表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

牢獄からの脱出

残念なことに、今回の暴力は、身体の痛みだけではなく、内臓も損傷してしまったらしく、医師からしばらく自宅療養か、短期間入院かの選択を迫られた。


勿論、即決で入院を決めた。


家にいても、もっと酷い状態になるだけだと思ったから。


子供は、私の両親に面倒を見てもらうことにした。



身体が痛くても、動けなくても、ご飯が食べれなくても、子供と傍にいることができないことは辛かったけど、それ以外は苦痛などなかった。


苦痛どころか、幸せだった。


ずっと入院していたいと思った。



顔が倍ぐらいに腫れ上がり、話しもできないような状態のときに、病室をノックする音がした。


『コンコン』


と。



返事ができないので、そのままにしていると、静かにがちゃりとドアが開いた。



カーテンが徐々に開くと、そこにはカーテンの端っこを掴んだ職場の上司が立っていた。


お見舞いに来てくれたらしい。



正直なところを言うと、こんな顔を見られたくなかった。


でも、少し、ほっとしていた。



「大変だったみたいだね、その様子を見る限り・・・」


言葉も出ないような小さい声で、上司が言った。


私は、コクリと、小さく頷いた。



「すぐに、帰るからね。 身体が辛いときに来てすまなかったね。ゆっくり、ゆっくり、休むんだよ。」


また、コクリと頷いた。



「僕のね、友人に、弁護士をやってる奴がいるんだ。 そいつに一応連絡をしてあったんだけど、一度会ってみない?」



驚いたことに、上司はそこまで考えていてくれたのだ。



ありがたかった。



傍に置いてあるノートとペンを取り、



『ありがとうございます。是非、お願いします。』


そう書いて、上司に渡した。


「わかった。 良かったよ。 田上さんのことだから、『いいです』って言うかと思った。早速、また連絡取ってみるからね。 じゃ、僕は仕事に戻るね。 仕事のことは、しばらく考えなくていいからね。有給休暇が沢山あるんだから。」



そう言い残して、上司は帰っていった。



苦しいだけの人生じゃないんだな、って、苦しんでいる私を救ってくれる人もいるんだな、って、ありがたかった。 


DVの夫と出会わなければ、この親切にも出会えなかったんだな、って。



でも、とにかく、身体が痛い。 苦しい。



ずっと、睡眠も取れていない。 



眠れるかな・・・ なんだか・・・眠いな・・・



そんなこと思っている間に、私は眠りについていたらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ