは考えない日はなかったのに、ふっと何も考えずにこういうことをしてしまう。
後から、何故こんなことをしてしまうのか?と考えても、その瞬間は何も考えていないようで、思い出せない。
そして我に帰り、慌てて自宅に戻るのだ。
正直、逃げ出したいというのが本心だ。
子供と二人、やり直したい。
やり直せなくてもいい。
とにかく、あの牢獄から出たい。
でも、出ることができない。
私にすら、ロックがかかってしまったかのように、出ることができないのだ。
子供のことを思うが故。
それとも、もう、反発する力がなくなってしまった?
自由を欲しいと望んでも、どうせそんなものは得ることはできないと諦めている?
そのどれものような気がする。
あれこれ考えていたら、友人宅に着いた。
「ごめんね、また。」
「いいけどさ、大丈夫? 顔色悪いし、あんたらしくないよ。」
友人の友子が言う。
「うん・・・大丈夫。 ごめん、ほんと。」
謝ると、子供を連れて、いよいよ牢獄へ向かう。
向かいたくなくても、今、私と子供が帰る場所はあそこしかないのだから。
「ママ、帰ろうね。」
無邪気に子供が言う。
「ごめんね、帰ろうね。」
手を引いて、車に乗り込んだ。